Saturday, August 5, 2017

GAAケースその後

7月15日の「外国法人による米国パートナシップ持分譲渡」というポスティングで、外国法人が米国パートナーシップ持分を譲渡・売却した際の米国税務上の扱いは国内での譲渡同様、パートナーシップ内の個々の資産の譲渡と見るのではなく、基本的にパートナシップ持分という個別のキャピタル資産を譲渡した扱いとなるというTax Courtの判例(「GAAケース」)に触れた。

その際に触れた通り、Tax Courtの議論の中で、キャピタルゲインはFDAPでないとした上で、米国源泉であればForce of Attraction、すなわちSection 864(c)(3)に基づき課税となるとしている部分がありとても不思議だった。もし米国源泉だったらFDAPでなくれもCapital Gainなんだからsection 864(c)(3)ではなくSection 864(c)(2)のAsset TestやActivities TestでECIかどうかを決定するんじゃないかと思ったからだ。この点に関してTax Courtは数日後にオピニオンを修正し、もし米国源泉だったらSection 864(c)(2)で考えるべきと訂正している。これで話しがスッキリした。

このGAAケース、その判決にIRSが不本意ながらも従う(Acquiesce)のか、それとも控訴に持ち込むのか注目されているけど、未だにIRSは態度を明確にしていない。大方の予想ではIRSは控訴するのではないかと言われているようだけど、法的に余りにサポートがない点はTax Courtの議論でも、IRSの主張には何の法的な根拠ナシとバッサリと切られていることからも明らか。また、Revenue Ruling 91-32にしてもその発表以来その主張は問題とされてきているので、ここはあきらめてSection 741そのものの議会による改正に掛けた方がいいのではないかと思う。

Tax Reformの提案から消費地課税が取り下げられた今、法人税率を20%とかに下げるとなると他に幅広い財源が必要となる。その中のひとつとしてSection 741の改正により実質Revenue Rulingの条文化が実行されるのではないかという憶測もある。いくらの歳入になるものか知らないけど、チリも積もれば的にひとつの財源として目を付けられる可能性はある。Section 741を変えれば、外国法人には不利だけど、法的な不確実性はほぼなくなるのでGAAケースのような争点はなくなる。

GAAケースに準じてパートナシップ持分譲渡からのキャピタルゲインを非課税とする扱いは、Tax Courtの判例にもある通り、キャピタルゲインが外国法人の米国オフィス(パートナーシップを通じたみなし事務所を含む)に帰属しないというのが要件になるが、多くの外国法人による米国パートナーシップ投資はGAA同様のパターンが多いはずで、Blocker Corporationを経由しないで米国パススルーに投資しているようなケースでは法的な改正が実際に行われるまでは既に納付済みの法人税の還付請求の機会も多いだろう。

ちなみに聞いた話しだと、このGAAケース、裁判所で争われてから先日Tax Courtが判決を出すまで3年も掛かったらしい。オピニオン自体は結構短くてどちらかと言うとシンプルだったのでどうしてそんなに時間が掛かったのか少し不思議。

Sunday, July 30, 2017

過少資本税制の文書化要件適用1年延期

国境調整が正式に闇に葬られ「消費地課税よ永遠に」となった翌日の7月29日、日本企業の米国オペレーションにとってもうひとつ最大の関心事と言ってもいい米国過少資本規則に基づく文書化要件適用開始が一年延期されると発表された。

東海岸では金曜日も正午を回り、NYCは比較的涼しくて過ごしやすく週末に向けていい感じのVibeが街に漂い始めた矢先、財務省によるNotice 2017-36発表というニュースが届いた。過少資本税制(正式にはDebt/Equity区分と言うべきだけど)に基づき2016年のオバマ政権末期に滑り込みで最終化された財務省規則は、とてつもなく複雑な「Funding規定」が既に法的な効果を持っている一方、文書化規定は2018年1月1日またはそれ以降に締結される関連者間ローンから遅れて適用となっていた。更に最終規則では、文書化を整えるタイミングも申告書提出までと緩和されていたので、3月決算の多い日本企業的には早くても2019年1月15日(なぜかIRSは申告期限を一月遅らせているので)までに対応すればいいことになっていた。

とは言え、時は既に2017年夏。そろそろ文書化対策も本腰を入れて考えなくては・・、となりそうな絶妙なタイミングで適用一年延期の通達が出たことになる。これで3月決算の場合、最長2020年1月までに文書化を整備しなくてもいい形となり、文書化熱は又しても大きく後退することとなりそうだ。2020年と言えば東京オリンピックの年だし、現時点では遠い未来のように感じられる。でも多分直ぐにその日は来てしまうんだろうけど。

以前から触れてるけど、最終規則は特に従来からのCommon Lawに基づくDebt/Equity区分の概念には手を付けておらず、したがって今までの判例等に基づく考え方がそのまま今日でも適用される。少なくとも前政権下の財務省のポジションは文書化要件は従来から充足が必要であり、最終規則では単にその点を正式に再度認知し、また文書化の内容を統一しただけというものだ。したがって、今回の延長も必ずしも文書化が2019年の関連者間ローンまで存在しなてくもいいと言う性格のものではなく、「文書化ナシ=Equity扱い」という推定規定の適用がない、または文書化の内容に関して必ずしも規則通りでなくてもいい、という意味を持つものと考えるのが正しい。文書化要件の中でも特に不履行時の法的権利の行使実績とかは必ずしも規則通りには担保されていないケースも多いだろうけど、レバレッジが過大と判断され得るケースでは返済能力の合理的可能性とかはある程度文書化しておく必要がある。

ちなみに最終規則はトランプ新政権による「悪法」の見直しプロセスで、納税者側の負担が大きい規則の1つと認定されており、今後、更なる見直しが入る可能性がある。新政権誕生の頃には、この最終規則は即廃案かと期待されていたけど、現実には何をするにも法的なプロセスを経ないといけないので結構時間が掛かる。有権者の忍耐がどれだけのものかという点は2018年の中間選挙の行方を考える上で重要なファクターだろう。ただ、WSJの記事によると、トランプ政権が何も実行できていないというのはオバマケア廃案、税法改正等、立法府の議会の問題が大きく、行政府側で達成できる規制緩和は相当実行されているという。確かに税法の世界でも規制緩和の話しはあっても以前のように複雑な規則が乱発されていることはない。悪法と認定された規則を今後新政権下の財務省がどのように処理していくか興味深い。

Thursday, July 27, 2017

「Big 6」による税法改正声明文発表(国境調整正式取り下げ)

Big 6が今週中にも税法改正に関して何らかの声明を発表するという憶測が週前半からあり、今週に入って以前にも増して下院、上院、大統領府の重鎮がかなり議論を重ねていて慌ただしい感じだった。上院がオバマケア廃案に未だ手間取っている中、次の立法の目玉となる税法改正の方は水面下でかなり動きがあるように見えた。そして今日、Big 6の発表に漕ぎつけここに来て一応一つ心理的に大きな進展を見たと言える。

ここでいうBig 6は会計事務所のことではない。と言っても今の人は「だって会計事務所はBig 4なんだから会計事務所の訳ないじゃん」って思うかもしれないけど、その昔、会計事務所はBig 6だった。というか更に以前は実はグローバルなネットワークを持つ大手会計事務所はBig 8として知られていた。Big 8は70年代後半から80年代に掛けてグローバルネットワークを完備して多国籍企業、特に米英企業に対する世界ベースでのサービス提供能力を誇っていたが、1989年にEWとAYが合併して今のEYができ、DHSとTRが合併して今のDTとなり、Big 6時代が到来した。DHSは黄色いワークペーパー、TRは薄緑のワークペーパーで、合併後しばらくはその色が違うと旧DHSやTRのパートナーはレビューするのが嫌だと言ったりした合併に伴う悲喜交々の逸話も今は昔だ。その後、1998年にPWとCLが合併して今のPwCとなり、Big 5となる。この頃の話は覚えている方もいるだろう。で、2001年には例のEnron事件でAAが解散に追い込まれ、現在のBig 4体制に至っている。

でも今日の話しは会計事務所の歴史の勉強ではなく、米国税法改正の中心的なプレーヤーを意味するBig 6による声明文の話しだ。何がBig 6かと言うと、立法府の両院リーダー、そして両院の税法立案担当委員長、そして行政府から財務省長官、国家経済委員会長という面々で構成される税法改正の最高意思決定の重責を担う方たちのことだ。すなわち、下院議長のPaul Ryan、上院多数党院内総務(凄い役職名・・)のMitch McConnell、Steven Mnuchin財務長官、Gary Cohn国家経済委員会長、下院歳入委員会長のKevin Brady、そして上院財政委員会長のOrrin Hatchの6人だ。迫力満点の強者揃いだ。

そうそうたる顔ぶれのこのBig 6。そんな凄いメンバーによる声明だけに4月の大統領府のレターサイズ一枚の原理原則とは異なる内容の濃いものが発表されるのかと言うとそうではない。内容が軽いであろう点は充分に予想されていたことで、今回の声明は単に両院と行政府が足並みを揃えて税法改正の決意表明ができた点に心理的な意味が見出さるという性格のものだ。税法の内容そのものとしては今回の声明もトランプ大統領案の発表に劣らず目を見張るものはない。敢えて言えば国境調整は正式に取り止めという点が確認された位だろう。国境調整は輸入業者等の反発が激しく、下院、上院 行政府を一枚岩にする際の大きな足かせとなっており、ここ数カ月ゾンビ状態だったのでこの点に特に斬新さはない。

後は相変わらずの共和党節が炸裂していて何となく微笑ましい。何年も実現できなかった税法改正にコミットしている議会と大統領により米国市民の皆さんにより多くの手取りを持ち返ってもらうとか、雇用促進、経済成長を助長するとか、ミドルクラスを一番念頭に置いているとか、大統領の強いリーダーシップの下、行政府は議員の先生200人、経済界から数百人規模のステークホルダーと意見交換を重ねてきたとか、4月26日のトランプ政権記者会見のデジャヴ状態だ。

具体的な点と言えば、税率はできるだけ低くし、中小ビジネスにもその恩典を確保し、前代未聞の設備投資減税を試みるという位。テリトリアル課税移行を示唆するコメントもあるがこの点は既に業界では織り込み済みなので逆にテリトリアル課税にならなかったらビックリ。また10年間とかの期間限定ではなくできるだけ恒久措置にしたいとしている。う~ん、トランプのレターサイズ1枚も軽かったけど、今回のはナンともっと軽い。議員200人だの業界の重鎮だのと何カ月も会ったり、Big 6間で何カ月も議論を重ねてきた結果がこれというのはチョッとお寒い気がしないでもないけど。税率は行政府15%、下院歳入委員会のThe Blueprint20%だけど、特に具体的な税率への言及はなし。中小ビジネス云々はパススルーにも低税率を適用するというものだろうけど、かなりテクニカルな問題を秘めているだけに今後どのように条文化されるか楽しみ。また設備投資減税の部分はキャッシュフロータックスを示唆しているのだろうか。The BlueprintのDBCFTのDBはなくなったのに都合のいいCFは残すということなのだろうか?そんなコンセプトも何もない単なるポリティクスの産物を目の前にUC Berkeleyの経済学者はさぞ落胆していることだろう。金利の損金不算入とか悪いニュースは一つも入っていないけど、設備投資をキャッシュフローで費用化させて、国境調整なしでは一体どこまで税率を落とせるのだろうか?Aggressiveな税率をターゲットにすると代替歳入源が必要となり、変な方向に話しが行く可能性もある。かなり支離滅裂というか場当たり的。オバマケア廃案が失速しているせいで3.8%のNIITとか未だ残った状態での税法改正となるとそちらも税法改正の枠で何とかするんだろうか。党内調整が大変そう。

まあ、下院歳入委員会と上院財政委員会がいよいよ本気でMarkup(条文のドラフト)に入るということが確認できただけでもプラスと評価しておこう。

Saturday, July 15, 2017

外国法人による米国パートナシップ持分譲渡・売却

最近、米国税法改正の動向というか停滞にかかわる話しが多く、税法そのものの実質的な話題に乏しい。ひとつには新政権の規制緩和努力に伴い、財務省等の行政府が以前のようにむやみやたらと規則を発行し辛くなっているという背景もあるだろう。ここ数カ月で考えると、5月に公表されたスピンオフの「North South取引」に対するRevenue Ruling 2017-09がSub C的にまあ興味深かった位。

そんな中久しぶりに日本企業に影響大のTax Courtケースが出た。「GRECIAN MAGNESITE MINING, INDUSTRIAL & SHIPPING CO., SA,」(略して「GMM」)だ。SAというから南米の法人のケースからと思ったら実はギリシャ法人の米国における課税のケースだった。社名が「Grecian」だからそれはそうだよね。

で、このケース、外国法人が米国パートナーシップ(LLCとか米国税務上パートナーシップ扱いの主体を含む)持分譲渡から得る譲渡益が米国で課税対象となるかどうかという比較的どこにでもある事実関係にかかわるものだ。日本企業でも直面することが多い問題だ。「えっ~そんな単純な取引の扱いが法廷で争われるってどういうこと?」って皆ビックリかもしれないけど。

この点に対する米国税法上の扱いは比較的明確だったはずだ。譲渡益はSub Kの世界ではパートナーシップ持分と言うパートナシップ内部資産とは別の個別資産を譲渡して得られるキャピタルゲインとなる。すなわち譲渡益の扱いを考える上ではパートナシップをAggregate論ではなくEntity論で扱う。例外はホットアセットと言って含み益を持つ棚卸資産とかの特定の通常所得となるべきパートナシップ資産に帰属すると考えられる部分の譲渡益で、この部分はあたかもパートナシップ内部の資産を個別に譲渡したかのように扱われ、結果としキャピタルゲインではなく、通常所得となる。ただ、原則はパートナシップ持分という個別のひとつのキャピタル資産を譲渡したという扱いとなる。

このことから外国法人が米国パートナシップ持分を譲渡する場合、ホットアセットにかかわる部分以外に関しては、キャピタルゲインを認識したことになるけど、キャピタルゲインは米国源泉だと、Asset Test、Activity Test等に基づきECIかどうかの判断をしないといけなくなり、外国源泉だと米国にある事務所に帰属する場合のみECIとなり得る(これはかなり例外的)。またパートナシップ持分譲渡益がパートナーシップが持つ米国不動産持分に帰属すると扱われる場合には、FIRPTA規定に基づき強制的にECI扱いとなり結果として申告課税となる。

となるとパートナシップ持分を譲渡した際には譲渡益の「源泉地」が重要な検討事項となるけど、パートナシップ持分を含む「動産(Personal Property)」から認識される譲渡益の源泉場所は通常売り手の居住地を基に決定される。米国上場企業の株式を日本の投資家が譲渡してキャピタルゲインを認識しても通常米国で課税対象とならないのと同じ理由だ。売り手の居住地を基に所得源泉地を決定する一般規定の例外は、外国法人が米国に事務所を有しており、かつ譲渡益がその事務所に帰属すると扱われるケースだ。その場合、仮に納税者が米国非居住者でも譲渡益は米国源泉となる。

この米国に事務所があって云々という部分は結構分析が複雑なんだけど、GMMのようなケースでは仮にパートナーシップそのものが米国に事務所を持っていることをもってパートナーである外国法人も間接的に米国事務所を持っていると扱われたとしても、パートナーシップ持分譲渡という行為はパートナーシップ側の米国事務所がMaterialに関与したり、通常の事業活動の一環で行っているものではないので、例外規定は適用がないと考えるべきだろう。

今回のGMMケースでは、一部FIRPTA規定に抵触するものがあり、その部分は課税対象ということで納税者およびIRSで意見の一致をみていたが、それ以外の部分のパートナシップ持分譲渡益が米国で課税対象かどうかが争われていた。

上述の通り、税法の考え方は比較的明確で、パートナシップ持分譲渡益はキャピタルゲインであり、外国法人が認識するキャピタルゲインは米国にある事務所に帰属しない限り、外国源泉となる。となると通常はECIとはなり得ず、米国では非課税となるというものだ。今回のGMMもそのような扱いに基づく申告ポジションを取っていた。

IRSはこのような事実関係に対して税法では説明し切れない理論で、パートナーシップが各資産を個別に譲渡したらECIになる場合には、仮にパートナーがパートナシップ持分を売却したとしてもLook-throughするような形で、ECIになると主張している。この手の主張は従来から展開されていて、古くはRevenue Ruling 91-32が有名だ。この法的に若干訳が分かり難いRulingがあるせいで、税法上は明らかに米国では非課税となるべき日本企業による米国パートナシップ持分譲渡取引に関していつも課税かどうかあれこれ議論しないといけない状況に陥っていた。このRulingは日本企業に米国税務サービスを提供している者なら必ず知っている(べき)有名かつとても迷惑なRulingだった。

今回のTax Courtの判決ではIRSの「結果有き」の主張はバッサリと否定され、長年のもやもやがスッキリした。判決文に記載されているIRSの主張はどれも結果優先で詭弁に過ぎず、時として無理があり過ぎる感じ。パートナシップ持分をひとつの資産と扱ってしまってはFIRPTA規定が適用できないとか、かなり場当たり的な観がある。

Tax Courtの議論で一点不思議だったのは譲渡益はFDAPではないと断った上で、米国源泉であればForce of Attractionに基づき課税となるというような部分。もし米国源泉だったらFDAPでなくれもCapital Gainはsection 864(c)(3)を論じる前にSection 864(c)(2)のAsset TestやActivity TestでECIかどうかを決定するんじゃないかと思ったけど。ここは僕の誤解の可能性もあるのでもう少し後で考えてみたい。でもどっちにしても米国源泉ではないので関係ないけどね。

今回の判決ではRevenue Ruling 91-32に対して「税法を合理的な理由もなく不適切に解釈」している通達として何の法的価値も認めないとまで言っている。IRSによる法的根拠のない暴走型のRevenue Ruling 91-32をバッサリと切ってくれた形だ。これで今後、同様のケースでは米国非課税という法的主張が通り易くなるけど、税務調査の局面でIRSが引き続きどう出てくるかは、Tax Courtの判決にIRSが不本意ながらも従う(Acquiesce)と発表するかどうかで大きく変わる。

そもそもこの問題、議会がSection 741とかチョッと変更すればIRSの主張するような扱いになる訳で、実際Revenue Ruling 91-32を条文化するに近い法案は過去に提出されている。ただ、未だに法制化はされていない。法制化されていないものをポリシー的に行政府がRulingとかの形で自らの手で実質法制化してしまうのは三権分立の観点から大きな問題だ。GMMケースは行政府の暴走を止めるために司法府が立法府の意志を尊重したという形で解決したので、三権分立がうまく機能していて喜ばしい。最近は大統領令の解釈を巡り、Standingがあるかどうかも分からない州とかの訴えに地方裁判所が厳密な憲法解釈ではなくポリシー優先的な判決を出すことも散見され、きちんの憲法の趣旨に立ち返った判断をして欲しいと米国の法の支配の行方を憂えていたが、GMMの判決は明るいニュースだった。

