Saturday, May 24, 2008

米国パートナーシップと外国人パートナー(3)

前回のポスティングで外国人パートナーを持つ米国パートナーシップの予定納税義務の概要、その算定に各パートナー側で個別に認識する損失を取り込むことが認められたことに関してまとめた。

最終規則下で、1)どのような外国人パートナーに損失を報告することを認めているのか、2)どのようなタイプの損失が考慮されるのか、3)どのような手順で損失の存在を報告し、どのような条件でパートナーシップは報告を加味してもよいとされているか、と3つの内容を順に検討する。

*どのような外国人パートナーに損失を報告することを認めているか?

パートナーシップに予定納税を強要している目的が最終的に外国人パートナーから税金の取り逃れがないようにということであることから、全ての外国人パートナーの言うがままに予定納税額を減額することは認められない。したがって、規定を利用して予定納税を減額できるのはある程度の「信用」がある外国人パートナーに限定される。

具体的に信用を図る尺度として採択されているのが「過去における米国申告書提出の実績」だ。予定納税の減額を認めるかどうかはパートナーシップにより各パートナー個々に判断される。したがって、複数の外国人パートナーを持つパートナーシップは個々のパートナーの状況次第で各々に対して予定納税の減額を認めるかどうかを決定しなくてはならない。

その決定の第一ステップとなるのが、外国人パートナーが過去にきちんと米国の確定申告書を提出しているかどうかという点となる。この条件を満たさないと予定納税の減額は認められない。なお、パートナーシップ自身が支払う州税に基づく連邦予定納税の減額に関しては若干異なる規定が適用されるが、この点に関しては「どのようなタイプの損失が考慮されるか」のポスティングで触れる。

*過去の申告書提出実績

この申告書提出実績の有無の判断はかなりややこしい。いろいろなパターンの状況を予測して対応するために税法は何を規定するにしても複雑怪奇とならざるを得ないのだろう。

まずここで言う申告書とは米国でのECI、すなわち事業活動を報告したものでなくてはならない。FDAPでECIとならない投資所得に対して源泉税が十分でない等の理由で申告書を提出していても申告書を提出したことにはならない。同様に、FDAPでECIとならない投資所得に対して過多な源泉税が徴収されているようなケースで提出する還付請求の申告書も適格とはならない。さらにECIはないが、もしIRSにECIを認定された際に費用控除を認めてもらうために提出する「Protective Return」もダメだ。

申告実績の判断は「外国人パートナーが米国パートナーシップに対して初めて損失を報告するケース」と「過去にそのような報告をしたことがあるケース」の各々のケースに対して異なる基準で行われる。別のパートナーシップに対して過去に損失報告をした経験がある外国人パートナーは、例え今回報告を行うパートナーシップには初めての報告となるケースでも、過去に報告をした経験があるという取り扱いを受ける。

*初めて損失報告をするケース

初めて損失を報告するパートナーは、それ以前の3年間に関してタイムリーに申告書を提出し、必要な税金を支払っている必要がある。ここでいう「タイムリーな提出」は通常の申告期限を遅れているものも含むことがある。この点は実務的な対応であり寛容である。

具体的には次の通りだ。パートナーシップもパートナーも課税年度は暦年ベースで、外国人パートナーが仮にXXX4年に初めて損失報告して予定納税の減額をリクエストするものとする。また、報告はXXX4年の第一四半期の予定納税(XXX4年4月15日期限)に間に合うよう、XXX4年の3月20日に提出されたものとする。予定納税の減額には過去3年の申告書提出実績が求められることから、XXX1年、XXX2年、XXX3年の申告書の提出実績が必要となる。

米国居住者の申告書は翌年4月15日(法人は3月15日)が期限となるが非居住者申告書は(米国源泉の「給与所得」を受け取っていない限り)6月15日が申告期限となる。さらに延長申請をすれば10月15日(法人は9月15日)が期限となる。

したがってXXX1年の外国人パートナー申告書の通常の提出期限はXXX2年の6月15日で、XXX2年10月15日まで延長が可能だ。しかし、この期間に申告書を提出していなかったとしても、元々の提出期限であるXXX2年6月15日から1年後である「XXX3年6月15日」または「XXX4年に関して損失を報告するタイミング(この例ではXXX4年3月20日)」のいずれか早い時点までに申告書が出ており、かつ必要な税金が支払われていればXXX1年の申告書はタイムリーであったと認められる。この寛大は措置の適用は、延長を考えないもともとの申告書提出期限(この例ではXXX2年6月15日)が、損失報告をして予定納税を減額しようとするパートナーシップの課税年度の開始日(この例ではXXX4年1月1日)より前となるケースに限られる。

XXX2年の申告書も同様の規定が適用される。すなわち、本来の期限であるXXX3年6月15日から一年後の「XXX4年6月15日」または「XXX4年に関して損失を報告するタイミング(この例ではXXX4年3月20日)」のいずれか早い時点までに申告書が出ており、かつ必要な税金が支払われていればXXX2年の申告書はタイムリーであったと認められる。

XXX3年の申告書は本来の申告期限がXXX4年6月15日であり、これは損失報告をして予定納税を減額しようとするパートナーシップの課税年度の開始日であるXXX4年1月1日よりも後となる。その場合にはXXX1年およびXXX2年の申告書に適用された「通常の期限プラス1年」という寛大な措置の適用はなく、通常の申告期限(延長を含む)までに申告書が提出されなくてはならない。すなわちXXX3年の申告書はXXX4年の10月15日(外国人パートナーが法人の場合には9月15日)までに提出されなくてはならない。

損失報告をXXX4年の3月に行う場合には、その時点でXXX3年の申告書は未提出の可能性がある(というかその可能性が高い)。その場合、外国人パートナーはパートナーシップに提出する損失報告時に「XXX3年の申告書の申告期限はいつで、現時点では未提出である」という旨のコメントを提出しなくてはならない。その後実際に申告書の提出が行われた時点で、10日以内にパートナーシップに対して提出に係る報告をする義務がある。万一、パートナーシップによる第4四半期予定納税時点でも外国人パートナーによるXXX3年の申告書提出期限が到来していないようなケースでは、外国人パートナーはその時点で最新の状況をパートナーシップに報告する必要がある。パートナーシップ側では、XXX3年の申告書が提出された、またはまだ提出期限が到来していないという最新報告を第4四半期の予定納税時点までに受け取れない場合には、過去の損失報告はなかったものとして一年間の全額の予定納税必要額を再計算し、差額全額を第4四半期の予定納税額として納付する必要がある。