Saturday, February 6, 2016

Inversion/インバージョン(8)

前回はSection 7874が制定され、それでも止むことを知らない単独Inversionのところまで漕ぎ着けた。Section 7874では、旧米国法人の株主が引き続きInversion後の外国法人の持分80%以上を持っていると、外国法人を米国税務上は米国法人とするという厳しい結果となり、さらに60%以上80%未満の場合には、外国法人と認められるが、その後10年間に米国法人が認識する「Out-from-Under」絡みのGainをInversion Gainとして、Gainに対して欠損金他の控除を認めないという扱いとなる。Out-from-Underに関してはInversionの話しの最初の方で触れているが、CFCを実際にまたは経済的に米国から外すことを意味し、CFC株式売却Gain、CFC無形資産の外国関連会社にライセンスして受け取る所得、などがInversion Gainとなる。

ただし、前回も触れた通り、SBAテストの例外を満たすと持分継続にかかわらずSection 7874の適用はなくなる。趣旨としては、仮に持分が継続している場合でも、再編後に親会社となる外国法人の設立国でグループが実体を伴うある程度のサイズの事業に従事している場合、再編にはタックス目的以外の事業目的が認められるということとなる。

このSBAテストがいつ満たされるかという検証法はSection 7874そのものには具体的に規定されていないために、財務省の規則を適用することになるが、2006年に発行された最初の規則では「10%安全ガイドライン」+「F+C」で、比較的親切に「こんな感じでF+CテストがOKになりますよ~」みたいな事例が複数記載されていたりした。ところが、2009年には「F+C」のみとなり、更にF+Cを満たす事例は削除される。

2009年の規則改訂後もF+CのSBAテストは意外にも引き続き適用成功例が多く、Section 7874ができたというのに、未だに単独Inversionが絶えない状況となってきていた。これがInversionのVersion 4.0とでも言うべきGenerationで、Sara Lee、Ensco、Aonなどが有名所だ。ちなみにこの3社とも行き先は英国だった。ちなみに英国というのは不思議な国だな、といつも個人的には思っている。規制がいろいろとあるようでないようで、Trustの考え方が発達しるので資産の本当のオーナーが分かり難いし 旧英連邦に沢山のタックスヘイブンを抱えていたり、シティーがかなり独立自治的な存在だったり、NYCのウォール街でできないようなことができちゃったりするんじゃないかと思わせる不思議な国だ。金融関係の大型スキャンダルもNYCよりもロンドンに多いような気がする。London WhaleとかLIBORの件とか。007の映画じゃないけど、チョッと神秘的なところがある。Beatles発祥の国だし(全然関係ない?)

2006年、2009年の規則下でも単独Inversionが可能だったのは必ずしもSBAテストの適用規則が軟弱だったということではなく、どのケースもかなりしっかりした事実関係を持つケースばかりで、Section 7874の立法趣旨から言っても免除されるべくして免除されているという見方の方がフェアだろう。しかし、財務省はそうは考えていなかったようで、2012年には規則が改訂され、実質、SBAテストを撤廃したに近い、25%テストを導入する。加えてF+Cテストは撤廃されてしまった。F+Cテストが存在しないこととなった以上、この25%は安全ガイドライン(Safe-Harbor)ではなく、単なるBright-Lineテスト(機械的なテスト)となり、唯一SBAテストを満たす術となる。25%テストは2006年の10%安全ガイドラインと考え方は同じで、再編後に親会社となる外国法人の設立国でグループが25%以上の従業員、資産、売上(どれかひとつではなく3つ全てに関して)を持っていれば、機械的にSBAが満たされたと認定するというものだ

米国MNCで米国以外の国に3つのファクターに関して25%以上を持っているケースは現実的にはあり得ないに近い。事実、2012年にSBAテストが強化(というか適用不能状態?)されて以来、Inversionは単独のものはほぼ姿を消し、第三者の外国法人との「統合型」に移行していく。すなわちSBAテストを満たすことができないので、Section 7874の適用を回避するには80%以上(できれば60%)の持分を継続しないようにストラクチャーするしかなくなってしまった。

2012年の規則変更以後、25%のSBAテストを満たして単独Inversionした唯一(?)のケースとして良く引き合いに出されるのはVirgin Media社だ。Virgin Mediaは米国MNCとは言え、ほぼ全ての事業が元々英国という変わった事実関係があり、そのために25%テストをクリアして英国にInversionしていくことができた。

SBAテストが実質撤廃された状況となり、その後の勝負は継続持分が60%または80%を切ることができるかどうかとなる。この判断は分母と分子が分かれば単純な計算のはずだが、実は企業側がSkinny DownとかStuffingとか、様々なテクニックを生み出すことで、またしても財務省とのいたちごっことなり、Inversionのサガが続いていく。