Friday, June 30, 2017

米国税法改正は七面鳥かチョコレートか

最近、何回か続けて「何周年記念」みたいな話しを聞く機会があった。まずは何といってもiPhone発売10周年。発売の日に店前に並んだけどそこでは買えなくて結局別の店でようやく元祖iPhoneを手にしたあの日の感動から10年とは時が経つのは早い。その後買ったiPhoneは次々と空港でなくしたり、タクシーに忘れたり、飛行機のシートに挟まれて割れたり、ポケットに入れたままプールに入ったり、修復不可能な位スクリーンが割れてしまったりといろいろあったけど、初期型は今でも何とか持っている。当時は何て格好いいDeviceと感動したけど、今見ると分厚いし、小さいし、App Storeがなかったりと年月を感じさせる。それにしても10年で世の中を変えてしまったといってもいいiPhoneを世に送り出したAppleは凄い。他のメーカーが後から同じようなものを真似して作るのは容易だけど、あのようなコンセプト自体を創造し現実のものとしたSteve Jobsは偉大だ。

次はBrexit一周年記念。こちらも「え~もう一年?」という感じ。つい最近のことだったかのように感じる。で、次が肝心なAnniversaryなんだけど、下院歳入委員が「The Blueprint」を発表してからも一年が経った。このThe Blueprint、発表当時は共和党の大統領が誕生するかどうか分からなかっただけにそんなに注目されてた記憶はないけど、トランプ大統領が当選を果たした2016年11月に実現可能性が俄然高まり、同時に注目度合が高まった。その後の国境調整狂想曲は皆様もご存知の通り。

で、このThe Blueprintにとって記念すべき日となった2017年6月20日、The Blueprintの生みの親と言っても過言ではない、現下院議長のPaul Ryanは今後の税法改正にかかわる「Major」なスピーチを披露してお祝いした。DCで開催された全米製造業協会、National Association of Manufacturers、略してNAMのサミットでペンス副大統領に続いて登場したRyanはまず「規制緩和、オバマケアの見直し、税法改正、軍の再構築」の4つに注力しているとスピーチを始め、中でもオバマ時代の行き過ぎた規制を次々撤廃しているという功績をその日の聴衆である製造業に対する恩典と結び付け、一周年祝賀スピーチはスムースな滑り出しとなった。

そして満を持して「Ladies and Gentlemen・・・」と改めて切り出し、皆が待ち望んでいた米国税法の話しに移った。「米国税法改正の話しは金輪際二度としないでもいいよう今回こそ大胆な改正を実現する」と力強く宣言。レーガン政権により行われた最後の抜本的税法改正から30年経っている点を「これはその昔、僕が運転免許を取った年です」と新たな税法改正の機が熟している点をおかしく強調した。

でもその後のスピーチの内容には特に目を見張るような新しいポイントは見られなかったと言っていい。税法が複雑過ぎるとか、遺産税やAMTは撤廃するとか、抜け道はふさいで減税するとか、全世界課税なので米国に資金が還元されない等のいつもの話しだ。

今回のスピーチに関して、皆が最も関心を持っていたのは、風前の灯的になってもPaul RyanやKevin Bradyが未だ諦めずに提唱しているDBCFTの特にDBの部分、すなわち国境調整に関してRyanがどのようにコメントをするかという点に他ならない。でも、余りにセンシティブで、触れることすら憚らるという判断に至ったのかどうかは定かじゃないけど、結局この点にかかわる直接的な言及はなかった。一部、DBCFTに暗に触れているかのような部分はあるにはあった。それは、米国企業が外国に行ってしまうような出来の悪い税法は変えないといけないと断じた際に「違う発想で税法を考えないといけない。アプローチはひとつではないが、下院はひとつのアプローチを提唱していて、この点は大統領府と調整している項目のひとつだ」とした部分だ。DBCFTは確かに違う発想。違い過ぎて普通の人にはなかなか受け入れられないんだけどね。「他の国を真似していてはスーパーになれない」みたいな趣旨のスピーチがその後も続くけど、この部分も従来の法人税の枠から脱することを示唆しているように聞こえた。

スピーチ後のインタビューでRyanは税法改正をThanksgiving(11月後半)までに実現したいと語っていた。「それはいくら何でも無理では・・・」という反応がほとんどだったけど、もしそうなったら凄い。七面鳥スタッフィングしてオーブンに入れて料理してる間に新税法を読むことができるかも。でも既に7月間近で未だに上院ではオバマケア廃案に手間取っているくらいだから、Thanksgivingはチョッと非現実的。サンタさんのプレゼントも危なく、早くてもバレンタインデーのチョコレート食べながらくらいのタイミングじゃないだろうか。それとも一部でささやかれているように議会の先生たちが8月の5週間の休暇返上で、税法改正等の最重要法案の制定に精を出してThanksgivingを目指すのでだろうか。このアイディア聞こえはいいけど、実は議員たちは手ぶらで地元に帰って選挙区民たちに怒られるのが怖くてDCに残る口実を探しているのかもね。

Thursday, June 15, 2017

トランププランと今後の税法改正動向 (5)「パススルー」

前回のポスティングでは、税法改正と言うのはテクニカルな話しではなく、むしろポリティカルな話しであること、また税法改正の行方が白紙に近い状態にあることから自分に都合の悪い規定は阻止しようとDCにて強力なロビー活動が展開されている点に触れた。最終化されるかどうか分からない、またされるにしても改正内容が不明な税法改正の話しに、現時点でどれだけ時間を割いて触れていくのかは微妙な問題だけど、パススルーに関しては一回書いておきたい。

現状の税法ではパススルーはその名の通り、所得、費用、税額控除等を事業主体ではなくそのオーナーにパススルーして、各オーナーがパススルー主体からの所得、費用等とオーナー側の他の税務ポジションと合算して申告を行う。したがって、同じ100の所得でも、39.6%の税率に属する個人オーナーにパススルーされるとオーナーは39.6の税金を支払うことになるし、15%の税率に属するオーナーの場合には15の税金となる。法人がオーナーの場合も同様でその場合は大概において34%か35%の法人税率に基づいて税金を支払うことになる。また、もしオーナーレベルで損失が出ていれば、100のパススルーと合算できるのでその年の税金はなくなることもある。逆に損失がパススルーされてくる際もPAL規定とかAt Riskとかに抵触しなければ基本通算が認められる。更にオーナーに配賦されてくる金額は必ずしもネット課税所得に持分を掛けた金額、すなわちBottom Line Allocationである必要はなく、グロス売上、減価償却、キャピタルゲインとか特定の項目がそれぞれ個別%で配賦されてもいい。

株式会社の株主が同じクラスの株式を持っている限り、全員同じ配当を持分に準じて均等に受け取るのと異なり、パススルーはオーナー間で自由にどのような項目をどのように分けるか合意することができる。ただし、オーナー間で合意された配賦が税務上も認められるためには、配賦が「実質的な経済効果」を持つとみなされる安全ガイドライン(Section 1.704(b)のSafe Harbor)の要件を充たすか、またはPIPに準じているか、のいずれかの必要がある。以前は安全ガイドラインが手堅いと言うことで好まれたが、ここ何年もトレンドは逆になり安全ガイドラインはディールのエコノミクスが反映されているのかどうか分かり難いため嫌われる傾向にあり、ターゲット配賦とかのPIP方式がすっかり定着している観がある。この辺の話しはパートナーシップ税法の醍醐味だけど、それだけで10回くらいのシリーズになるのでそのうち。

総じて言えば、上述の点、すなわち事業主体とオーナーで二重課税がない点、損益通算が認められる点、弾力的な配賦が可能な点がパススルー主体の税務上の魅力と言えるだろう。

で、今回の税法改正だけど、パススルーの所得に関してオーナー側で課税するという形は温存するものの、税率はオーナーの税務ポジションにかかわらず一定にしようという動きある。もともと下院歳入委員会のThe Blueprintもパススルーに対する特別課税に言及していてパススルー所得は25%で課税するとしている。

この25%という税率設定は法人税率20%との比較において少し不思議。FICAとSEタックスを無視して所得税の世界で考えてみる。例えば同じビジネスを法人形態で営んでいるとして、そこで100のネット課税所得があるとする。The Blueprintでは法人税20%だから、税引後の分配可能利益は80。個人株主側の税率はThe Blueprintによると所得水準に基づいて12%、25%、35%の3段階。だけど配当、キャピタルゲインは税率は半分と提唱されているので配当課税は6%、12.5%、17.5%だ。となると、100の利益に対するトータル税負担は、各々24.8%、30%、34%となる(法人税20+(80 x 配当税率)。12%区分に属する納税者だとパススルー主体でも法人でも同じような結果となる一方、他の納税者はパススルー主体の方が有利となる。

The Blueprintをそのまま鵜呑みにすると全てのパススルー主体に25%が適用されるようにも見えるが、その後の発言等を加味すると中小規模のパススルーのみを対象にしているようにも聞こえる。パススルーが中小でもオーナーの税率区分は35%のケースは多いだろうから何か変な感じ。その辺を意識して本来給与としてオーナーに支払わらるべき金額に関しては通常の税率、すなわち、12%、25%、35%で課税するとしている。以前のポスティングにも書いたけど、何が適正水準な給与かというValuationの問題は主観的な判断の余地が大きくかなり争点となるだろう。パンドラの箱を開けるようなものだ。それともCamp案で言及されていたように、パススルー所得の70%は自動的に給与所得同様とみなす、というような機械的な判断法を設けるのだろうか?

一方、4月26日発表のトランプ税法改正プランでは法人税の15%同様にパススルーも15%にするということのようだった。トランプ案ではパススルーときちんと言わずに中小事業にという表現をしているので分かり難かったがQ&Aとか聞く限り、S法人を含むパススルー、個人事業主を対象としているようだ。The Blueprintのパススルー規定も文字通り解釈すると個人事業主(Sch. Cの方)には適用がないようにも読めるが、おそらくこちらも個人事業主も含むことを前提としているんだろう。トランプ案は法人もパススルーも一律15%ということみたいだけど、上と同様の税率比較をするとこちらも不思議な結果となる。大手事業主がパススルー税率の適用を乱用しないよう対策を講じると財務長官のMnuchinは言うが、その対策だけでも税法がますます複雑化するのは必至。

トランプ案もThe Blueprint同様に給与として支給されるべき金額は通常の課税にするとしている。何が給与相当なのかというValuationをルール化するのが至難の業と思われる点は上述の通りだが、商務省長官のWilbur Rossは、そんなルール策定はDCの弁護士、税務専門家のブレーンパワーを考えれば朝飯前で、そんなルールも作れないのであれば職を変えた方がいいと言い切る。当人のDCの弁護士や税務専門家たちはそんなルールをどうやって策定したらいいのか途方に暮れているのに。このようなルールは議会がドラフトする税法そのものには入り難いので、財務省規則にて規定される可能性が高い。財務省も頭が痛いだろう。既存の法律下でも、S法人のオーナーがSEタックスに抵触しないよういろいろと試みるのを見ても、一旦パススルーに特別な税率を規定してしまうと多くの争点が生じるだろう。

また、大昔に何回か触れたCarried Interestに関しても網を掛ける、すなわちキャピタルゲイン税率ではなく通常税率で課税するかのような話しが税法改正の一環で相変わらず出ている。でもパススルーに特別税率が認められるんだと今までの単純なキャピタルゲイン税率と通常税率の差異だけの話しではなくなってしまうのでCarried Interestの課税強化を仮に実行するとしても前提がそもそも変わってしまうけどね。ここに来てCarried Interestの扱い変更は、資源、不動産、PEファンドとか特定の業種を狙い撃ちすることになるので現状通りにしてあげればどうかという話しも出ている。でも元々他の業界では適用する機会がないプラニングなんだから、そこを狙い撃ちしているという理由で強化をあきらめるのは何か変。国境調整と輸入業者の関係みたいだ。

実はパススルーの特別扱いに関してはカンザス州が似たようなことをしているので次回は簡単にカンザス州の実体験に関して。

Saturday, June 10, 2017

トランププランと今後の税法改正動向 (4) 税法改正とKaty Perry#2 「ロビー活動」

前回まで3回「国境調整」というかDBCFTが目指す真の姿とそのポリティカルな運命に関して触れた。DBCFTにかかわる議論を見ていると税法改正と言うのはテクニカルな話しでは全くなく、ポリティカルな話しであることが良く分かる。ポリティクスというのは時には事実関係とか法の支配とは関係ないところで事を進めていく傾向があり予見可能性が低く太刀が悪い。

余りにポリティクスの影響が強力で、過去数カ月の議論を見ているとかなり空中分解気味。となると最も現実的な落としどころは何も起こらない現状維持と見る向きもある。ただ、共和党政権の実質的な信任投票と言える2018年の中間選挙が迫っていることを考えると、共和党としては何としても2017年内または2018年前半にはオバマケア廃案と何らかの税法改正を終えてしまう必要があるだろう。ただ、税法改正を2017年末には達成したいという党の総意には誰も異論はないだろうけど、現実には改正案の個々の条件を巡って党内の意見調整が難しく、また大統領府の強力なリーダーシップも不在で、バタバタと慌てて何か法制化したとしてもThe Blueprintが目指していたような抜本的な税法改正と言えるような立派なものに至るのか、それとも単に付け焼刃的な減税で終わってしまうのか、現時点では誰にも分らない。まあ、税法改正と単なる減税は聞こえは違うけどその境界線は必ずしも明確ではない。どこまでやれば税法改正でどこまでは単なる減税なのか、という境目はボヤけてるので余りこの用語の差異に拘っても仕方がないかも。

素早く抜本的な税法改正を法制化しようとする際の障害のうち、議会共和党が一枚岩でない点はイデオロギーの話しなので仕方がないが、本来そんな時こそ大統領がリーダーシップを発揮して全体を取りまとめたり導いたりする必要がある。ところが、トランプ大統領は次々と不必要なTweetとか規律に欠ける行動で自ら墓穴を掘りまくりPolitical Capitalの多くを浪費してしまっている。以前のポスティングで税法改正の議論をKaty Perryの「Hot n Cold」に例えたけど、トランプ大統領の現状は同じくKaty Perryの「Self-Inflicted」の状態と言える。

トランプ大統領府による税法改正プランがほぼ白紙に近い点は前回までのポスティングで再三触れているけど、その点が誘発する悪影響のひとつとして激しいロビー活動が挙げられる。すなわち、税法改正のキャンバスが真っ白な状態で提示されている訳だから、「自分に都合のいい絵を描いてしまおう」という輩がDCに押しかけている。小売業関連の団体はThe BlueprintのDBCFTの更にその一部のDB部分に対する不信感を全力で煽っているし、全米不動産業界は8,000人単位のメンバーをDCに送り込んで、標準控除の拡充や州税控除撤廃反対を展開している。不動産業界がなんでそんなものに反対しているのかチョッと分かり難いかもしれないけど、州税控除がなくなり標準控除が拡充されるとSch. Aで個別控除を取る納税者の数は激減する可能性がある。となるとせっかく住宅ローン金利を支払っても税メリットがなくなってしまい、不動産市場に悪影響?ということなんだろう。風が吹いて桶屋が儲かるような話しにも聞こえるがロビー活動に油断は大敵。不動産業界は更に農場主やPEファンド達と一緒に金利の損金算入温存に注力しているし、多国籍企業のロビー活動の矛先はテリトリアル課税移行時の一時課税を何とかトランプが以前に言及していた10%ではなくThe Blueprintの3.5%または8.75%にするという点に向いている。結局、皆、白いキャンバスに自分たちに都合のいい色を塗ろうとDCに集結している。余りに皆が「これは嫌です、あれも嫌です」と不整合な色を付けすぎると何の色もないブラックになってしまい、歳入を確保した形のきちんとした税法改正にはなりようがない。

個人が支払う州税・地方税の個別控除撤廃は不動産業界に限らず全体にかなり不評。特に州税の高いNY州、CA州居住者への影響が大きい。トランプ政権の全てに大反対を表明するNY民主党上院議員で上院少数党院内総務も務めるChuck Schumerもいち早く反対を表明し、不動産業界と同じく、そんなことをしたら住宅ローン金利が控除できなくなり大問題だとしている。

それはそうなんだろうけど、何か大きな改革を起こしましょうという時に、個人所得税の州税の個別控除すら撤廃できないようでは他は押して知るべし。支払利息の損金不算入にしても、州税控除の撤廃にしても、これらから見込まれる歳入は大きく、それらがあるからこそ15%だの20%だのという低税率の実現が可能になる訳で、損する改正は嫌だけど税率は低くというのは算数的に無理がある。このことから財政均衡は無視してでも減税するという話しがちらほら出てきている。

上院で60議席を持っていれば共和党としては好きな法律を通すことができるが、現実には51議席。その場合には税法改正は上院でも例外的に過半数で通すことができる予算調整法内で立法するオプションしかない。その場合には財政均衡を保つという追加の要件が付いて回る。にもかかわらず赤字になっても減税するというような話しが出てくるのは不思議に思えるけど、実は予算調整法を使っても10年を超えてのマイナス財政は許されないというのが一般的なルールだそうで、だったら10年期限で思い切った減税をするかという話しもある。以前にもブッシュ(息子)が2001年に行った大型減税はこの理由で「なお、この税法は5秒、じゃなく10年で自動的に消滅する」となっていた。

う~ん。このセリフは今聞いても格好いい。これ知ってるよね?「Mission Impossible」で作戦内容を伝えるテープの最終部分だ。メッセージの最後にテープレコーダーが燃えちゃうやつ。ちなみに英語では「This message will self-destruct in five seconds」だけど、日本語だと「なお・・」ってつけてるのがイカしてる。トムクルーズが演じる現代のMission Impossibleはどちらかというとド派手なアクションムービーでこれはこれでもちろん楽しめるけど、昔のもう少しダークな感じの「スパイ大作戦」もよかった。「大作戦」っていう実にレトロっぽい題名が最高。ウルトラマンの「MAT、Monster Attack Teamの略である」の「MAT」も中々笑える格好いい名前だ。「マット隊員」とか呼ばれたりして昔の名前はGuysなんかより凄い。ちなみにメビウスのGIGっていうのはキャプテンスカーレットのSIGから来てるそうだ。で、スパイ大作戦のテープのメッセージには、真ん中辺に「例によって、君あるいは君のメンバーがとらえられたり殺されても、当局は一切関知しない」の部分もあるが、あの言い回しも最高。ちなみにこの部分の「当局」は英語では「Secretary」だ。各省の長官をSecretaryということを知っていれば違和感はないけど、直訳で秘書とならないようにね。税法でも財務省規則策定の権限は「Secretary」、すなわち財務長官に与えられている。ドラマの和訳と言えば、「謎の円盤UFO」の英国オリジナルバージョンだとタイプライターが打ち続けるOPメッセージを「1980年既に人類は・・・」って格好良く訳してたけど、あれも名訳だ。今は2017年だけど、地球防衛組織シャドーは37年前に既に「沈着冷静なストレーカー最高司令官の元に」結成されていたことになる。あのOPは今見ても格好良すぎ。

で、何の話しだったかって言うと、歳入を伴わない減税を実行するには予算調整法等の仕組みから10年の時限立法とするしかないと一般に言われている点でした。ただ、正確なルールは必ずしも10年ではなく「Budget Window」を超えて赤字になってはいけないということのようで、従来Budget Windowは10年と考えられていた。で、この10年と言う数字には少なくとも1974年Budget Actに基づく法的な拘束力はないようで、最近ではBudget Windowは20年、さらには30年と考えてもいいんだ、というような過激な主張も出てきている。30年を超えて赤字にならなければ予算調整法の枠で法制化が可能という主張だ。30年だったら時限立法とは言っても限りなく恒久措置に近い。

ビジネスプラニング面、また立法プロセスの規律面からも税法改正は期間限定ではなく恒久的な法律で実行されるのが本筋だろう。R&Dクレジットが時限立法だったころは毎年ハラハラしたし、ブッシュ減税失効時の2011年、そして2年延命後の2013年もバタバタだった。ただ、今回の税法改正を実行するに当り、ロビー活動が激しくにっちもさっちも行かなくなるようだと、Mnuchin財務長官が しばしば言うように「恒久的な改正は時限立法よりベター、でも時限立法は何もしないよりはベター」ということで結局は時限立法に落ち着くのだろうか?

