Thursday, January 1, 2009

謹賀新年(波乱の2008年が終わり新しい年に) - 米国企業買収のチャンス

2008年の後半、具体的にはリーマンブラザーズが破綻した後の不況感は、年の初めにサブプライムで不況になるぞ、と覚悟していたレベルを大きく上回るものになってしまった。ここに来て、個人、企業、政府の全てがまさに「生き残り」を懸けて今後の戦略を模索している。その意味では確かに「100年に一度」という枕詞が相応しいのかもしれないが、今日のようなグローバル経済が実現したのはどう長く見てもここ何十年かの話しであることを考えると100年に一度っていう表現はどことなく逆に軽い感じがする。1929年の大恐慌に匹敵するという表現も、もちろん実際に体験した訳ではないのだが、僕がその昔、教科書で習った大恐慌当時の様子と今日の様子とはまだ違うんじゃないかな~と思ってしまう。

だからと言って今回の不況を過小評価するつもりは毛頭ないが、日本のバブル崩壊とその後処理の経験、国際的なセイフティーネット、とか1929年にはなかった技を最大限に利用して何とか被害を最小限に食い止めて欲しい。

*米国企業買収のチャンス

円高と株安で日本も大変な状況ではあるが今回の不況を機に逆にグローバルの存在感を高めて欲しい。個人的に今の仕事に付いている一番大きな理由は日本企業がグローバル、特に米国で、更に躍進していくのをタックスという側面から応援するためであり、一つでも多くの日本企業がこれからも強力なグローバル・プレーヤーであって欲しいと願っている。

1ドル90円を切るような急激な円高(というかドル安)は輸出企業には厳しいが戦略的なM&Aには大きなチャンスとなる。一時は飛ぶ鳥を落とす勢いであったPrivate Equity FundsとかHedge Fundsが機能不全に近い状況に陥っている欧米では以前では困難であった買収も実現が可能となる。この手の話しには必ず例として引き合いに出されるのが三菱レイヨンだが、他にも戦略的な買収案は存在する。

M&Aはマーケット、人材、技術、知的所有権等を手っ取り早く入手するのに最適だが、成功例が必ずしも多くないのも事実だ。以前には、Due Diligenceナシで買収を最終化してしまったり、Merger Agreementを全て理解しないままサインしてしまった、という笑えないジョークのような例が結構あった。実際にこの目で見た実例だが、これからのM&Aは少なくともそのような無謀な買収手順を避けるばかりでなく、合併後のIntegrationプロセスを十分に想定した上で臨む必要がある。

日本企業による米国企業の買収をタックス的な側面から考えると、買収そのものに係るタックスの取り扱いももちろん重要であるが、プロジェクトとして結構多いのは買収した企業が傘下に持つ米国外の子会社の整理・再編だ。

典型的な日本企業は日本の親会社を頂点として世界各地に子会社を持っている。買収を通じて新規にグループに参加することとなる米国企業が米国外に子会社を持っている場合、日本企業として既に持っている子会社と統合させることがある。また、そのまま独立して子会社を保有し続けるケースでも、米国法人の下に持っているのは税務上その他の理由で必ずしも得策なケースばかりではない。そのようなサンドイッチ形態を解消し、買収した米国企業の下から外し、日本親会社または他のグループ企業の子会社化することもある。このような再編には多くのタックス上の検討事項があり、いろいろな形態での解消が考えられる。対象となる取引が現に存在する場合にはぜひ我々のような専門家に一時も早く相談することをお勧めする。

日本企業の財務体質が比較的いいということは最近よく指摘されることである。単純に税務的なことだけを考えると高税率国で負債・資本比率が低い(すなわち自己資本比率が高い)というのは必ずしも効率がいいことではないのだが、不況時にはバランスシートが健全な方がいい。この強力な財務体質は、米国の株安、Private Equity等の沈下、等と並び今後の日本企業が米国でのM&Aを有利に進める好材料となる。

ターゲットの選定であるが、投資銀行等から提出される資料ばかりでなく、統合後、現実的にどのような形でバリューを具現化させていくのかをソフト面からも十分に(かつ迅速に)検討する必要がある。ターゲットは上場企業の場合もあれば、非上場の場合もあるであろう。各々で買収に係る形態、検討事項が異なる部分もある。米国の上場企業の買収は多くのケースで「逆三角合併(Reverse Subsidiary Merger)」という手法で行われる。この点に関しては約1年前にポスティングした「アメリカで三角合併が多用される訳」を参照のこと。

特に米国の小さめの上場企業(= Small Cap)はウォール街のアナリストのカバレッジも少なく、従来より何をしても株価が上がらず苦労しているところも多い。更にSOX法の影響等、上場しているコストが高くなってしまい、変な話、誰かに買収してもらうのを密かに願っているところも多いのではないだろうか。

また、企業による戦略的買収に加え、日本に眠る巨額の個人の貯蓄資産の一部を利用して米国の優良企業を買収しまくる投資ファンドでもできたら面白いと個人的には思っている。

いずれにしてもこのような環境が今後長く続くという保証もなく、戦略的、または投資的に意味あるターゲットが存在する場合には今は買収の絶好のタイミングだろう。

*不況と税務当局

世界的な不況による税収不足は税務当局による調査等のエンフォースメント努力の強化を招く。経済のグローバル化と共にタックス・プラニングも当然グローバル化しているが、それと同時に脱税スキームもグローバル化している。米国内で投資所得を認識すると総合課税の対象となるのを嫌い、米国の納税者が海外を迂回する形で米国に投資をしたり、タックスヘイブン国や匿名口座を利用したアングラマネーの運用、などに対抗するためにIRSはクロスボーダー取引の監視にかなり力を入れている。このトレンドは不況の中さらに強化されていくだろう。特に悪いことをしているつもりのないケースでも調査強化でとんだ「トバッチリ」を受けることもあるので、報告・開示フォーム、源泉税徴収義務、等を中心に再点検が必要となる。

*2008年後半の駆け込み規則

2008年に待望のSec.367(a)(5)の財務省規則がついに完成した点に関しては以前のポスティングで触れたが、2008年後半には他にも話題の規則が押し込み販売かのように発表された。12月最終週だけでも、グローバルでの移転価格を能動的に利用したタックス・プラニングには欠かせない「Contract Manufacturing」、何気ないグループ内再編がとんでもない結果を招くことがある連結納税グループ負債の取り扱いを規定した「-13(g)」(ダッシュ・サーティン・ジーと読む)、そして大晦日にまで僕たちをロックさせた「Cost Sharing」、と「大物」規則が続々登場した。

*そして2009年

と、実に忙しい2008年で2007年に比べるとポスティングの数が減ってしまったが2009年はペースを戻していきたい。上述したが、僕の使命である日本企業が米国で更に躍進していくのをタックスという面からサポートするという目的を忘れずに今年も頑張りたい。よろしくお願いします!