Thursday, October 21, 2010

進化するLLC(Series LLC)(2)

前回(と言ってもしばらく前となってしまったが)デラウェア州で、誕生している最先端を行く事業主体形態とでも言うべき「Series LLC(シリーズLLC)」について書き始めた。

一つの親LLCを設立した上でその中にミニLLC(SeriesとかCellと呼ばれる)を作るようなイメージで、そのミニLLCがあたかも独立法人かのように有限責任や独自の権利関係を持つことがるのが特徴だ。複数のLLCを設立するよりもコストメリットがあるということで普及している形態だ。ただし、新しい形態の事業主体が常にそうであるように、有限責任等の有効性に関して裁判所の見解が出ていない。したがって、理論上は有限責任だが、その意味で多少の不確実性は残っていると言える。

*Series LLCの税務上位置づけ

以前からのポスティングで再三触れている点だが、米国では事業主体は州の会社法の規定に基づいて設立される一方で、それを連邦税法上、どう取り扱うかという点は連邦税法で別途規定されている。Check-the-Box規定がそのいい例だ。

今回、公表された暫定財務省規則によると、連邦税法上、シリーズLLCのミニLLC各々は州法上、個別の事業主体とみなす、とされる。州の会社法上、個別の事業主体となるということが必ずしもイコール連邦税法上も個別の事業主体という訳ではないが、暫定規則の方向性から税務上も個別の事業主体と取り扱われると考えるのが自然だろう。

となると、個々のミニLLCに関してパススルーの取り扱いまたは事業体課税(=法人税対象)の取り扱いの選択が認められることとなる。Series LLCを組成する際、個々のミニLLCは親LLCまたは親LLCの子ミニLLCに所有されることもあれば、親LLCのメンバーが直接ミニLLCを所有することもあり得る。親LLCが100%ミニLLCを持つ場合にはミニLLCは税務上はDisregarded Entity(支店)扱いとなる。一方、複数のメンバーがミニLLCを直接保有するようなケースでは、ミニLLCは親LLCとは別のパートナーシップ扱いとなることになる。

州税上の取り扱いがどのように規定されていくかも興味深い。カリフォルニア州では税務当局(FTB)がそのウェブサイト上で「Series LLCのミニLLCは各々個別のLLCとして取り扱い」と早々と公表している。その理論で行くと、ミニLLCのうちカリフォルニア州で事業を行なっているところだけがLLC Feeの対象となるように見える。

*拡大するSeries LLC

デラウェアで「誕生」したSeries LLCであるが、現在では他州の会社法にも規定が始まり、現時点で10に近い州でSeries LLCの設立が可能となっている。その好評さから考えて、全ての州法にSeries LLCが規定される日もそう遠くはないように思える。

なお、州の会社法上、ミニLLCは各々有限責任を認められている点は上述の通りだが、連邦税の支払い義務に関しては連帯責任を負うのではないかという見方もある。