Tuesday, May 30, 2017

トランププランと今後の税法改正動向(3)「国境調整」(3)

前回、前々回と下院歳入委員会が提唱するThe Blueprintの中のDBCFTのうち消費地課税を実現するためのメカニズムとなる国境調整、そしてキャッシュフロー課税について触れた。また、国境調整に関しては一般メディア等には正しく理解されていないように見受けられる点にも触れた。

5月23日には下院歳入委員会による国境調整に特化したヒアリングが開催されたり、Kevin Brady等による必死の延命措置が展開されているけど、そもそもよく理解されていない税法であること、仕入れを輸入に頼る小売業等による反対ロビー活動が強力なこと、ドル高懸念、等が相まってどんなに導入時のインパクトを軽減すると言っても消費地課税の導入は風前の灯火状態と言える。

そんな状況なので、今となっては学術的な背景となってしまうかもしれないが、経済のグローバル化が更に進み、現状の所得ベースの法人税が機能不全となった暁には又DBCFTが各国で真剣に議論される日が来るかも。ここはそんな日のため備忘記録的に読んでみて欲しい。到着が早すぎたということなんだろうか。Back to the Futureの最初のストーリーで主人公Marty McFlyが何十年も前のダンスパーティー(まだChuck Berryがデビューする前の時代という設定)でEdward Van Halen風のギターソロを弾いて誰も理解できなくて、仕方なくMartyが観客に向かって「皆さんの子供たちの時代になればきっと分かると思うよ」みたいなシーンがあって笑えたけど、DBCFTも実はCheck Berryデビュー前のVan Halenのソロみたいな感じ?全然違うかもね。

DBCFTはVATに類似すると言われるけど、その中でもSubtraction方式のVATに最も類似しているらしい。で、VAT採択済みの150か国の中で一か国だけこのSubtraction方式を採択している国があるということ。どこでしょうか?そう、日本なんです、これが。ということでDBCFTに一番似た仕組みを既に実行しているのはナンと他でもない日本という面白い事実がある。でも日本もSubtraction方式は行く行く改めると聞いたことがある。

で、DBCFTとVATを比較すると決定的に異なる点が2つある。まず1つは米国内の人件費が20%の課税計算上、控除できることだ。米国外のサプライチェーンを経由していくる場合には、輸入時の国境調整メカニズムを通じて、米国外の労力に基づく付加価値も含めて全ての価値に20%課税されるので、この点は国内と輸入を「Level Playing Field」にしている以上の効果、すなわち米国を有利にしていると言える。経済学者に言わせると、この点に関しては国内の給与税を減税しているのと同じ効果、すなわち普通のVAT(人件費控除ナシ)と従来から国内に存在した給与税(米国のFICA)の減額の2つを組み合わせた状況と同じなので、VATが国境調整を原則として国際的に認められていて、かつ国内でFICAを減税しても他国には関係のなく、各々問題ないことを組み合わせて実行しても問題はないであろうというちょっと詭弁(?)のようにも聞こえるが、理論的には間違っていない主張となる。WTOがこれを飲むだろうか?欧州の法体系の影響が強いWTOではそんな実態よりも形式重視となる可能性が高く、WTOで揉めるのは間違いないように思う。ただ、以前にも書いたかもしれないけど、WTOで争っているうちに10年位直ぐに経ってしまうので、その間に$1 Trillionの歳入があるんだったらダメ元でやってしまう、とチャッカリ考えていた節がなくもない。

DBCFTとVATのもう一つの差異は、VATだの消費税だのは、目に見えてそれがサプライチェーンを経由して価格に上乗せされていき、最終的に消費者が消費地で全額負担することとなる。一方DBCFTは法人税として事業主体に課せられるので、価格に転嫁できるかどうかは明確ではなく、小売業が大騒ぎしてロビー活動しているように、最終価格に上乗せし切れない状況も十分に想定され、そうなると輸入に頼っている企業の収益、キャッシュフローを大きく圧迫することがあり得るということだ。

DBCFTが輸入を罰するというよりは輸入と米国製造を同じ土俵に立たせるという目的を持っている点は以前にも触れた。現状は米国から見た輸入は出荷地では国境調整のおかげでVAT免税、かつ米国側でも仕入コストとして35%の節税効果を持っているので、かなり競争力が高い。他方、米国からの輸出は米国で35%課税され、さらに輸入側で国境調整されるのでVAT課税、とダブルタックスとなり競争力なし、となる。これらの現象を「Made in America」課税と呼ぶこともある。で、輸入はとても有利なので、当然、小売業等はその恩典を享受している。輸入有利の現状を是正し、少なくとも税制面では輸入と国内仕入れを同等にしようと言うのが消費地課税だったんだけど、現状恩典を受けている納税者は、例えそのような恩典自体を是正するのが目的だとしても、当然それに反対し、政治家もそれを無視できない。結局、DBCFTのような大きな改正はできず、輸入が競争力をもったまま今後も時が流れていく可能性が大となる。オバマケアじゃないけど、一旦与えられた既得権を取り上げるのは政治的にほぼ不可能。

次にDBCFTの為替への影響だけど、これは経済学者が口を揃えて力説するポイントだ。すなわち、20%の国境調整で輸入に実質20%課税され、輸出は20%免税となると、ドルは25%高となり、その結果、国内終焉型企業も、輸入業者も、輸出業者も、税引後のキャッシュフローは全員きれいに一致するという説だ。DBCFTの税額そのものは為替がどうなろうとも変わらない。これは輸入や輸出が課税所得の計算に入ってこないから当然だ。では為替によって何が調整されるかというと、ドルベースでの仕入価格そのものが25%ドル高になると従来の80%で済み、税負担を相殺してしまうということだ。輸出もしかり。

25%のドル高は政権の為替政策とは真逆の方向に向かうように見える。また、ドルベースの外貨資産が大きく目減りして、大きな混乱を招く可能性が大。もちろんきれいにDBCFT導入翌日からドルが25%高になるという訳ではないだろうが、経済学的には他の変動要因を排除して理論的に考えると必ずそうなるということのようだ。これは業界の実務レベルと意見が合わない点で、小売業のCEO等に言わせれば「世の中学者が言う通りそんな教科書通りに行ってたまるか!」となるだろう。

という訳で、DBCFTはグローバル化する経済、米国が通商の観点から置かれている立場、OECDのBEPSレポートに見られるような従来からの法人税の限界、を加味して将来の税法としてベストなものは何かという点を熟考して経済学者達により策定・検討されたものだったが、実務的に受け入れるには余りに多くの課題があるということだろう。ちなみに面白いのは、経済学者の中でもUC Berkeleyの学者がDBCFTの著名なオピニオンリーダーとなっているが、UC Berkeleyと言えば、Ann Coulterが話しをしに行くと言っただけで、暴動が起きる米国でも最もリベラルな大学のひとつで(Berkeleyは本来言論の自由を標榜していたのではなかったんだっけ?)、それを共和党の下院歳入委員会が取り入れている点。

国境調整はこれ位にして、次回からは税法改正に他の切り口から触れてみたい。

Saturday, May 27, 2017

トランププランと今後の税法改正動向(2)「国境調整」(2)

前回のポスティングでは、トランプ大統領・行政府による税法改正プラン初の公式発表とその後の税法改正の動きの最初のフォーカスとして国境調整に関して書き始めた。下院歳入委員会が提唱するThe Blueprintの中のDBCFTは法人税に消費地課税という概念を導入しているが、その消費地課税を実現するメカニズムが国境調整と言われるものだ。一般メディアの報道を見るとこの「国境調整」とトランプが余り深い考えなく言及しているように見える「国境税」が混同されて論じられることが多いように思う。

先日イタリアで開催されたG7会議でも、各国の財務長官等が米国が国境調整を検討している点に懸念を表明し、Mnuchin財務長官は「現時点で提唱されている形では賛成できない」といつもの回答を繰り返していた。皮肉にもG7に参加している国で「国境調整」という仕組みを導入していないのはVATを持たない米国のみだ。他の国はVAT(日本では消費税)下で堂々と国境調整を行っており、米国に対する輸出に対してはサプライチェーンを通じて自国VATを免税として競争力を高めているばかりか、逆に米国からの輸入に対しては輸入時点で課税して米国からの輸出の競争力を弱めている。しかもThe Blueprintで提案されている20%の税率と同じ税率を適用している国がほとんどで、カナダのGSTは15%程度で若干低く、日本が8%で一番低い。にもかかわらず、米国が名称は法人税とは言え、内容的には同様の方式を導入しようと検討しているだけで自分たちのことは棚に上げて若干ヒステリック気味な反応をしている。おそらくDBCFTをきちんと理解しておらず、通商政策のトランプ国境税と混同しているのではないかと推測される。前回のポスティングで触れたオクスフォード大学の教授の言う通りだ。

DBCFTの消費地課税、すなわち「DB」部分はその名の通り、米国で消費されるものは、輸入だろうが、国内生産だろうが、サプライチェーンの全過程で創出される価値に米国で20%の課税があり、逆に米国外で消費されるものは、国内生産でも、米国外でもサプライチェーンの全過程を通じて米国では課税されない、すなわち輸出時にサプライチェーン過程で米国に納付された税金があれば、それは戻ってくるというシステムとなる。このコンセプトは日本の消費税も同様だ。現実には米国外で消費される米国内生産のサプライチェーンのDBCFT税負担は即還付されると言うよりもNOLに化ける可能性が高いという問題があるが。

DBCFTのもう一つの骨子となるキャッシュフロー課税、すなわち「CF」部分も法人税としては新しい概念だ。The BlueprintのDBCFTでは、従来の法人税のように会計的な期間損益に課税するという概念から、課税年度内トータルのキャッシュインフローからアウトフローを差し引いたネットキャッシュフローに課税するという大胆な方向転換を提唱している。

キャッシュフロー課税で従来と一番異なるのは設備投資に対する減価償却の必要がなくなることだろう。不況になる度に時限的に導入されてきた100%のBonus償却を、有形・無形の全資産を対象に拡充して、更に恒久化するようなイメージ。その意味では設備投資減税の側面も大きいが、実はキャッシュフロー課税とすることで、DBCFTはDB部分と合わさって疑似VATとなる。すなわち、VATとか消費税の算定時には設備投資に対して支払ったVAT・消費税もその年に仕入控除が認められ、売上から徴収されるVAT・消費税と相殺される。換言すると、VAT・消費税の世界では例え耐用年数が10年の設備を購入しても、それに対して支払うVAT・消費税を10年掛けて仕入控除するという概念は存在しない。これは実質キャッシュフローベースで設備投資を費用化しているのと同じ効果を持つ。逆に言えば、DBCFT下でキャッシュフローベースで課税を行わないと、DBCFTは実質VATに近いと言う主張は成り立たない。したがって、設備投資減税の経済効果を達成する点に加え、キャッシュフロー課税を導入することはDBCFTが狙い通りにVAT同様に機能するための「Must」な要件となる。なので、国境調整だけの導入をキャッシュフロー課税とは別に検討したり、またその逆に国境調整は入れないけど、キャッシュフロー課税の導入は検討したりというのは、少なくとも経済学者や識者が提唱している未来型の法人税であるDBCFTとはかけ離れた姿となり、概念的には全く異なるものとなってしまうと言える。歳入委員会長のKevin Bradyとか下院議長のPaul Ryanとかはそんなことは百も承知だろうけど、政治家とかロビイストがいろんなことを言うので現状では少しでもDBCFTに盛り込まれている特色を出せれば始めの一歩としては上出来と考えているんだと思う。

5月18日に開催された歳入委員会のヒアリングでは経済界からは設備投資の一括費用化は米国での投資を活発とし、延いては雇用促進に役立つと賛成の声が多く上がった。DBCFTのDBの部分は意見が割れるところだけど、CFの部分は概して賛成ということだ。CFだけだとCFTにはなるけど、それだとDBCFTにならない。結局は各納税者、自分に有利な改正案には賛成、不利になるようだと反対、と当たり前の流れになっている。勝者と敗者が存在するのはどのような税法改正にも見られるサガ。敗者の声を聴き始めると大胆な改正は実行できない。

更に、キャッシュフロー課税と引き換え(?)にThe Blueprintにはネット支払利息の損金算入撤廃案が盛り込まれている。利息の損金算入がなくなれば、面倒な過小資本税制とか、アーニングス・ストリッピング規定とかの適用を気にしなくていいので、そもそもグループファイナンスストラクチャーを利用してシステマチックな実効税率のプラニングを多く行っている兆候のない日本企業にとってはその方が総合的に得かもしれない。米国企業、特に不動産業、また意外にも農業に従事する納税者、業界団体からは利息の損金不算入に関して強い反対が表明されている。また、他国から米国に投資しているMNCは米国のような高税率国には最大限のDebtをプッシュダウンしているケースが多いので、支払利息の今後の取り扱いは国境調整の動向と並んで気にしているポイントと言える。ただ、税率が15%だの20%になったら今迄みたいに一生懸命頑張ってアーニングス・ストリッピングする必要性も薄れてしまうけど。

キャッシュフロー課税と支払利息の損金不算入の関係だけど、キャッシュフロー課税とするから必ず支払利息の損金算入を認めることができないということもないように思う。各々独立して規定しても必ずしもおかしくないように思えるけど、一方で、設備投資等を取得時にキャッシュフローベースで費用化させるのであれば、そのファイナンスコストとなる支払利息も認めては二重取りになるとも考えられる。そのため、キャッシュフロー課税と支払利息の損金不算入はセットで考えらることが多い。Mnuchin財務長官の話しを聞く限り、トランプ政権は支払利息の損金算入は温存したいようで、その代わりにキャッシュフロー課税ではなく、従来からの減価償却を温存してもいいと考えているようだ。トランプが不動産業に従事しているからだ、と勘繰るメディアもある。仮に支払利息を損金不算入とするのであれば、AT&TのCFOが主張する通り、各企業は既存のキャピタルストラクチャーを再検討する時間が必要なので十分な経過期間を設ける必要がある。

支払利息の損金不算入は10年間で$1 Trillionの歳入増効果があると言われるだけに、消費地課税およびテリトリアル課税への制度移行時の一括課税、と並ぶ大きな歳入源だ。支払利息の損金算入を温存した形で税法改正を実行できるかどうかは、税法改正がどの程度の財政均衡をベースに策定されるかにより影響を受ける。

キャッシュフロー課税だけど、確かに聞こえはいいし、企業側としては賛成のところが多いとは思うけど、実際に税法に入れる際にはいろいろと考えないといけないことが多い。例えばM&Aで資産買収、または338(h)(10)選択して資産買収かのようにした際には、Goodwillとかも含めて全額費用化されてしまうのか、とか、パートナーシップに現物出資した際のSection 704(c)とかどのように考えるのか、とか。実際に条文にするのは結構難しそう。

という訳で、DBCFTの骨子2つ、すなわち「DB」と「CF」に関してどちらかと言うとメカニカルな観点から触れてみたけど、次回はDBCFTの直面する諸問題等に関して。

Tuesday, May 23, 2017

トランププランと今後の税法改正動向(1)「国境調整」

前回のポスティングまで7回に亘って4月26日のトランプ大統領・行政府による税法改正プラン初の公式発表に触れてきた。考えてみれば、僅か23分の会見に7回ものポスティングを費やしたことになる。

で翌日以降のメディア等の反応は温度差はあったとは言え論調は似ていた。まず、主たる反応として「詳細なし」という点に対する失望感。これは大統領府として何をしたいかという方向性が欠如しているというよりも、議会との間で何もコンセンサスが得られていない結果と考えるべきだ。特に会見時点の4月26日では下院でオバマケア廃案に失敗したトラウマが残っていただろうから、大枠でも下院および上院がサポートできる内容となるまでは詳細は発表しない作戦だっただろう。これは下院も同じで従来は上院、大統領府が最終的に反対する部分があるとしても、まずはThe Blueprintに基づく条文案を策定して議論を進めるはずだったが、オバマケア廃案手続きのレッスンからある程度コンセンサスを得た上で条文案を公表という流れにシフトしている。その分、前段階でより多くの時間を使う結果となる。じゃあ、なぜあのタイミングで大統領府側が会見を開いたかと言うと、やはり以前から発表するすると言って延び延びになっていたので、取りあえず何かしないと形にならないというプレッシャーは大きかっただろう。以前にも触れたとおり、トランプ大統領は2月9日の時点で既に「今後2~3週間の間に「Phenomenal」な税法改正の発表をする」と言っていたし、2月末には両院を前にしたジョイントセッションで再び「近々に「Massive」な減税を伴う「Historic」な税法改正を公表する」とぶち上げていたからだ。その後、3月にも何の発表もなく、「Phenomenal」「Massive」「Historic」と言った大袈裟な形容詞だけが空しく印象に残っている日々を悶々と過ごしていた。また、詳細は合意に達していないとは言え、原理原則部分、すなわち、法人税減税、テリトリアル課税、ミドルクラス減税という誰も異論がないハイレベルな点に関してはで共和党も一枚岩になっているというプレゼンという意味もあったように思う。

会見もQ&Aがほぼ半分を占めてもトータルで20分強、サマリーも僅か1ページなので、そこに何が入っていて、何が入っていないという点を深読みしても意味がない。もしあの1ページに入っていることしか実現しないとしたら、ビジネスに関しては税率が15%になり、海外子会社からの配当が非課税になっておしまいだ。もちろん実際にはそうではなく、議会との調整が必要な核心部分、例えば、国境調整、設備投資一括償却、金利損金不算入、テリトリアル化の際の一時課税の適用税率、等は今後調整が要というのがメッセージだ。特に国境調整に関しては日本のメディアを見ると、会見で言及されていないことをもってなくなってしまったかのようなニュアンスの報道もあるがそれは間違い。現に5月23日、歳入委員会は国境調整に特化したヘアリングを開催する。これは米国時間の今日なので喧々諤々の議論となると予想されるが、様子分かり次第速報したい。

でも、だからと言って国境調整が最終法案に入るという保証もない。入るかもしれないし、入らないかもしれないし、それは歳入委員会にも誰にも現時点では不明というのが正しい現状だろう。国境調整に賛成するにしても反対するにしても、日本のメディアを見ているととても国境調整導入の意味、背景をきちんと理解した上で報道しているようには見えない。単に諸悪の根源のように扱われているが、内容も理解せずに、トランプ政権の通商ポリシーと混同して誤ってヒステリック気味に論じられているケースが大半。すなわち国境調整はトランプ政権のポリシーとはその根源が異なり、直接関係のないものという認識が欠けている。

ただ、DBCFTを理解していないのはメディアとか一般企業に限らず、例えば欧州の税務専門家でもよく分からずに早合点しているケースが多いと言う。オクスフォード大学のCentre of Business Taxationの重鎮が「欧州では、税務専門家も含めて、DBCFTはその本当の姿を理解しておらず、相変わらずBEPS的なアプローチを重要視して、DBCFTにはどのように報復するかしか念頭にないことが多く、これはDBCFTにとってとても不利な状況だ」と言っている記事があった。

最終的に反対でも、法制化されないにしても、国境調整とは何だったのか、実務的に制度化する際の難題も含めて少し深く再度ここで触れてみたい。

国境調整の正しい理解にはThe Blueprintで言及されている「DBCFT」をきちんと理解する必要がある。国境調整とかDBCFTと言うとあたかもトランプ政権の誕生と同時に生まれたり、トランプが気まぐれで思いついたり、Twitterで言及されたりしている突飛な税法、悪法というイメージがあるかもしれないが、決してそうではない。トランプが選挙運動中から度々言及している「国境税(Border Tax)」と用語がとても似ているのでそれがThe BlueprintのDBCFTの単なるメカニズムでしかない「国境調整(Border Adjustment)」とごちゃごちゃになり、国境調整=トランプの戯言的なイメージが定着している観がある。DBCFTが最終的に法制化されないとすると、それはDBCFTが無茶苦茶な提案だからということではなく、どちらかと言えば政治的に未だ受け入れられるものではないという側面が強いように思う。学者レベルではDBCFTはベストな税法、というか現状の法人税より全然ベターと考えられていることが多い。

The Blueprintのビジネス課税の部分の骨子は「DBCFT(Destination Based Cash Flow Tax)」、「法人税率低減(20%)」「テリトリアル課税」「金利の損金不算入」の4つから成る。これら4つは必ずしもセットで考えないといけないものではなく、個々の案を個別に導入しても、またどのような組み合わせで導入しても概念的には何の問題もない。The Blueprintではたまたまこの4つを一気に実行することで米国の投資先としての魅力を高め、かつ国内産業と輸入を米国において「Equal Footing」にする、すなわち同じ土俵に立たせることを目標としている。4つのうちDBCFTを除いては賛成反対は別として特に考え方そのものに余り論議を醸し出す部分はない。

DBCFTを法人税という枠で考えた国は従来存在しないので斬新だが、米国で事業を行う納税者側として頭から悪いものとして否定するようなものではない。セミナー等で折に触れて言っている点だが、DBCFTが導入されると米国では法人税は0%(実質撤廃)となり、代わりにVAT(または消費税)が20%が導入されたと考えると概念的に分かり易いし、若干語弊はあるかもしれないけど当たらずしも遠からずだろう。VAT20%は日本の消費税8%と比較すると若干高く感じられるかもしれないけど、世界でVATを導入済みの150か国の水準から言うと平均的な税率のように思う。これらの国のほとんどはVATに加えて法人税を持っているので、0%法人税の米国は究極のタックスヘイブンに化すると言える。日本におけるCFC課税とかは気を付けないといけないけど、米国的には過少資本(Section 385!)、Inversion、移転価格、BEPS等一切対応が不必要となるので納税者としてそんなに悪い話しではないと思うんだけど、メディアの影響かどうも評判が悪い。DBCFTになればもちろん僕たちの仕事は減ってしまうけどね。もちろん他国がDBCFTを導入するまでは米国でこれらの問題がなくなっても、他の国では引き続きBEPS的な対応を強いられるので、理想の姿としては多くの国がDBCFTを採択するということなんだろうけど、それは近未来には実現不可能なのは間違いない。今ではあり得難いシナリオだけど、米国がポリティクス的な障害を排除してThe BlueprintにあるようなDBCFTフルバージョンを採択できるとしたら、その後にそれに追随する国もあるかもしれないけど。貿易収支が黒字の国はしないだろうし、グローバルレベルで認知されるのは困難。

で、The BlueprintのDBCFTだけど、DBCFTの「DB」の部分は消費地課税を意味する。従来の法人税とかIncome Taxは恣意的な箱である納税主体に対して課税する国で作り出される付加価値を課税対象とするというものだ。したがって、米国のような高税率国では付加価値が高い商活動には従事するのは損ということになる。一方これを消費地課税すると、どのような主体だろうが、どの国で価値を生み出していようが、米国で消費・使用される商品、サービスのみが課税対象となる。となると、せっかく腐心してアイルランドに持って行った付加価値の高い無形資産も最終的にその価値が米国で使用される限りにおいてはアイルランドにあっても米国にあるのと変わらなくなる。逆も真なりで、米国外で使用されるのであれば、消費地は米国外なので非課税となり、わざわざ米国外に無形資産を置く意味が失われる。

無形資産より棚卸資産で考える方が概念的に分かり易いかもしれない。米国で一から製造する場合にはサプライチェーンを経由して最終消費者に渡るまでの過程で基本全ての付加価値に20%の課税が起こる。一方で米国外で消費される商品は米国内にサプライチェーンが途中まであっても、最終的に米国内で消費が起こらない限り、サプライチェーンを通じて非課税となる。輸入で米国に入ってきて米国で消費されるものは、輸入される段階までは米国のサプライチェーンを経由していないので、そこまでの付加価値には米国で課税されていないから輸入時点で20%の課税となる。輸入を罰するのではなく、米国から見ると輸入と国内を同じ土俵に立たせることとなる。これはまさしくVATのメカニズムだ。米国に他国から輸出されてくる商品は輸出する側のサプライチェーンの付加価値に対するVATは全て還付されているはずなので、その分、少なくとも米国で課税することで均衡を保つという考え方だ。

VATでは国境調整は当たり前のメカニズムで、むしろしないといけないに近い存在だ。VATであれば、個々のインボイスベースで国境調整を行うが、The BlueprintのDBCFTは法人税申告書を一年に一回出すという枠で実行するものなので、個々の輸入取引に20%のVATを課す代わりに、算数的には全く同じことだけど、納税者に輸入があれば、それを損金不算入とすることで総計で20%を徴収するというメカニズムだ。輸出も同様でVATの場合には輸出取引を免税とし、サプライチェーンで支払われていたVATは仕入控除とすることで輸出にかかわるVATは国内では課せられない仕組みとなっているが、DBCFTでは申告時に輸出売上を益金不算入し、一方で国内からの仕入れ等は輸出にかかわるものでも損金算入を認めることで算数的にはVATと同様、最終的に米国で消費されない商品にかかわる米国内20%課税は存在しないという状況を作り出す。

このように国境調整は消費地課税を達成する単なるメカニズムで、VATとか消費税の世界では当然のように適用されていて、当然日本でも堂々と適用されている。

次はDBCFTの「CF」の部分に関して。 ここからは次回。なお、米国時間の今日、下院でDBCFTに特化したヒアリングが開催されるので、その様子も分かり次第ポスティングしたい。

Saturday, May 20, 2017

トランプ大統領税法改正プラン(7) トランプ税法案はイバンカ税法案に?

前回のポスティングでも4月26日のトランプ大統領・行政府による税法改正プラン初の公式発表のQ&Aの様子を引き続きカバーしたけど、今回でそろそろQ&Aは頑張って終わらせ、税法改正議論のその後の展開の話しに進みたいところ。

ところで、トランプ税法プランもトランプ大統領自身の立場が不安定で、いつまで「トランプ案」という名称で語り続けることができるのかな、なんてチョッと真剣に心配してあげないといけない状況になりつつある。従来の大統領とは違う人種ってことは皆分かってた訳だけど、ここまで来るとチョッと限度問題で想定の域から逸脱してる。メインストリームメディアが書き立てるようにトランプのすること全てがおかしい訳ではないと思うけど、一部の行動は余りに軽率な感は否めない。経験豊かな見識者で構成される共和党議員はどう思っているんだろうか。余り公言はしないかもしれないけど、みんな内心「なんてバカなんだろう。余計なことばっかりして・・」と苦々しく思ってる点は想像に難くない。議会がこういう余計なことに時間を費やすはめになると税法改正に費やすべき時間がその分単純に減る訳で、2017年中の立法がただでさえ日に日に際どくなりつつあった今日この頃に更に追い打ちを掛けている事実は否めないだろう。せっかくの「Historic」なチャンスを逃さないようにって願うけど、本当に迷惑。

「弾劾裁判でトランプが罷免されたら娘のイバンカが大統領になりトランプ税制案も「イバンカ税制案」になるんですか?」って半分冗談で質問されて、皇位継承とか北朝鮮の指導者と違ってまさか世襲はないでしょうと笑えた。大統領が任期中に退官、死亡等した場合には、憲法および1947年の大統領継承法に規定される継承順位に基づき、自動的に副大統領のMike Penceが就任することになる。で、万一何らかの理由でPenceも退官するような事態となったら、下院議長のPaul Ryan。Ryanも退官したら、上院仮議長のOrrin Hatch、その後も国務長官Tillerson、財務長官Mnuchin、と続いていき、トータル17人も継承プランに規定されているという言うから不測の事態への対策にぬかりはない。でも誰をとってもトランプより全然まともでいい感じ。Pence大統領とか議会からの信望も厚そうできちんと税法改正もできそうでかなりいける。そうなったら誰を副大統領に指名するだろうか。Paul RyanとかJohn Kasichだろうか?凄いDream Team。っていうかトランプの後だと誰でもDream Teamに見える。

でも実際にトランプが任期中に退陣に追い込まれることなどあり得るのだろうか。ハードルは高い。歴代、罷免されそうになったのはMonica LewinskyのBFFだった1998年のBill Clintonと1968年のAndrew Johnsonの2名のみ。2人とも下院では罷免が決議されて一時は騒然としたが、上院で有罪にならず難を逃れている。上院での有罪決定には3分の2の票が必要なので、大統領が属する党の議員が反対に回る可能性が高いことを考えると中々難しそうだ。ただ、Andrew Johnsonの時は上院で3分の2に後1票という際どいところだったそうだ。Bill Clintonの際には民主党議員は全員反対票を投じている。でもNixonは弾劾で罷免になったじゃん?って思うかもしれないけど、Nixonは弾劾裁判が始まる時点で自ら退任してしまった。なのでテクニカルには罷免された訳ではない。という訳で、イバンカ税制じゃなくてPence税制になる確率はそれ程高くないのかもしれない。もっともトランプ自身がNixonみたいに「もう辞めた」となれば別だけどね。

さて、話しを4月26日の会見Q&Aに戻そう。会見に参加しているメディアの方の多くはタックス専門ではないのは分かっているけど次の質問は余りにも余り。財務長官を学校の先生か何かと勘違いしたような質問。「財務長官、テリトリアル課税て国境調整のことですか、それとも関税?一体どんなものですか?」と堂々と基礎知識の勉強会となっている。トランプの選挙運動中にも散々言及されているし、The Blueprintにも書いてあるんだからもうチョッと予習してから税法改正の会見に参加して欲しかった。まさか本当に「遺跡保存法(Antiquities Act)」の会見に来るつもりでそっちを勉強して臨んでたりして。

Mnuchinもまさかここで全世界課税とテリトリアル課税の定義を講義するはめになるとは思ってなかっただろうけど、「テリトリアル課税というのは米国企業が米国の所得のみに税金を支払えばいいという考え方で、だからテリトリアルと言う。現状は全世界の所得に課税される仕組みで、他国と比べて米国企業が不利な状況に置かれている理由のひとつだ」と7秒でテリトリアル課税を説明するという離れ業を披露している。回答は正しいが、税法の仕組みをしらない初心者には具体的にどんなことかそれでも良く分かんないだろう。この手の手合いは国境調整とかもきちんと理解していない可能性が高い。

次はまたポリティクスっぽい質問だ。「こんな案には共和党議員が賛同しないという懸念はないでしょうか?共和党内で不協和が起こってまたオバマケア廃案失敗の二の舞になったりしないんでしょうか?(会見の時点ではオバマケア廃案は下院を通過していなかった)」

こういうタイプの質問は回答の方法に窮するが、Mnuchinが登場し「さっきから言っている通り(定番!)税法改正をしたいという機運は全員が共有しており、Gary(Cohnのこと)が会見冒頭で言った通り、我々は史上稀にみる改正実現の機会に恵まれることとなった。共和党も民主党も雇用を促進し、国民の生活をより良くしたいという思いに変わりはない。何回も言うが、原理原則には全員一致しており、詳細は今後議会と共に詰めていくということだ」とこの手の話しはそろそろ時間の無駄な感じ。

次は遺産税。「遺産税の撤廃はここ何十年に亘り議論されていますが、以前の議論では大概、一気に撤廃するというよりも、何年か掛けて徐々に撤廃していく(=Phase₋out)という手法が検討されています。シニアの方で構成される団体等に言わせるとそんな流暢なことを言ってる場合ではなく即撤廃すべきという懸念も聞こえてきますが、今回の案では一気に撤廃と考えていいでしょうか?」

この質問にはCohnが登場。「我々の現時点の提案は即刻Phase-Outだ。すなわち、この案が法律になれば、その時点で遺産税はPhase-Outとなる」とチョッと分かり難い回答。Phase-Outって普通は段々なくなったり消えたりすることだから、即刻Phase-Outっていう表現自体が若干Illogical? 質問している側も、その部分こそが核心だったので、当然確認が必要と考えたのだろう。「Phase-Outですか?即刻撤廃ですか?」と追加質問。「この案が法律となればその場で遺産税は消え去る」と力強い再確認となった。

今度はMnuchin向け。「2つ質問があります」と始まり、まあ最初の質問は普通。「今回配布されているサマリーは1ページだけで、もちろん先ほどから言われている通り、これ自体は原理原則なのは分かっているのですが、実際の税法となるともちろん1ページどころでは語り尽せない複雑なもので、肝心の詳細はいつ見せて頂けるんでしょうか?実際のプランを見てみたいのですが・・」と今日共有されているものはプランですらないとでも言いたげな(無理もないけど)表現だ。

ここでもMnuchin節炸裂。「可能な限りのスピードで詰めていく。下院、上院と既に詳細を詰めている過程で、一日も早く具体的な税法に仕上げる点で全員意見は一致している。詳細に関して合意できた時点で、その内容を皆さんに公表しご説明差し上げることになる」。これでは実質いつになるか分からないと言ってるのと同じ?

「二つ目の質問ですが、大統領はご自身の申告書を開示するのでしょうか?」と今回の会見に全然関係ないどうでもいい時間の無駄質問。それにしてもトランプの申告書なんかになんでそんなに興味があるんだろう。どんな申告書だったとしても唯一の目的は徹底的に叩く、というのがリスクエストの根底にあるとすると余り実質的な議論には関係ない。この点に関しては以前の「トランプの申告書に皆何を期待してるんだろう?」を参照のこと。

Mnuchinは無視するかと思えば、意外に正面から「大統領が申告書を開示する予定はない。大統領は既に歴代大統領と比較しても最も自身の財務状況を開示していると言え、国民の方に十分な情報開示がなされている」とした。この手の話しはテリトリアル課税とか国境調整は正確に理解できないかもしれないメインストリームメディアの得意分野だから、ここぞとばかりに騒然となり多数の声が上がる。「米国市民は税法改正が大統領自身の個人的な税務ポジションに与える影響を知る権利があると思うのですが・・」とせっかくの税法改正の話しが三面記事っぽい流れに変わる。そんな権利あったの?って感じだし、そんなこと知ってどうするんだろう。大統領個人に有利な税法改正は反対するのかな?トランプに限らず、クリントンだって減税になれば皆応分の恩典は受けるはず。トランプの申告書なんてどうでもいいからしっかりした税法改正を審議して欲しい。

さすがにMnuchinはそれ以上は相手にせず「他にも質問をしたい方がいるので」と議事進行していく。

次は「ミドルクラス減税ですが、例えば4人家族で所帯の収入が$60,000だとしたらどれ位の減税になりますか?」というもの。聞いてみたい気持ちは良く分かるけど、さっき税率区分が未だ決まってないとQ&Aで回答されていて、しかも「今日はそんな詳細の話しをする場ではない」とCohnの叱責もあった位だから具体的な減税額など算定できる訳ない。

Cohnは「減税となります」と禅問答のような回答。「いくらですか?」と記者もしつこい。Cohnも負けていない。「減税となります」と繰り返した後、「あなたもさっきの記者と同じような質問を繰り返してるが、そういう詳細は適切なタイミングでお知らせする。下院および上院のリーダーたちと極めて強固な議論を進めており、議論は凄いスピードで進んでいる。その上で詳細は分かり次第皆様にお伝えしていく」ということ。それにしても、どんどん形容詞とか副詞が大袈裟になっていくのが面白い。英語の会話で形容詞、副詞が大袈裟になってきているケースは実際には反比例して内容が不確実と考えた方がいいことが多い。

次の最後の2つの質問はトランプ個人にフォーカスしていて税法改正と言う切り口からは余り意味がない。まずは「選挙演説中には大統領本人を含む富裕層には増税するとか言ってたくせになんでそうなってないのか」というもの。これに対してMnuchinは大統領個人の税金がどうなってるかは一切知らないと前置きした上で「表面的に税率は下がるかもしれないが多くの控除が撤廃されるので、控除を多く取る傾向にある富裕層の実効税率は上がるかも」という回答。

最後はナンとAMTという地味なトピックでエンディングとなった。しかもAMTを撤廃すると大統領の税負担が軽くなるのでは?というもの。Mnuchinは「何回も言うが」といつもの感じで「いいですか、経済成長、雇用促進のため減税および税法の簡素化をしようとしている中、AMTは税法を不必要に複雑化させている悪法の代表で撤廃すべき」と回答している。AMTは面倒で制定当時の目的は失っているというか、実務的負担とポリシー的なメリットのバランスが悪く、トランプがどうなろうとAMTなど即刻撤廃した方が日本企業を含む納税者にとって好ましいこと間違いない。メインストリームメディアはなんでもトランプが自分が得しようとして税法改正案を作成しているという思い込みの呪縛からいつまでも逃れられない様子。

で、とても付き合ってられないと思ったのかMnuchinは「Anyway, thank you everybody. We appreciate you guys being here!」とまるでロックバンドがコンサートでアンコール2~3曲やって、本当に最後に観客に礼を言ってステージから去っていくような軽い感じのあいさつを残して、一瞬にしてCohnプラス取り巻きと一緒に裏に消えてしまった。時は東海岸Day-Light Saving時間ちょうど午後2時くらい。22~23分と言う短い会見だったけど、そんな短時間とは思えない面白いドラマ満載の、だけど内容に乏しい会見でした。

次回は大統領改正案の反応、今後の展開等に関して触れてみたい。特に国境調整、金利の損金算入、パススルー、とかいくつかメジャーなトピックに関して。

Sunday, May 14, 2017

トランプ大統領税法改正プラン(6)

前回のポスティングでは4月26日のトランプ大統領・行政府による税法改正プラン初の公式発表のQ&Aの様子に関して書き始めた。会見が始まって13分強経過しているが、MnuchinもCohnも質問が細部に亘り始めたせいか、会見冒頭の低姿勢から一転し、徐々に本領発揮というか、面目躍如というか、本性が出てきたというか、語尾も強くなってくる。投資銀行で部下を叱責するのには慣れているに違いないCohnは人差指を下に指しながら「細かいことは今後詰めると言っているのが分からないのか」に近い感じで迫力十分。さすが6.3フィートの圧迫感。そう言えば全然関係ないけど、リアリティショーのアプレンティスに近いノリで急に「Fired‼」となった元FBI長官のComeyに至っては6.8フィート(207cm)だからワシントンの重鎮は結構ガタイがいい方が多い。トランプだって6フィートは超えてるし。

税率区分について質問した記者が「控除項目は住宅ローン金利と寄付金と言うことだが、州税および地方税の控除もなくなるんでしょうか?」と追加質問する。Cohnは「そうだ」と言って次に質問に移るが、税率区分の記者は「医療費は・・?」のような質問を未だしていた。回答はなかったけど、住宅ローン金利と寄付金のみと言っているのだから医療費の個別控除はなくなるんだろう。ただ、医療費は年収(正確にはAGI)の10%超の自己負担分のみが控除対象だから元々余り使い勝手がよくない。大病して保険が効かないとか、そもそも保険の対象でないLasikとかで大きな支出がある場合には利用していた納税者もいるのかな、位のどちらかと言うと目立たない控除項目。ちなみにWSJによると州税控除を取っている申告書の数は4,300万件、住宅ローン金利を取っているのは3,400万件という規模に対して、医療費控除は700万件だそうだ。

4月26日の会見当日には未だ下院のオバマケア廃案が通ってなかったけど、数日後に下院を通過した医療保険改革案には、実は医療費控除を取りやすくする規定が盛り込まれている。上述の10%超でないと取れないとされていた制限が5.8%超なら取れると緩和されている。トランプ大統領プランと整合性に欠けるが、この点に関しては下院と大統領府で調整中とのこと。

次の質問はオバマケアで導入された3.8%のNet Investment Income Taxの廃案に関して。このNTTIはキャピタルゲインとか配当の投資所得に追加で課せられるもの。「3.8%のNTTI廃止はオバマケア廃案の第一歩となるんでしょうか?それともビジネス目的ですか?」のような何とも言えない質問。どんどん迫力が増してくるCohnが「この税法改正は経済成長と雇用促進が目的だ。なのでビジネス目的に尽きる。3.8%の投資、キャピタルゲインに対する追加の税金は経済成長を促進する資本投資に対する足かせとなっているので撤廃する。全ては経済と雇用のためだ」と力強い。ちなみに4月26日の会見時にはまだオバマケア廃案が下院を通過していなかったが、その後の下院案で他のオバマケア増税と並んでこのNIITも廃止されている(上院は現時点で未通過)。

次はなかなかいい質問。「このプランに十分な歳入源は確保されているんでしょうか?すなわち財政均衡プランですか?また、今日発表されているプラン内容で絶対に譲れない点はありますか?例えば議会が法人税20%の税法改正を通したとして大統領は法律に署名されますか?」というもの。この質問にはMnuchinが登場。Cohn同様に投資銀行幹部の迫力が出てきている。「そうだね。何回でも言いが、議会とは原理原則100%合意している。つまりビジネスに対する税率を下げ、何兆ドルという資金を海外から米国に戻し(テリトリアル課税の部分)、雇用を創出し、個人所得税を簡素化、ミドルクラスに対する減税を行うという原則だ。これらの原理原則は譲れないし議会とも一枚岩の団結を誇っていると言える。」

注目の財源、財政均衡の部分は「さっきから言っている通り、詳細はこれからで、財務省だけでも100人以上のスタッフがスコアリングその他の分析に従事しているが、今回の税法改正プランは経済成長加速、コマゴマとした控除の撤廃、そして脱法的な行為を禁ずることで、十分に収支均衡する」そうだ。

このMnuchinの回答に会場は騒然となり、一気に指名されてもいない記者が複数独自に追加質問を始める。その中で幸運にも指名を受けた記者は「でも立法化の過程でスコアリングした結果、経済成長加速等では歳入が不十分と推計されたらどうするんですか?財政赤字を増額しますが、大統領はそれでも懸念を持たずに法案に署名するんでしょうか?」

Mnuchinは大分いらいらしてきているのを抑えながら「さっきから言っている通り(口癖?)、オバマ政権下で財政赤字は10兆ドルから20兆ドルに膨れ上がっている。これが大統領が何とかしないといけないと感じている諸悪の根源だ。今回のプランでは債務残高の対GDP比が下がり、経済成長が加速し、巨額、おそらく何兆ドル単位で歳入が増えるというものだ」と基本的に前の質問への回答と同様の線で押し通す。

引き続き会場は熱くなっているが、前列に陣取る記者の質問が多かったせいか、Mnuchinは「後ろの方の質問も受け付けましょう」みたいな感じで後列を指す。ただ、後ろに座っているからと言って質問が手ぬるい訳ではない。「Border Adjustment(The BlueprintのDBCFT下で消費地課税を実行するためのメカニズム)を導入しないとどう考えてもそんな低税率(ビジネスに対する15%を指している)は困難に思えますが・・」という至極最もなコメント。Mnuchinの回答はどんな質問にもほぼ同じになっている。「さっきから言っている通り、詳細はこれからで、今日は原理原則を述べているに過ぎない。今後議会と詳細を詰めて最終的には原理原則を大統領が署名できる法案に仕上げる。その過程で、ご質問の点を含む多数の詳細を詰め、経済成長に基づく税率低減を実現させる」とのこと。

その後、メディアでは、トランプ大統領プランにBorder Adjustmentが明記されていないことから、Border Adjustmentは検討されることはないという趣旨の報道もあるが、決してそうではなく、未だ何も決まっていないだけだと思う。今後の成り行き次第で、全く導入されないかもしれないし、部分的または段階的に導入されるかもしれないし不明だ。ただ、Border AdjustmentはDBCFTというしっかりした概念の税法の一部のメカニズムでしかないので、この部分だけにフォーカスして導入するのかどうかを議論しているのは不思議。Border AdjustmentおよびDBCFTが一般に全然理解されていない証しのように感じる。この点に関しては後のポスティングで詳細に触れたい。

と、Q&Aも白熱して形で最終局面に入る。ここからは次回。

Tuesday, May 9, 2017

トランプ大統領税法改正プラン(5)

前回のポスティングでは4月26日のトランプ大統領・行政府による税法改正プラン初の公式発表を最後までカバーし、ここからは当日のQ&Aの様子。質問内容は専門性に欠けるものが多く税法の見地からは面白いものは少なかったけど、会見内容の確認、メインストリームメディアがどの程度内容をきちんと理解していてどのような点に興味を持っているのか、を図り知る上では興味深い。

最初の質問はもう既にCohnが話した内容そのものなので余り面白くないが、この受け答えを基に401(k)とかの適格退職金への税引前拠出が撤廃されるのでは、と大騒ぎになった。Cohnは明確に退職金関係の拠出は維持すると言っていたので、人の話しをよく聞いていない質問で時間を無駄にするばかりでなく、余計な混乱を招くパターンはいつの会見でも付き物だ。質問は「個人所得税の控除項目として何を残すのですか?」というもの。会見本体ではCohnの担当だった部分だが、Mnuchinが「住宅ローンの金利と慈善団体への寄付金を除いて撤廃する。これは全面的な税法改正だ」と回答している。MnuchinはおそらくSchedule AとかのBelow-the-Line的な所得控除を想定して回答しているものと推測され、Gross Incomeにそもそも入らない401(k)の従業員による拠出額とか、KeoghプランのようにAbove-the-Lineの控除は回答時に頭になかったんではないかと思う。

次も余り意味のないどちらかと言うと嫌がらせっぽい質問。「配当とかキャピタルゲインに対する減税に関して、ミドルクラスを救うというコメントと整合性がないように思いますが、裕福な一部の層の抜け道になるんではないでしょうか?」というもの。

Mnuchinは「ミドルクラスを救う」という部分に過剰反応したのか、こだわり過ぎたのか、チョッとムキになった感じで回答の最初の部分は質問とは関係ない部分でミドルクラス救済を訴えている。すなわち「何と言ったら分かって頂けるか分かりませんが・・」みたいなニュアンスで始まり、「ビジネスに対する15%は中小企業にもそのまま適用されますし、富裕層がこの仕組みを悪用してパススルー経由で低税率の恩典を享受できないよう対策も講じることにしている」と宣言した。で、さすが頭脳明晰の財務長官なので質問に回答していないことには直ぐに気付いたのだろうか、付け足すように「配当所得に適用するキャピタルゲイン税率を20%に戻すことは米国の投資環境を整えるために不可欠だ」とした。

次の質問は最前列に踏ん反り返る形で座っている記者から。「私もパススルーにかかわる同じような質問があります」と切り出した。何と同じよう(=Similar)なのか不明だったがまあいいとしよう。「大統領が選挙運動中に話していた内容では15%の低税率に適格となるビジネスにはフリーランサーとか契約社員も含まれると思っていましたが、それであってますか?テリトリアル制度に変更時の一時課税の税率は?そしてGary Cohn(Directorとかではなく呼び捨て)、既婚者に対する(税率が独身者2人の合算と比べて税金が不利となることがある)婚姻ペナルティーの問題は解決しますか?」と3つ相互関連性のない質問だ。

海外子会社の留保金の一時課税の税率は会見本体発表中気になっていたのでいい質問。トランプは選挙運動中10%と言っていたが、The Blueprintでは留保金が現金で所有されている場合には8.75%、他の資産として海外で再投資されているケースでは3.5%となっている。果たして10%という大統領プランは変わらないのか?この点は米国企業の下にCFC(海外子会社)を持つことが少ない(というか基本的に持つべきでない)日本企業と異なり、Inversionしない限り、全てのCFCを米国傘下に持たざるを得ない米国多国籍企業にとって最重要マターとなる。日本企業は国境調整に興味が集中しているように見えるけど、米国企業はテリトリアル制度への移行に大きな関心を持っており、特に経過措置の一括課税の対象となるCFCのE&P(=米国税法上の配当原資)をどう減額させるかとか、等、詳細なモデリングを基にプラニングを実施している。

多額の現預金を海外に埋蔵している米国企業が多いのでこの手のプラニングは最重要課題だろう。アップルに至ってはナンと2,500億ドル(円ではない)の現預金相当を持っており、9割が米国外にある。EYの監査クライアントなので公共情報のみを基に話しておくけど、2,500億ドルと言えば100円換算でも25兆円だ。WJSによるとこの金額は英国とカナダの外貨準備高の合計より、またWalmartのマーケットキャップより大きいというから凄まじい。この現金をどのように戦略的に使うべきかに関しては外野からいろんなコメントがあるけど、歴史的にアップルは余り大きなM&Aをしていない。Netflixを買収するべきという話しもあるし、いやテスラでしょう、という話しもある。ただ、これだけの現金があるとNetflixとテスラの双方を同時に買収してもまだお釣りがくるそうだ。その昔は破産の危機に瀕していたこともあるのにやっぱり元祖iPhoneをこの世に送り出してくれたSteve Jobsの才能は凄い!

で、Q&Aに戻るけど、質問に対してMnuchinは「経過措置の一時課税の税率だが、下院、上院と今後詳細を詰めてから最終化するべき問題だ。ただひとつ言えるのは極めて低い税率(通常の35%と比べてという意味のはず)となる。契約社員云々という細かい定義は今後の議会との調整を得て条文草案が出てくる時点で確認するべき問題だ」とした。婚姻ペナルティーの部分の回答に登場したと見られるCohnも続けて「Mnuchin財務長官の言う通り、現在詳細は下院と上院とこつこつと詰めている。質問は余りに細部にかかわるもので・・・」とまで言ったところで質問している側の記者が「とても重要なことだ」と口を挟む。Cohnも「確かに重要なのはそうだが、税率を下げ、税法をシンプルにし、フェアなシステムを構築するという基本的な原則を基に細部に亘る詳細は今後明らかになっていく」とした。

次の質問はCohnの個人所得税プラン発表のポスティングの際にチラッと触れたもの。すなわち「所得税率区分を10、25、35%にするという話しだが、累進税率区分のドル額を教えてもらいますか?」。これは当然Cohnの出番だが、「繰り返しになるが、下院、上院と方向性は合意されているものの、現在、膨大な資料、多方面からのインプットを基に詳細をこつこつと詰めているところだ。質問されているような細部にかかわるものは詳細明らかになり次第公表することになる。今日は原則部分を皆様にお伝えしているまでだ」みたいな回答だった。う~ん、税率はそのドルベースの区分が分からないと余り意味ないけどね。 Q&Aとは言え結構説明が長くなってきたので、続きは次回。

Saturday, May 6, 2017

トランプ大統領税法改正プラン(4)

前回のポスティングでは4月26日のトランプ大統領・行政府による税法改正プラン初の公式発表の話しから少し逸れて(とは言っても大いに全体の流れとしては関連深い)、下院がオバマケア廃案そして代替案のAHCAを通したので、急遽、税法改正との関連に関して触れてみた。

今回は前々回からの続きに戻り、国家経済会議委員長Cohnが個人所得税減税プランを説明し終わり、ビジネスおよび法人税の発表のため財務長官Mnuchinが登場したところから再開したい。

Cohnに紹介され壇上に登場したMnuchinも「今回の税法改正プランの目的は米国ビジネスを世界で最も競争力が高いものにするために他なりません」とハイレベルなところから入る。そして「現状を見ると、法人税35%で未だに全世界課税と、世界で最も複雑な規則でかつ競争力に欠ける税率です。このような状況では多くの米国企業がオフショアに何兆ドルという資金をため込んで米国に還流させないのも驚きではありません」と海外子会社に眠る巨額の埋蔵金の存在に触れ、早速テリトリアル課税(海外子会社からの配当非課税制度)を匂わせる展開となる。

そして「トランプ大統領は、ビジネスに巨額の減税、そして驚くような税法の簡素化をプランしています。ビジネス課税は15%に低減し、テリトリアル課税に移行します。テリトリアル化への移行時には制度変更時点で溜まっている海外の剰余金に一括課税を実施し、それらの資金が米国で資本投資、雇用創出等、有効活用される環境を整えます」と早速話しの真髄に入った。20%ではなくやっぱり今でも選挙運動中に言ってた15%に固執するんだ・・?でもビジネス課税って何?法人税、それとも前夜にWSJがすっぱ抜いたようにパススルー課税のこと?テリトリアル課税への制度変更時の一括みなし配当課税は何%なんだろう?選挙運動中にトランプ候補が言っていた10%か、それともThe Blueprintの下院通り3.5%または8.75%なんだろうか?とかなり基本的な点に関して興味が沸く展開になっている。

でも、これらの肝心な詳細には余り触れない。代わりに「トランプ大統領は米国ビジネスのため経済成長パワーを解き放す断固とした決意を持って税法改正に臨んでおり、減税は大手法人ばかりでなく、中小企業にも同様に適用があるのでご安心を」みたいな話しとなっている。ここの部分の表現は分かり難かったが、要は法人税率を15%にするばかりでなく、多くの中小企業が事業形態として採択しているパススルー(LP、LLC等)やSchedule Cで報告する個人商店(Sole Proprietorship)にも15%を拡充するという意味のことのようだ。パススルーという用語を全く使用しないところが面白い。何か深い訳があるんだろうか?

で、法人税だのパススルー課税だのはただでさえ難解な分野なので、ここから若干掘り下げた内容になるのかと思いきや全然で、結局、税法改正に関してはこれだけで、その後は経済成長がどうのとかまたハイレベルな発表に戻ってしまった。Cohnが言っていたことを繰り返す形で「下院、上院とは毎週プロダクティブなミーティングを持っており、今後も話し合いを続け、2017年中のできるだけ早期に税法改正を実現させます」ということ。以前にMnuchinが触れていた8月の議会散会の前に法制化という話しはもちろん蜃気楼のように消えて無くなり、2017年中という実現可能な(それでもかなりアグレッシブな)期限設定を表明している。一応、未だ2017年中を目標にしていることが確認できただけでも収穫と考えないとね。

下院、上院との会議だけではなく「Listening Sessions」も持ち続けるとのこと。このListening Sessionsはどのように訳すと一番雰囲気が伝わるか分からないけど、各業界首脳との情報交換、ヒアリングの機会を引き続き設けていくということらしい。そしてMnuchinは表情一つ変えず「トランプ大統領の優れている点のひとつに人の話しにじっくり耳を傾けること」を挙げた。ワンマン社長だったのに本当(?)って思うところだけど、既に何百というビジネスリーダーと会い、インプットをもらっているという。確かに就任前からソフトバンクの孫さんにも会っていたし、いろんな人に会っているのは本当だ。製造業、小売業、航空、地銀、大手金融、多くの業種からインプットをもらっていて、今後もそれを続けるようだ。でも余りに各業界のフィードバックをいちいち真に受けていると、税法改正には勝者・敗者の双方が存在するだけに何も実行できなくなってしまうのでは、とチョッと心配になったけど、話しを物理的に聞くのとそれを受け入れるのは別の話しなのでトランプ大統領だったら大丈夫かもね。

そして最後にMnuchinは「大統領の目標は経済成長です」と繰り返した。「以前にも主張した通り、我々は米国で3%以上のGDP成長が持続可能だと信じています」と巨額減税の財源の多くを経済成長に頼る伏線とも取れる発言に至った。「経済成長戦略は巨額減税、税法改正、規制緩和、そして通商条約の見直し、から成ります」とし「これらの戦略で長らく抑圧されてきた経済成長に本領を発揮させることができるのです」と超ハイレベルな結論で発表を締めくくった。う~ん早い。Mnuchin登場から僅か2分20秒だ。米国法人税を2分で語ることができる大物は余りいないだろう。で、ここでCohnとMnuchinの2人は「A few questions」に答えると言う。早速プレスから多くの手が挙がる。Q&Aは結構面白いので次回はQ&A部分に触れてみたい。

トランプ大統領税法改正プラン(3) – オバマケア廃案下院通過の影響

前回のポスティングでは4月26日のトランプ大統領・行政府による税法改正プラン初の公式発表のうち、国家経済会議委員長Cohnが個人所得税減税プランを説明し終わり、トランプ大統領(aka Doctor Robert?)がどんな難題でも米国市民のために全力投球して乗り切ってくれると発表を締めくくった部分まで触れた。そして早くも会見終盤となるビジネスおよび法人税の発表のため財務長官Mnuchinが登場した。

このMnuchinの法人税部分の発表も前半のCohnの所得税に負けず劣らず素早く瞬時に終わってしまう。正味2分程度の発表だっただろうか。で、本来であればここでMnuchinの発表内容をカバーするところなんだけど、その前に昨日急に下院がオバマケア廃案そして代替案のAHCAを通したので、その税法改正との関連に関してチラッと触れておきたい。

ご存知の通り、オバマケア廃案はオバマケア誕生以来の共和党の政策の最重要課題であり、オバマ政権時代ですら何回も廃案の法律が通っている。もちろんそんな法律を通したところでオバマ大統領が自らのSignature法であるオバマケア廃案に署名するはずはなく、ことごとく拒否権を発動されて日の目を見なかったという経緯がある。また最高裁でその合憲性が争われ、5-4で際どく違憲判決を免れている。選挙期間中には1月20日の大統領就任と同時に廃案という勢いで議論されていたものの、その後単なる廃案ではなく、それに代わる共和党として受け入れ可能な法律に置き換えるという方向となり、それが一つの理由で調整が難航していた。一旦何らかの恩典、すなわちEntitlementが付与されるとそれを削るのがどれだけ大変か、ということを物語っている。

保守派でLibetarianに近い議員で構成されるFreedom Caucusと共和党としては中道寄りのTuesday Groupとの調整は困難を極め3月23日には一旦撤廃の投票取りやめに追い込まれている。委員会審議を通った法案の本会議での投票取りやめは異例であり、下院議長Paul Ryanにとっては不名誉な結果となっている。その後、2017年中の下院通過は困難と思われていただけに、あれから一月を要したとは言え、実際に廃案を通したのはかなりの偉業。特にトランプ大統領とPaul Ryan下院議長はかなりホッとしただろう。トランプ大統領府による議員説得は熾烈かつピンポイントだったと報道されている。

国民皆保険が当然の日本から見るとオバマケアの議論はなかなか分かり難いと思うけど、米国という国の成り立ち、Federalism(すなわち州が国家主権)等の理由で米国の建国趣旨に馴染まない点も多い。オバマケアはほぼ憲法違反に近い部分があったり、また歴史に残る増税、歳出増のプランでもありそれらの点でも問題が多い。また個人的な実体験からも従来からの医療保険の保険料が上がったり、免責が増えたり、従来から医療保険に入っている人にとっては被害も大きい。さらに事業主に多くの報告義務を強いたり、ビジネスに対する冷却効果も大きい。

米国では個人の「Free Will」を重んじ、大きな政府は信用できないと考える人も多く、医療保険などは連邦政府が口を出すようなマターではそもそもない、また巨大な連邦政府が効率よく保険制度を管理できる訳がないというタイプの拒絶反応も多い。今回下院を通過した代替案AHCAも方向としては、連邦から州政府、個人に選択権を戻すという立て付けになっている。

オバマケア廃案と代替案のAHCAの主たるフォーカスはもちろん医療保険制度だけど、税効果も結構凄まじい。オバマケアで導入された多くの増税規定の廃案で何と10年間で10兆ドルにおよぶ減税効果があると言うからこれだけでも立派な税法改正だ。逆に言えばオバマケアで10兆ドルの増税がされていたことになる。これは下院歳入委員会のThe Blueprintで提唱されているDBCFTでBorder Adjustmentをフルに導入して得られる税収に匹敵するので、オバマケアがどれだけ凄い法律だったか今更ながらに驚いてしまう。ちなみに0.9%のMedicare Surchargeが2023年まで無くならないのはガッカリだったけど。

前回のポスティングの個人所得税絡みの話しでNet Investment Income Tax(NIIT)と呼ばれるキャピタルゲインタックス3.8%を税法改正の枠で撤廃するとCohnが言っていたが、オバマケア廃案でそれをやってくれれば、税法改正では他の減税に原資を回せることとなる。これが、税法改正の前にまずオバマケア廃案を通したかったひとつの背景だ。10兆ドルの減税を税法改正の枠外で実行できれば税法改正そのものにより弾力的に臨むことが可能となる。

オバマケア廃案のプロセスを通じて、大統領府、共和党議会は、税法改正に対するアプローチを構築する上で多くのことを学んだだろう。学習能力は高いと言える。例えば、いきなり下院が詳細な法案を一方的に提案しても、Freedom CaucusとかTuesday Groupとかの反対に合い立法化が難しいというレッスンから、税法改正案は下院、上院、大統領府間である程度のコンセンサスを得るまでは条文案その他の詳細は一切公表しないと決め込んでいるように見える。そのスタンスが如実に表れているのが4月26日のトランプ大統領税法改正プランの公式発表プレスカンファレンスだ。徹底的に原理原則に議論を集中させ、詳細は一切明かしていない。これをもって意味のない会見とバッサリ切り捨てるメインストリームメディアも多いが、これは強かに学習効果が表れていると考えた方がいい。

また、オバマケア廃案の詳細で強いスタンスを取ったFreedom CaucusとかTuesday Groupは自らの一派の影響力の強さに味を占め、税法改正にも同様の影響力を行使できると期待しているだろう。実際に独自の税法改正案を提唱していくという話しもメディアで報道されている。これらの複数の影響力が複雑に絡み合うと、究極的に税法改正をどこまで歳入歳出ニュートラルにするのかという根本的な方向性等にも大きなインパクトを与え、調整がより困難になるだろう。

AHCAは下院を通過した後、上院での審議に入るが、上院でどれだけ時間を掛けてどのような議論になるのか、またそれで税法改正のタイミングがどう影響を受けるかも興味深い。上院にも、租税条約批准ブロッカーのRandy Paulとか一家言持っていて譲らない先生もおり、下院同様に調整には時間が掛かる可能性もある。

という訳で電光石火のオバマケア廃案下院可決があったので脱線してしまったけど、次回はMnuchin担当のビジネス、法人税減税にかかわるプレスカンファレンスの内容に戻る。

Tuesday, May 2, 2017

トランプ大統領税法改正プラン(2)

前回のポスティングでは4月26日のトランプ大統領・行政府による税法改正プラン初の公式発表のうち、Spicerによる面白い遺跡保存法のジョークから国家経済会議委員長Cohnがプラン大枠の原則を説明し、個人所得税減税プランに入るところまでカバーした。ちなみにこの国家経済会議はNational Economic Council(「NEC」、電機メーカーではない)のことで、大統領府が経済政策を検討する主たる場となっており、1993年にクリントン大統領により正式に設置されている。

Cohnが個人所得税の話しに移るこのタイミングまで、Spicerの遺跡保存法のジョークから僅か4分チョット。さすがに原則のみカバーということで結構なスピードで話しが進んでいる。

ここでもまず歴史のおさらいというか、基本的な統計から入っている。さかのぼること1935年、所得税申告書は1ページ、34行で構成されており、記入要領の説明書は僅か2ページだったそうだ。それが現在では申告書の最初の2ページだけで79行、記入要領はナンと211ページ(会計事務所のスタッフ以外で読む人居るのかな?)、そして申告書をサポートする別表も199様式と膨れ上がっている。納税者が申告書作成に必要とする時間は年間のべ70億時間!で90%の納税者が外部のサービス業者に作成を依頼している状況だ。10%の納税者は自分で作成しているんだね。偉い。ちなみにこれは会社の法人税の話しではなく、米国では雇用者年末調整とか存在しないので、所得が一定以上あるものは老若男女問わず一人一枚(夫婦のみ合算申告可能)全員が申告する所得税の話しなので複雑さがどれだけ常軌を逸しているか分かる。

そこで大統領プランではまず、現在39.5%まで7つ存在する税率区分を10%、25%、35%の3つに簡素化する。アレ~、最高税率区分は33%じゃないの?って一瞬愕然とせざるを得なかったけど、まあブッシュ減税当時に戻ると思えば、オバマ政権下の大増税時代よりは少しはマシってことだろうか。しかし、ここで大きなキャッチがある。税率区分というのは何ドルから何ドルまでが25%とか分からないと%そのものだけ聞いても余り意味がないんだけど、その肝心の部分が未定なようで、後のQ&Aでその点を突っ込まれた際に「そのような詳細はここで発表する原理原則の域を超えており、今後の議会との調整で決める」とのこと。詳細という程の詳細でもないように思うけど。

更に「基礎控除(Standard Deduction)」、すなわち個別控除をしないでも必ず取れる(NRとかDual Status納税者は除いて)所得控除を2倍にするとCohnは披露した。既婚者で現状約$12Kの基礎控除が$24Kになるそうだ。これは最初の$24Kはゼロ%の税率ということだから大きな減税効果を持つ。これをもってしても民主党議員は今回の減税は富裕層にのみ恩典があると言い張っているのは不思議。また基礎控除が大きくなると個別控除を取る納税者が減るので、面倒なSchedule Aとかを記入する必要が少なくなり、申告手続きの簡素化に繋がる。すなわち、1935年にタイムトリップして1ページの申告書にGet Back。また、トランプ大統領がイバンカから提言されて盛り込まれたとも言われる子女託児費用、扶養家族介護費用に対する控除の充実というどちらかと言うと民主党っぽいノリの低中所得者対策も盛り込むとしている。また、実質2通りの課税所得を算定しないと計算できない代替ミニマム税(AMT)も申告をいたずらに複雑にしているとして撤廃される。「税法はひとつで充分」ということだ。

投資関係の減税として、Capital Gainおよび適格配当に関してはシンプルに20%に戻すとしている。トランプ政権の最優先課題の雇用促進と経済成長にとって資本投資は不可欠だが、資本投資に冷却効果となっていたオバマケア増税3.8%の上乗せさを撤廃するという。Cohnは3.8%のオバマケア増税は「小規模事業主」に重荷であったと、今回のテーマである小中規模ビジネスへの配慮をしっかり強調している。

遺産税も撤廃となる。ここの部分は歳入への影響は最小限だが、控除が約$5Mあるだけに、ネット資産が$5Mの比較的裕福な納税者だけの問題ということで、民主党はむしろ遺産税は拡充したいところ。一方の共和党は党是として許せない税金のひとつで、下院、上院、大統領府と各論に関して一枚岩ではない中、遺産税の撤廃は異論のないところだろう。Cohnは地道に築いたファミリービジネスを子供が遺産税のために泣く泣く売らないといけないような状況は嘆かわしい、とまたしても小中規模ビジネスへの配慮をスピンしている。

富裕層に一矢というか、課税ベースの拡張の一環で、所得税算定時の諸々の控除は基本撤廃するとしている。例外として、持家促進のための住宅ローン支払利息、退職金制度、慈善団体への寄付、の3つのみは温存される。ここで不思議なのは、その後のQ&Aで住宅ローン利息と寄付のことしか回答しなかったせいか、せっかくCohnが退職金制度に言及しているのに、401(k)が撤廃になるのではないかとか翌日の新聞やTVの解説で大騒ぎになっていた点だ。適格退職金制度が全廃されることはないだろう。制度の変更、例えば、Roth IRAと呼ばれる拠出は税引後だけどその後のプラン資産価値の増加に課税されない制度があるが、税引前控除の従来からの401(k)に代わりRothに一本化される「Rothification」(新しい造語!)になるとか、はあり得るかもしれない。ただ、それは前々から話しがあった点で、後半のQ&Aで住宅ローン利息と寄付金のみが言及されていたのは個別控除っていう文脈での話しと考えるべきだと個人的には思っている。ここでもCohnは撤廃対象となる控除は富裕層に主たる恩典があったものだとして、低中所得者に対する配慮のスピンを忘れていない。でもこれはスピンというよりは実際にその通りと言えるだろう。

ここでもう一つ大騒ぎになったのが州税の控除が認められなくなる点。この大騒ぎを予知してか、Cohnは「このようなこと(=控除の撤廃)を実行するのは容易なことではありません。何か大胆なことをしようとすると、保守派からもリベラルからも執拗に攻撃されるのが常です。しかし、ひとつだけ言えることは、トランプ大統領は米国市民のためには厳しいことでも必ず成し遂げてくれるということです。」とトランプ大統領がまるで手品師か、はたまたDoctor Robertかのような描写で美しく前半を締めくくり、財務長官Mnuchinにバドンタッチとなった。Mnuchinがビジネス、法人税セクションをカバーした後、2人がQ&Aに応じるとのこと。ここまでトータル僅か8分弱。で、ここからは次回。

Sunday, April 30, 2017

トランプ大統領税法改正プラン

前回のポスティングでは新政権誕生から4月26日のトランプ大統領・行政府による税法改正プラン初の公式発表までの経緯が「Hot n Cold」そのものだった点を簡単におさらいした。

4月26日のプレスカンファレンスは、発表するすると言って全然出てこなかった大統領側の税法改正に対する指針がようやく満を持して登場するはずだっただけに注目度はかなり高かった。そんな期待が高まる中、東海岸Day-Light Saving時間午後1時38分、会見はほぼ時間通りに始まった。

「「遺跡保存法(Antiquities Act)」の話しにこんなに沢山のプレスが集まるなんてチョッと意外ですね・・」というホワイトハウス報道官Spicerのジョークの後、「今日はもちろん、雇用を創出する法人そしてミドルクラスの双方に税負担の軽減を実現するため大統領の努力の結晶であるプランを披露するための会見に他なりません」という感じで本題に入った。最初の遺跡保存法のところのジョークは面白かったけど(特にSpicerが言うと)個人的にその心は完全には分からなかった。遺跡保存法という単なる地味なイメージの法律を持ち出して沢山の人が集まっている状況を冗談にしただけなのか、税法を遺跡保存法と同じほど古くて固いイメージで表現しようとしたのか・・。つまり現状の税法は今では過去の遺物、すなわちAntiquitiesというところまで意図してのジョークだったのか。後者だったら中々鋭い。

そして国家経済会議委員長Cohnがプラン全体の背景および個人所得税を、財務長官Mnuchinがビジネスおよび法人税を説明すると紹介された。会場参加者にはレターサイズ1枚の簡単なサマリーが配布されている。この配布サマリーの内容は後述するが、アウトラインだとしても余りに簡素なものだ。この「極端な簡素さおよび詳細の欠如」が今回の公表の大きな特徴のひとつと言えるだろう。

紹介に応じてCohnが登場するが、さすが6.3フィート(192㎝!)だけあってデカい。ちなみに後ろに仁王立ちしているMnuchinも負けてない。彼も6.1フィート(186㎝)だから2人とも大きい。僕らと同じ普通の身長のSpicer(7.3フィートで173㎝)が子供のように見える。CohnもMnuchinも2人とも著名なバンカーだけど、Cohnは普通にNYCに住んでいる一方で、MnuchinはBel Air(ロサンゼルスのUCLAの裏の高級住宅地)が主たる居住地だそうだ。もちろんNYCのMidtown辺りにペントハウスの一つ位は軽く持ってるんだろうけど。

そしてCohnは「今日は歴史に残るエキサイティングな一日で、この日が来るのを長い間心待ちにしていました」と始めた。生き馬の目を抜く米国投資銀行で幹部に上り詰め、時に怖かったと評されるイメージとは異なり、国民のための公僕っぽい雰囲気すら漂わせる語り口だ。2月前半から長い間発表を待っていたので、この日を心待ちにしていた点は確かに誰にも異論はないだろう。共和党主導の議会と共に「一世代に一度あるかないか」の画期的な税法改正を実行するチャンスとのこと。チャンスがあったのにオバマケアを廃案にできなかったのはどう説明するのか分からないけど、税法改正は米国民にとって喜ばしい話しなので民主党も一緒に賛成してくれることを願っているという。極左派の影響でトランプとか共和党の法案には内容にかかわらず大反対せざるを得ない民主党を口説くのは至難の業だろう。というかそんなことはCohnも百も承知なので、なんでも反対の野党民主党の大人げなさをハイライトするために敢えて言及しているように思えた。

Cohnは今回の税法改正プランの目的を「雇用創出」「経済成長」「低中所得者層の救済」の3つと位置づけている。この3つは会見を通じて何回も協調されるテーマだった。3つとも全て素晴らしいテーマだと思うけど、 特に小中小企業主、ミドルクラスを救うというミッションは会見中しつこく繰り返された。共和党案が富裕層向けという攻撃をかわすために乱発されている観はあるけど、富裕層が一番多額の税金を支払っているケースが多いのだからドルベースでは富裕層の減税が大きくなるのは当然なはず。ここ8年でトップマージンレートの上昇はオバマケアタックスを加味すると8~9%だから、その際にどれだけの追加負担を強いたかを理解せずに、減税の時だけ富裕層に手厚いと言って攻撃するのは筋違いな感じ。でもそのような攻撃は必ずあるので、そのための伏線として何回もミドルクラスに言及があった。

で、Cohn曰く前日の夜まで下院、上院とすり合わせをし、素晴らしいリーダー間で「Principle(原理原則?)」に合意することができているそうだ。会見を通じてこの「Principle」とか更に「Core principle」という用語が多用された。つまり原理原則は発表できるが、裏を返せば詳細は何も決まっていないということだろう。下院と上院とも要は原理原則は合意しているが、詳細、例えばBorder Adjustmentをどうするか、とか肝心の具体案はまだ合意を見ていないということのようだ。それを裏付けるように、これから数週間「Closeに下院、上院と議論を重ねて行く」とのこと。なんだ未だ重ねてなかったんだ・・という気がしないでもないけど、まあ「Never too late」かな。でも本当のところはCloseに議論を重ねたけど合意に達していないという方が正確な気がする。

また税法が複雑過ぎて誰も自分の申告書すら自分で用意できない状況に国民は不満をもっており、制度簡素化により簡単に自分で申告書が作成できるような状況に戻すという目標も明示した。これもその通りで、僕も米国タックスの専門だけど、毎年10月15日(延長するので・・)が近づくと自分の申告書を作成するのがとても難しく苦痛だ。専門でなければとてもできるものではないだろう。

税法改正の必要性をサポートするための歴史の勉強も登場した。1960年前半にケネディー大統領が減税を実施した頃の所得税最高税率は90%で、租税回避紛いの行為が蔓延していた。1980年台にレーガン大統領が所得税最高税率を28%にまで下げたが、その後また39.5%に戻ってしまい相変わらず節税対策に多くの時間が費やされている。法人税は1988年の34%から大きく変わっていないが、その間に世界の他国は大きく法人税率を下げ、テリトリアル課税(外国子会社からの配当非課税制度)に移管したにもかかわらず、米国のみ1988年の状態で2017年を迎えているという遅れぶりを指摘している。要は概して思い切った税法改正の気が熟しているということだ。

このようなフレームワークの中で、次にCohnは個人所得税の減税プランの解説に入る。ここからは次回。

Saturday, April 29, 2017

米国税法改正とKaty Perry(ブログ開始10年!)

2017年4月でブログを書き始めてナンと10年という歳月が経ちました。いつ書くことがなくなってしまうだろう、と思ってたけど、米国税法はいろんな話題を際限なく次々に提供してくれる頼もしい世界なので、書けば書くほど、もっと書かなければいけないことが増えるという、その昔、渋谷の福ちゃんラーメンで替え玉5個(10個だっけ?)を平らげると代金タダになるということでチャレンジした時の後半の苦闘に似た状況。分からない方ように解説すると、ラーメンも替え玉3つめ以降になると、食べるスピードが落ち、食べても食べても麺が伸びる速度に追いつけず、食べると逆にどんどん量が増えていくように錯覚する現象のことだ(誰も分かんないよね、こんな現象)。途中長期ブレークがあったりしたけど、皆様のサポートがなければ当然こんなに長く続けることはできず、各方面からのサポートには深謝しています。

さて、今年前半のポスティングで、トランプ政権の誕生に伴い30年ぶりの立法が現実的になったかのように見えた米国税法の抜本的改正の方向性、特に改正のスタートポイントとなるはずの下院歳入委員会のThe Blueprintに関してかなり深く触れた。

その後、政権誕生後は矢継ぎ早にTPP脱退を実行したり、入国禁止関係の大統領令を出したり、出だしは勢い良い感じだったけど、リベラル寄りの判事に大統領令のInjunctionを食らったり(未だにどうして州が原告になれるのか、Standingすなわち当事者適格の観点から不思議)、オバマケア廃案にも少なくとも第一弾は内部調整に失敗したり、失速感は否めない感じだろう。その後、最高裁判所判事の空席にScaliaの身上である憲法原意主義と同様の法的アプローチで知られるGorsuch任命に成功したり、シリアへのミサイル攻撃でそれなりの評価はあったとは言え、Big Itemではインパクトに欠ける。

オバマケア廃案失敗のドタバタで共和党も一枚岩にはほど遠い状態を露呈して以来、税法改正もなかなか方向性が定まらない状態が続いている。有権者の中には(自分?)、もう抜本的な改正とかいいから、さっさと個人所得税の税率下げて、パススルー課税を低減し、オバマケア導入時にどさくさに紛れて増税となったMedicareのSurchargeとか、3.8%のNIITとか、それらの悪法を廃案にする位まで持っていってくれて、若干小さい政府になれば上出来、と期待レベルをアジャストしている状況ではないだろうか。

それにしても税法改正もあるのか、ないのか、オバマケア廃案とどっちを優先するのか、Border Adjustmentに大統領は賛成なのか反対なのか、上院は何を考えているのか、毎日のように方向性が変わる3カ月だっと言える。こんな状況を見ていてると、いつも一つの曲が頭の中でプレーバックされる。Katy Perryの「Hot n Cold」だ。歌詞を知っている方は直ぐにわかるだろうけど、もし知らなければ聞いてみるか読んでみて欲しい。米国議会と大統領を頭に思い描きながら。

そんな混沌とした状況にある米国税法改正だけど、プレーヤーは大きく分けて下院、上院、そして行政府の3つだ。行政府は当然さらに大統領、財務省、国家経済委員会、等複数のプレーヤーから成る。法律を通すのはもちろん下院と上院から成る議会。行政はあくまでも議会に対するインプットと、後、大統領には法律にサインしないという拒否権(Veto)がある。ちなみにこのVeto、法案パッケージそのもの全体に対してのみ行使することが許されているので、部分的に気に入らない条文とかが入っていてもその部分だけVetoする、いわゆる「Line Item Veto」は連邦法には認められないと1998年に最高裁判所が判断している。三権分立の観点からそうあるべきだろう。したがって、大枠方向性が合っていれば共和党が通した法律をトランプがVetoすることは考えらえないだろう。

下院は2016年に歳入委員会が既にThe Blueprintを公表しているので、Head Startというか一番方向性がはっきりしいている。上院はIntegrationとか何となく場当たり的なアイディアは出しているものの、結局は様子見という感じ。そこでレーガン以来のリーダーシップを発揮して全体を力強く取りまとめて欲しいのが行政府、特に大統領自身なんだけど、実はかなり狼少年。2月9日には「2~3週間のタイミングで「Phenomenal」な税法改正の発表をする」と言ったきり、何もなく2~3週間は過ぎてしまったし、その後の2月末には両院を前にしたジョイントセッションで再び「近々に「Massive」な減税を伴う「Historic」な税法改正を公表する」とぶち上げていた。その後、3月にも何の発表もなく、「Phenomenal」「Massive」「Historic」と言った大袈裟な形容詞はどこに行ってしまったんだろう、と狐につままれたような日々が続いていた。

そんな中、ようやく4月後半になり、4月26日に大統領府による税法改正案が公表されると発表され、3カ月寝かして議論を重ねた訳なので、いよいよ満を持して登場か、と期待はイヤでも盛り上がらざるを得ない状況となった。もちろん、トランプ大統領や行政府が何を発表してもそれがそのまま法律になる訳ではないので最終的な姿は全く不明だが、少なくとも行政府としてどのように考えているのか、に関しては興味のあるところだ。

そして4月26日東海岸時間午後1時半、例によって見ているだけで笑える感じの報道官のSpicer先生が、アシスタントがレターサイズたった(?)1枚の(日本で言うところのA4サイズみないなもの)Brief Paperをペラペラ配る中、財務長官Mnuchinと国家経済会議委員長のCohnを伴って現れた。あれ?トランプ本人は来ないんだとチョッと期待外れだったけど、まあ財務長官が居れば内容説明には充分かな、と思って会見のスタートを見守った。

さて、3カ月間熟考したその内容はいかに?この点は次のポスティングで。

Sunday, January 8, 2017

米国タックス行く年・来る年(14)下院改正案「A Better Way(The Blueprint)」

前回まで9回に亘り政権交代および議会の選挙結果を受けて2017年に起こる可能性が高いと言われている米国税法改正の抜本的な方向性に触れてきた。そのうち直近の7回は、税法改正審議の叩き台となる下院の歳入委員会による改正案「The Blueprint」を詳解してきた。20%法人税、資産取得コストの一括費用化、国境調整、などかなりインパクトのある内容でぜひ実現して欲しい部分が沢山盛り込まれている案だと言える。もちろん、国境調整のように賛否両論となる規定案もあるけど。

一方でThe BlueprintはかなりConceptualな提唱であり、現在70,000ページに至る税法の根本的な変更を僅か35ページでバッサリ切っていることもあり、実際の法制化に当り、検討しなくてはいけないことが山済みとなっている点は過去にも触れた。「The devil is in the detail」と繰り返し表現してきた点だ。米国税法にはこの格言がまさしくピッタリで、一般的な話しとして、税務関係の質問を受ける際、一見単純に見えるので簡単に(=無料で?)回答できるだろうと企業側が勝手に推測しているケースでも、実際には内部で相当な時間、人的な資源を使って複数の確認をする必要があるようなケースが多い。70,000ページのどこに例外の例外のそのまた例外が隠れているか分からないからだ。と、チョッと愚痴みたいになってきたので、ここらで本来のトピックに戻り、今回のポスティングではThe Blueprintの法制化に際して「こんなことは考えてるのかな?」とか「ここはどういう処理になるんだろう?」的な切口で個人的に興味があったり、不思議に思っている点をまとめて一旦締めくくりとしたい。また今後の進展に関しては、1月20日以降の立法プロセスが進んでいく過程で適宜アップデートしていきたい。

まず税率。法人税20%、個人所得税最高33%はいいけどパススルーの扱い部分は若干不透明だ。「米国タックス行く年・来る年(10)」で触れたけど、The Blueprintでは個人事業主を含むパススルーからの事業所得は個人所得税率ではなく、25%という特別税率で課税するとしている。この25%という低税率を「小規模事業」に当るパススルーからの所得のみに適用するのか、それともパススルーからの所得は全て対象となるのか不明で、面倒な検討を避けるためにも後者としてくれるといいけどなと思っている。また、この25%の適用はパススルーオーナー、パートナーに適切な水準の給与を支払った後の残余利益に対する税率とされているが、何をもって合理的な水準の給与と判断するかとう点に関して結局は「Draconian」的な規定にならないことを祈る。ここの趣旨は給与相当は、法人から給与を受け取る被雇用者と同様に通常の個人所得税の対象としようということで、その心は良く分かるんだけど、いくらの給与なら適正かという事実認定でもめる余地があるような税法にしてしまっては又しても税法の複雑化、予見可能性の低さに寄与することとなる。また、この考え方を取るのであれば、給与以外の部分としてK-1からフローしていくる利益が個人に配賦されるケースではSelf-Employment Tax(SE Tax)の適用を廃止するべきだろう。法人は給与を費用化した後で法人税として20%支払って、その後の配当は株主レベルで16.5%課税されるのであれば、法人が認識する所得の二重課税後の実効税率は33.2%となる。これに比べるとパススルーの給与費用後の利益は事業主体レベルの課税がないので25%で終焉すればチョッとマシという位置づけとなるように見える。ただ、K-1からの利益配賦全体がSE Taxの対象となるとすると個人パートナーにとっては金額水準次第でパススルーの旨みがなくなるような気もする。

減価償却の撤廃と資産取得コストの一括費用化に関しては、税法改正後に事業用途に供されるものが対象となるのだろうか?多分そうなるような気がするけど、となると既存の資産は粛々と現行のMACRSで償却し続けるということになる。AMT廃止となるのであれば、AMTとかACEの償却を算定する必要は既存の資産に関しても必要なしとなるのだろうか?そうであって欲しい。

ネット金利の損金不算入は、既存の借入に対するものも含めて一気に適用されるんだろうか?新規の借入に対してのみとかなると計算が面倒なのでこの際、一気に適用してくれる方がメカニカルには楽。でないとお金に色は無いので、旧借入その後のEquityとか混在してくるとややこしそう。

クロスボーダー関係では制度移管時の措置として規定される、既に溜まっている海外子会社の剰余金(E&P)の一括課税の算定はどのようにするんだろうか。すなわち、現金相当の資産に対しては8.75%で他の資産であれば3.5%という点の適用に関して、どの時点の判断となるんだろう?例えば税法改正前の最後の課税年度の終了時点のB/Sで判断するのだろうか?その場合には多くの米国MNCは2016年12月末となるので既に金額が出てしまっている。それとも税法改正時点のB/Sを見るのだろうか?当然その時点の現金相当資産が少ない方が企業にとって有利なので、短期的に資産内容の入れ替えを試みるようなケースも十分に想定される。過去3年平均のような措置となるのかもね。プラスで「Anti-Abuse」的に「この法律の趣旨に反する資産の入れ替えは無視する」とか一筆入るかもしれないし。となるといつもの税法のように込み入ってきてThe Blueprintの目指すシンプルな税法ではなくなる可能性が大。

国境調整に関してはWTOの反応が見物だけど、もし実質「間接税」ですって米国政府が主張するのであれば、会計上もIncome Taxではなくなり、会計原則のASC740は米国連邦法人税には適用がなくなる?っていう解釈も可能となるかも。VATは単純に輸出と輸入の際の話しだけど、法人税となると輸入した後に掛かる国内コスト、例えば米国内の人件費は損金算入できるので、VATとはちょっと異なる。付加価値に占める米国内の人件費の割合は結構高いというデータがあるし。また、輸入取引に課税というVATのコンセプトを法人税に適用する際、現時点では輸入コストを単純に損金不算入にするというアプローチで達成すると想定されているけど、トランプ政権が頻繁に言っている関税徴収と合体させて関税という形で実行することもあり得るのだろうか?

国境調整に関してWTOともめるようだと長期決戦となる。例えば「米国タックス行く年・来る年(11)」で触れた輸出に税務的な恩典を与えようとしたDISC、FSC,そしてETIという変遷。この戦いには結局10年近い歳月を費やしているので、WTOのチャレンジがある場合その解決には相当な年月を要する。となると米国としては取り合えず国境調整を導入して10年後にダメという最終結果になるのであればそれはそれで受け入れ可能な方向性とも考えられる。何せ国境調整は、テリトリアル化制度移管時の一括課税と並び、大きな歳入源と位置付けられていて、今後10年で$1T(「B」ではなく「T」なので、トリリオン。100円換算で100兆円)の歳入をもたらすと試算されている。これは法人税率に換算しても相当な%だろうから、20%の法人税率を達成するには国境調整の導入がMUSTとなるような気がする。逆に言えば国境調整がダメで、法人税率は28%とか全然面白くないレベルに終わってしまったらThe Blueprintが目指す大胆な改正のイメージが低下することは間違いない。

ナンとこの国境調整、欧州とかのVATではなく日本の消費税をお手本にしていると聞いたことがある。個人的に消費税は全然専門外だけど、もしそうだとしたら日本は相当進んでいるのかもしれない。

国境調整のTrade Balanceとか物価に与える影響に関しては「米国タックス行く年・来る年(7)」で簡単に触れた。すなわち、その影響は中長期的には為替で調整され、最終的には排除されるって説だ。これは国の将来の輸出のPVは輸入のPVと同じになるはずなので為替がそうなるように調整されるからということらしいけど、本当?って感じ。どれくらいのタイミングでそんな調整が起こるか?そもそもマーケットでは調整に必要なデータをどのような収集してどのように分析しているのだろうか?マクロ経済は難しい。ただ、マーケットはEfficientなので為替レートにこの調整は既に織り込まれている、または毎日この点を加味して為替が動いているって考える向きもあるようで、そうであれば市場のメカニズムって凄い。

連邦税法改正に伴う今後の各州の対応も見物だ。基本的に州法人税算定のスタートポイントは連邦の課税所得のケースがほとんどだけど、連邦の課税所得算定法がこれだけ変わってしまうと、連邦と異なり財政を常にバランスしないといけない州側はSales Taxのような連邦とは関係ない税制に歳入を頼らざるを得なくなるかもしれない。この辺りの州の苦悩は2008年3月27日のポスティング「ドル紙幣を刷れない州の苦悩と「Decoupling」」を参照して欲しい。

2017年1月20日にトランプ政権が誕生するが、すでに議会ではオバマケア撤廃、税法の抜本的改正に向けて様々な動きがある。基本的には「Party Line」で方向性は分かれるんだろうけど、改選を控えた民主党議員の中には自分の選挙区でトランプが勝っているケースも結構居る。となると、それらの民主党議員が減税に反対し通せるのかは不明。2017年の議会、特に夏までの動きは目が離せない。

Saturday, January 7, 2017

米国タックス行く年・来る年(13)下院改正案「A Better Way(The Blueprint)」

前回まで何回かに亘ってThe Blueprintの実体的な提唱部分をカバーしてきた。The Blueprintは「21世紀に相応しいService FirstのIRS」、「今後のアクション」、「Appendix」で締めくくられている。これだけのインパクトのある改正を統計的な付属資料等のAppendixを含めてトータル35ページで簡素にまとめている点は評価できる。ただ、簡素過ぎて実際の条文に落とし込む際にはいろいろな追加検討が必要となり、詳細部分を詰めながら同時に税法を超簡素化するはかなりのチャレンジとなることは目に見えている。まさに「The devil is in the detail」状態だろう。その意味ではThe Blueprintに記載されている方向性が達成できるんだったら、まずは第一段階として、税法をいきなり70,000ページから例えば20,000ページにできなくても仕方がないように思う。実際の立法化に際してどのような詳細を検討する必要が出てくるかとに関する個人的な感触は追って触れたい。それにしても2017年前半の立法プロセスが興味深い。

さて、「21世紀に相応しいService FirstのIRS」だけど、同様の動きは過去にもあり、記憶に新しいものに(と言っても既に20年近くの月日が経っているのには驚かされるけど)1998年の「The Internal Revenue Service Restructuring and Reform Act of 1998」がある。当時もIRSのズサンな納税者対応、不公平な差し押さえなどが議会で問題となり、納税者をカスタマーとして扱うようなトレンドとなった。この1998年のIRS改造法は「Taxpayer Bill of Rights」としても知られている。

一般の「Bill of Rights」は米国で暮らしていれば中学生でも知っている(べき?)憲法の規定で、個人の自由を保障した連邦憲法の1から10までの修正を指す。なぜ修正だったかと言うと、最初に憲法が起草された段階ではこれらの条項は盛り込まれておらず、それでは建国趣旨に反し時間の経過と共に連邦政府が大きくなり(オバマケアのように)個人の最大限の自由が侵食される余地があるのではないかという懸念があり、そこを担保するために追加されたものだからだ。以前にも頻繁に触れているが、米国の連邦制(Federalism)下では、通常の国家主権に当る多くの部分は「州」に帰属する。警察、消防、市民の一般的な福祉、等は全て州に帰属する権利であり、連邦政府が手を出すのは違憲行為となる。すなわち、連邦憲法には連邦政府として関与できる分野が明記されて、それ以外のことに連邦政府は手を染めることは禁じられており、残りの分野はデフォルトで州担当という構成になっている。逆に州政府が何をしていいという規定はなく、憲法で連邦に明白に与えられている権利以外は自然に州に属するというシステムだ。連邦政府は国防、州間通商、移民、外交、等、州単位ではなく国単位で関与する必要がある分野のみ担当となる。

Bill of Rightsは米国の個人の自由を保障する大基本で、言論・宗教の自由、フェアな裁判その他の刑事訴訟からのプロテクション、銃所持権(どこまでを認めているかは意見が分かれているけど)、その他がうたわれている。趣旨としては連邦政府が法律を制定したり、行政を行う際に憲法にて保障される個人の自由・権利を侵害していはならないというものだ。憲法下でのこれらの「Safeguard」は一部の例外を除き個人とか法人の私人に対してではなく政府に対して適用されるものだ。興味深いことに技術的にはこれらの修正に基く歯止めは元々連邦政府にしか適用がなかったが、「Incorporation(別のものに組み込まれるという意味で)」という考え方に基き州政府・州法に対しても裁判所が適用を始め、最終的には14th Amendmentで州にも同様の制限が明白に適用されるようになった。ちなみに憲法の修正条項と言えば、1913年に16th Amendmentで憲法改正されるまで連邦政府は所得税とか法人税とかのIncome Taxを徴収することは禁じられていた。その後僅か100年チョッとで70,000ページの巨大な法律に進化してしまうのだから凄い。16th Amendmentがなければ今日の米国の生活は大きく違っていただろう。

で、Taxpayer Bill of Rightsだけど、憲法修正条項のBill of Rightsの名を借りて、納税者がIRSに対応する局面で認められる基本的な権利がまとめられている。多くが既に税法等の法律で守られているべき項目だが、再度これを体系的にまとめて確認している側面がある。これらは正確に算定された以上の税金を支払う必要はない、とか言う当然と思われるものから、「質の高いサービスを受けることができる」という抽象的なものまで入っている。更に1998年のIRS改造時には納税者の権利と並び、より適切な対応ができるよう、IRSの内部組織が再編されている。

すなわち1998年のIRS改造時まではIRSは地理的に区分けされた組織で納税者に対応していたが、これを機能・納税者のタイプベースに分けてより的を得た対応が取れるように再編された。それらは「Wage and Investment (W&I)」「Small Business/Self-Employed (SB/SE)」「Large Business and International (LB&I)」「Tax Exempt and Government Entities (TE/GE)」。

「W&I」は給与所得・投資所得のみの申告する実に1億2千万人におよぶ個人納税者を管轄する部隊となる。「SB/SE」はその他の通り、5千4百万人の自営業者・小規模ビジネス、「LB&I」(LBGTと字面が似ているけど間違えないように)は25万社の資産1千万ドル超の法人(S法人含む)、パススルーを管轄する。面白いことに「LB&I」はオフショア(=米国外)に資産・事業を持つ米国市民・居住者、また米国で事業に従事する非居住者個人も担当とされた。「TE/GE」はその名の通りペンションプラン等のトラストを含むTax-Exemptを管轄する。

細かく言うと、これらのカスタマーFacingなユニットはIRSの2つの大きな内部組織である「the Deputy Commissioner for Services and Enforcement (DCSE)」と「the Deputy Commissioner for Operations Support (DCOS)」のうちの前者DCSEの下部組織となる。上述の4つユニットの他にもDCSEの中には罪関係の調査部門とかオバマケア関係のユニットとか総計10のユニットがある。DCOSの方はどちらかと言うとIRS内のバックオフィス的な機能を持った6つのユニットで構成される。

これらの複雑な組織をどのように再区分するのか不明だが、今回のThe Blueprintでは「World Class」サービスを提供するためこれを次の3つに再編するということのようだ。まず「The families and individuals unit」はその他の通り個人納税者に迅速な対応を専門とする組織。次は「The business unit」 で、これはあらゆるサイズの事業に対して新しい税法の適用を司るとしている。そして最後に「The small claims court unit」で、これはイメージとしては既存のAppeals Officeのもう少しアクセスのいいものみたいな感じだろうか。

「The Business Unit」は米国ビジネスをサポートするというThe Blueprintの目標を達成するため、小規模事業主やスタートアップ専門チームとグローバル規模のMNCをサポートするチームを別途下部組織として組成するとしている。これら3つの組織で「Service First」のIRSとして生まれ変わるというプランのようだ。でも組織変えても中で勤務している人たちが同じだとしたらそんな簡単にService Firstになるかな~、って感じはあるけどね。

またService Firstには最新の「Information Technology」も駆使するが、納税者のオプションで旧来の人による対応も残し充実させるそうだ。本当になれば素晴らしいけど。

最後にThe Blueprintは「The Path Forward」というタイトルでここから先のロードマップを簡単にまとめて締めくくられている。現状の税法からの大きな変更となる部分は適切な移行措置を策定するとし、セコイ改正ではなく、雇用創出、経済成長、生活水準の向上、という目的に立ち返って大胆な改正を提唱している。

Wednesday, January 4, 2017

米国タックス行く年・来る年(12)下院改正案「A Better Way(The Blueprint)」

前回はThe Blueprintのクロスボーダー系の部分に関する二つの抜本的な改正のうち国境調整に関して触れた。そんなバカな・・という第一印象を持たれるであろうこの国境調整ももし税率が15%程度であれば、確かにVATの代わりと割り切ってしまえば、それなりに納得感もあるかも。20%だとチョッと高価なVAT過ぎるし、パススルーの25%とかだとVATとしての納得感も減少してしまうけどね。輸入コストが原価にならなかったり、輸出の売上げが課税されないとなると移転価格の問題も激減するようにも思われ、もしかしたら納税者にとっては悪いことばかりではないかもしれない。という訳で国境調整は切りがないので、今回はクロスボーダー課税2つ目のトピックで、ある意味「Most anticipated」とでも言うべき「テリトリアル課税」について。

時代遅れの全世界課税は撤廃しテリトリアル課税に移行する必要性は米国でももう何年も議論されており、Camp提案のようにかなり具体的なものもあり、抜本的な税法改正はテリトリアル課税の議論なしには不可能な状態だった。そんな状況なので国境調整と異なりテリトリアル化が盛り込まれている点は想定内と言うか、これが無かったら逆にビックリしていただろう。

The Blueprintによるテリトリアル課税は海外子会社からの配当は気前良く100%非課税と提案されている。ただ、日本の2009年のテリトリアル移行時と異なり、制度移管時の措置として、その時点で海外子会社に溜まっている剰余金(正確にはE&P)は一括課税の対象となる。この課税方法も以前のCamp案と若干異なり、現預金相当の形で持っている部分には8.75%、他の資産で持っている部分(おそらくE&Pマイナス現預金相当額で算定)には3.5%で課税、と二層別々の対応となる。Camp案同様、一括課税の負担は会社によっては大きいので8年の分割払いが認められる。大盤振る舞いの税法改正においてこの一括課税は大きな歳入源だ。

The Blueprintでは、テリトリアル化により米国企業が海外に眠らせている数兆ドル単位の埋蔵金も自由に米国に持って返ってくることができるようになり、他の施策と合わせると法人や事業主は税法ではなく、事業ニーズに基きサプライチェーン、雇用、投資の場所を決定することができるようになるとしている。決算書でも面倒で意味のないAPB 23ポジションとかを文書化する必要もなくなり皆ハッピーだろう。

この2つの改正、すなわち国境調整とテリトリアル課税、さらに20%という低税率の組み合わせで自然と米国企業はInversionなど検討する必要はなくなり、安心して米国企業とし活躍できるとし、Subpart F(日本のタックスヘイブン税制に類似)規定のほとんども用無しになるという「自浄作用」があるとしている。

確かにSubpart Fは複雑極まりなくなっているが、投資所得に対する「personal holding company」規定のみを残して、他の部分は改正と同時に撤廃可能としている。日本が米国型の現行Subpart Fに傾いているのとは逆行していて面白い。日本で米国Subpart F型を推し進める際、米国企業がどれだけSubpart F等のコンプライアンスに時間とコストを掛けていて、それがどれだけ重荷となっているかという点を加味して判断しているのかチョッと不思議。Subpart F絡みのコンプライアンスは、本社が世界中の子会社から定量・定性双方で困難な情報収集を強いられ、大手米国MNCでは会計事務所に年間数百万ドル(円ではない)支払っているところも珍しくないくらいの面倒さなので、日本が米国のSubpart F型に移行するというのであればそれなりの覚悟が必要だ。なんせ張本人の米国議会が酷い規定として反省し、廃案を提唱している位だから。

The Blueprintの実体的な提唱はここまでで、最後は「21世紀に相応しいService FirstのIRS!」としてIRSを生まれ変わらせるという大胆な提案で締めくくっている。Service Firstに関しては次回。

米国タックス行く年・来る年(11)下院改正案「A Better Way(The Blueprint)」

前回はThe Blueprintの中でも20%の法人税や25%のパススルー特別課税を提唱している重要部分に触れたが、今回は同様にThe Blueprintの心臓部を構成していると言ってもいいクロスボーダー課税に関して。

クロスボーダー系の部分に関してThe Blueprintは二つの抜本的な改正を提唱している。まずは国境調整。国境調整は「米国タックス行く年・来る年(6)」等で触れているが、かなり刺激的なので再度ここでもう少し背景等を含めて詳細に書いてみたい。

The Blueprintの基本的な主張は、現状の所得ベースの税法では米国自らが進んで米国からの輸出取引にペナルティーを課している状態にあるとし、これを消費地課税とすることで是正するとしている。この部分の議論をザックリとまとめると次のような感じ。

米国の貿易相手国は歳入の多くをVATでまかなっているが、VATには国境調整が付き物なので、「米国タックス行く年・来る年(6)」でも触れた通り、理論的にはクロスボーダー取引の局面では仕向け地のみで課税が発生する。すなわち、輸出は輸出時点までの付加価値に課せられてるVATが還付されるので無税となり、輸入は輸入国側でフルに課税対象となる。このメカニズムは貿易を行う両国が同じVATシステムを適用している限り、輸出側の国で非課税となる輸出は、それを輸入する側でフルに課税されるため、輸出と輸入に対する税効果は相殺されることになる。ところが米国はVATというシステムを採択しておらず、代わりに所得ベースの所得税・法人税のシステムを基本とする。となると、多くの相手国がVATを採択しているため、米国相手のみのケースで輸出と輸入に対する税効果の相殺がみられず、米国からの輸出(貿易相手国から見ると輸入)は米国で輸出の売上げに課税され、更に輸入に対してVATが課せられる一方、米国への輸入(貿易相手国から見ると輸出)は米国ではコスト算入されるので非課税となり、輸出側でもVATも還付されている、という不均衡が生じており、米国自ら輸入を奨励し、輸出を罰している結果となるということだ。

だったら連邦VAT導入とするのが分かり易い解決法だと思うんだけど、ここは歴史的な背景がある。実は米国でも抜本的改正の度にVAT導入論は出ている。ただ、常に低所得者層により負担が偏るのではないか、等の反対で実現していないし、近々に実現する気配もない。The Blueprintも、この現実を踏まえた上で、冒頭でVATは今回の検討対象ではないと明言し、国境調整の考え方を法人税・所得税に適用するというアプローチを選んでいる。資産取得コストを費用化できる「キャッシュフロー」ベースの税制に国境調整を組み合わせて、消費地ベースの課税とし、実質間接税と同じような効果を創出するという狙いだ。The Blueprintが改正後の税法をやたら「消費ベース」とか「キャッシュフローベース」とか強調しているのは後述のWTOルールに対する伏線のような気がする。

いずれにしても国境調整を米国税法に取り入れることで、米国も初めて貿易相手国と同じ土俵に立つことができるようになるとしている。

この国境調整はWTOのルールによると、「間接税(Indirect Tax)」の局面では認められているものの、ネット所得ベースのIncome Taxとなる「直接税(Direct Tax)」には認められてない。この点に関してThe BlueprintはWTO下での潜在的コンフリクトの存在は認めた上で、このようなルール下では直接税を採択している米国は一方的に不利な状態に置かれているとし、The Blueprintで提唱されているキャッシュフローおよび消費地ベースの税法は形式的にはIncome Taxだが、実質はWTOが言うところの「間接税」に近く、そのためWTO的にも問題がない(?)と結論付けている。国境調整をWTOに認めさせるためには何とかThe Blueprintで提唱されている税法を「間接税」に近いものと位置付ける必要があり、そのためには消費ベースでキャッシュフローベースという点を強調する必要が出てくることとなる。

法人税下の国境調整はなかなかのGame Changerと言えるけどWTOとか出てくると一筋縄では行かないかもね。WTOとか昔のGATTと米国税務の戦いで有名なのは、輸出に税務的な恩典を与えようとするDISC、FSC,そしてETIという変遷が思い出される。最終的には米国があきらめて今日のSection 199に至るんだけど。

次回はクロスボーダー系の二つの抜本的改正のもうひとつテリトリアル課税について。

Monday, January 2, 2017

米国タックス行く年・来る年(10)下院改正案「A Better Way(The Blueprint)」

いよいよThe Blueprintも肝心の事業所得に対するアプローチに到達する。

まずは米国法人税の高税率に関して。1986年の税法改正で米国法人税率は46%から34%と大胆に下がったが、その後30年間、米国法人税は同レベル(実際には35%に若干上昇)を保っている。その間に、1986年の税法改正当時は平均47.2%もあったOECD加盟国の法人税率平均はナンと24.8%に下がっている。日本ですら30%だもんね。相対的に米国の魅力が落ちていることとなる。そこでThe Blueprintでは米国史上一番大きな減税となる法人税20%を提唱している。トランプ案は15%で、税率はトランプが勝ってくれるといいけどね。

ここで面白いのは大企業や富裕層優遇と言われないよう、散々小規模事業主(Small Business Owner)等に対する恩典を強調している点だ。この点に関連し、米国の事業の95%が個人事業主、パートナーシップ、LLC、S法人の「パススルー」主体を通じて従事され、また事業所得の50%以上がLLCを含むパートナーシップからのものだというデータを紹介している。現状ではパススルー所得は基本的に最終的には個人に課税されるため、二重課税はないが、最高39.5%(プラス自営業税)の高税率に晒されている。もちろんCarried Interestは今では未だ別だけど。The Blueprintでも法人税率は20%としても、パススルー所得は個人レベルで課税されるとなると最高33%の課税となってしまう。それでは事業主が不利ということで、The Blueprintでは個人事業主を含むパススルーからの事業所得は個人所得税率ではなく、25%という特別税率で課税するとしている。The Blueprintから必ずしも明確でないのは、この25%という低税率は「小規模事業」に当るパススルーからの所得のみに適用されるのか、それともパススルーからの所得は全て対象となるのかという点だ。この際、シンプルに後者だといいんだけどね。その際にはパススルーはオーナー、パートナーに適切な水準の給与を支払ったと扱われ、その分は法人から給与を受け取る被雇用者のように通常の個人所得税の対象とし、残余利益に関しては25%の特別税率の対象にするとしている。であればいっそのこと、法人税率と同じ20%にして欲しいような気がする。

この手の扱いは一見シンプルだけど実は何が合理的な水準の給与かという算定とか結構面倒かも。この規定に代表されるようにThe Blueprintでは税法がものすごくシンプルになるように設計、意図されているようだけど、かなりハイレベル、すなわち大枠の議論で終わっているため、まさしく「the devil is in the detail」という感じは否定できない。AMTの減価償却計算とかやっていても本当にバカバカしい限りなので、方向性としては絶賛するに値するが。ちなみに、この「Devil is in the detail」、日本語で「悪魔は細部に宿る」とか訳されているのを見たことあるけど、全然意味が伝わらない感じ。ビジネスの文脈で使われる際には、「一見簡単なことも詳細を詰めるとそんなに簡単ではない」という意味になる。M&Aの契約のTermの交渉を簡単に済ませようとしたりする際に良く使われる言い回しだ。

以前から何回も触れているが、事業資産に対する償却(Depreciation+Amortization)は撤廃され、全て即費用化となる。確かに現状の償却はその区分法により償却期間が大きく異なるし、内装がリース期間にかかわらず39年だったり、AMTがあったり分かり難いことこの上ない。これらの作業が無くなるだけでも相当コンプライアンスは楽になるだろう。費用化には土地取得コストは含まれないとされる。となると建物とか取得した際の取得コストの土地・建物の配賦は今以上に重要検討項目。その代わりにネット支払利息は損金算入できなくなる。ネットの話しなので、利子所得があれば、その範囲で支払利息は費用化できるが、それを超えては費用化ができない。となると面倒なSection 163(j)のアーニングス・ストリッピングとか、言語道断に難しいFunding規定とかを含むSection 385の過少資本規則とか、Financingプランを使ったHybridだの、Reverse HybridだののBase Erosionとか一切検討の意味を持たなくなってしまう。こんな伝家の宝刀を抜いてしまうとは・・。

繰越欠損金(NOL)の扱いも面白い。繰越は永遠に認められ、しかも毎年物価スライド調整的に利率を乗じた金額を後年に繰り延べできる。一方で繰り戻しはなくなり、また繰り延べの対象となる課税年度で使用できる金額はその年度の課税所得の90%に限定される。現状のAMTのNOLみたいだ。未使用のNOLに金利を付けてくれたりしてなかなか親切で大胆。

現状の税法に規定される諸々の「Special Interest」に対する控除・クレジットは全廃が提唱されている。その槍玉に上がって例示に登場しているのがSection 199の製造者控除。一定の活動に従事する法人は法人税率が実質35%から32%程度になり、個人にパススルーされる場合には39.6%が36%程度になるが、適格かどうかの判断が複雑で、適格とならないケースでは納税者が不利な扱いとなり、適格となる場合も相当なサポート文書化が必要と嘆いている(実際に本当だと思う)。そこでSection 199を含む特別な活動、事業に対する恩典は撤廃し、その代わりに税率を思い切り下げて、どのような活動に従事するかは議会が決める税法ではなく、事業主の才覚で決めて欲しいとしている。

なかなか立派な提唱だが、前述の通り、そんなに間単に行くかは少し心配。まさに「the devil is in the detail」。次回はいよいよ斬新な「消費地課税」に関して。

米国タックス行く年・来る年(9)下院改正案「A Better Way(The Blueprint)」

2017年明けましておめでとうございます!

大晦日のTimes SquareはMariah Careyがまたしてもボーカルで失敗してチョッとビックリだったけど、TVで見る限りその他はかなり盛り上がってた。MariahのボーカルはNYCのこの手のイベントでは「いわくつき」の問題で、2014年のロックフェラーセンターのクリスマスツリーの点灯式でも「All I want for Christmas is you」で全然声が出なかったハプニングがある。何でも、ロックフェラーでは本来はボーカルをPre-recordingしてリップシンク(クチパク)にするはずが、Mariahが3時間遅刻してきたので本当にライブパフォーマンスとなってしまい、元々声域が異常に広かった歌手だけに当時は高域を駆使した曲が多く、後年ではそれが裏目に出てしまい、全然声が出ないと言う状況を露呈してしまったという事件だ。

それだけに今回の大晦日に当然全国放映のTimes Squareカウントダウンイベントの「トリ」として登場した歌姫がまたしても大失敗というのはチョッとリスク管理に問題があるのでは?というか何か悪い陰謀でもあったのでは、と思ってしまう。今回は用意周到に「We belong together」をリップシンクで披露するはずが、なぜかバックに掛かり始めたのはMariahの1991年の大ヒット曲「Emotions」。またしてもリップシンクではなく急遽ライブパフォーマンスとなってしまいロックフェラーセンターの悪夢の再現、というかそれを上回るパフォーマンスとなってしまった。声は出てないし、その上歌詞も忘れているように見えて、数秒で歌うのは諦めて適当にMCしてステージから降りてしまったのだ。近所のカラオケ大会でもあるまいし、こんなことがなぜ緻密に計画されている大手のイベントで起こりえるのか本当に不思議。

ちなみにこのEmotions(Mariahの曲のタイトル)って曲、1977年のThe Emotions(バンドの名前)の「Best of my love」とリズムとかリフが同じなので当時は何かのジョークなのかな、と思っていた。この2つの曲の12インチを買ってターンテーブル(もちろん黒のTechnics SL1200MK5 Direct Drive Turntable を2台持っていたので)でミキサー使って同時に掛けて、友達と8小節毎に交互に聞いたり、ズッと重ねてみたりして遊んだものだ。後で知ったけど、やっぱりThe EmotionsがMariahを盗作で訴えたそうだ。許可なく使っていたとしたら、しかもバンド名を曲の名前にして、結構大胆。

同様に大胆なのがここ何回かのポスティングで取り上げている米国の抜本的税法改正の叩き台となる「The Blueprint」だ。このThe Blueprint、米国を投資対象国として世界一魅力ある国にするという高尚な目的を掲げながら、合計僅か35ページと簡明にまとめられた読み易い文書だ。あちこちに定義が散らばっていて常軌を逸して読解困難な過少資本の最終規則518ページを読んだ後だと何を読んでも分かり易い。

The Blueprintでは国民1人当りのGDPを指標とし、それが低迷しているのは、勤勉な勤労、貯蓄、投資に課税する現状のできの悪い税法のせいだとバッサリ切っている。GDP総額は「人口X生産性」なので、人口が異なると比較しても余り意味がないし、国民1人当りのGDPは生活水準を図るには有益だ。生活コストを加味せずに単純にドル換算した数字はあちこちで出ているので大体の感触はみんなも知ってると多いと思うけど、ルクセンブルグ、スイス、ノルウェーが1人当り10万ドル前後で上位というランキングを出している統計が多く、米国は5万ドル後半で10位以内だ。ちなみに日本は3万ドルの真ん中辺で25位くらい。200国近い中でなので日本も悪くはないが人口が減少傾向なので1人当りの生産性を他国より高めて全体のGDPを押し上げる努力、政策は欠かせないだろう。日本版Blueprintで大胆な政策が望まれるが、海外から日本の国会の在り方を見ているとどうなんだろうか?って思うことは多い。日本はタックスヘイブン税制を強化したりBEPSに一生懸命だけど、国際的な会計事務所の国際税務部に居て世界中の企業の在り方を目の当たりにしている立場から言うと、日本企業は大概において他国のMNCと比べても極端に真面目に納税しているケースが多く、アクティブにBase Erosionなんてしているケースは全体像として少ないのは間違いないと肌で感じている。これ以上、日本企業にコンプライアンスを強いるようなことは考え直して日本版Blueprintで世界一投資したい国に導いて欲しい。

で、現状の税法がダメだったらThe Blueprintではどういうアプローチを取るかというと、ズバリ「所得ベース」からより成長推進型(Pro-Growth)の「消費ベースのタックス」に移行すると宣言している。え~、遂に米国も法人税とか所得税を撤廃して連邦VATとか消費税?と考えてしまいそうな出だしだが、実際にはそうではないと直ぐに釘が刺されている。消費ベースの課税システムは必ずしも消費税でなくても法人税の規定を大きく変更することで達成できるとしている。The BlueprintではVATや消費税は論じないと断ったうえで、21世紀に相応しい「消費ベース型の法人税」の導入提唱をしている。その骨子は低い税率、シンプルな税法、有形・無形の事業資産取得コストの取得時一括費用化、仕向け地(消費地)のみでの課税(これが国境調整)、そして海外子会社配当益金不算入のテリトリアル課税、となる。

貯蓄を奨励するため、オバマケアで導入された3.8%のNIIT(プラス0.9%の追加給与税)は即撤廃し、さらに従来は通常税率で課税されていた利子所得もキャピタルゲイン、配当と並び、通常の税率の半分で課税されるようなインセンティブを設ける。個人所得税は極端にシンプル化され、ポストカード一枚に収まる申告書となるそうで、実際にポストカード申告書のサンプルまで入っている。本当にこうなったら凄い。香港みたいだ。でもNR申告書とかDual Statusとかちゃんと考えてくれているのかチョッと心配。

The Blueprintではここから事業所得に対する課税の新しいアプローチに入る。