Friday, December 15, 2017

米国税法改正案「Tax Cuts and Jobs Act」(13)「両院一致法案原文公表・週明けの本会議投票までいよいよ秒読み」

今日2017年12月15日、予定通り両院協議会は先に各々可決されていた米国税法改革上院案および下院案を両院一致法案としてまとめ、その内容を公表した。説明書500ページで法文と合わせると合計1,000ページの大作だ。毎週寝不足。で、内容的にはここ数日の憶測から大きく乖離はないが、実際に両院一致案として改めて公表されてみるとやはり迫力が違う。この一致案は少なくとも両院の共和党指導部プラス大統領府(ホワイトハウス)は全面的に合意している内容で、最後の最後までの交渉で基本共和党議員のほとんどが賛成票を投じるものと推測されている。来週明けにはいよいよ両院各々の本会議で最終投票となり、再度可決される必要があるが、上院はかなりいい方向に行っているものの最後まで予断を許さない。最後までなかなか見せてくれる。

この土壇場で上院Wild Cardの筆頭だったのはMarco Rubio。子女控除の還付可能額が足りないということで、早々に反対票を投じる姿勢を明確にしていた。実はこれには背景があり、上院案の修正過程でMarco Rubioは法人税を20.94%(結構、細かいよね)に上げて、それを財源として子女控除を拡充するという案を提出したが、大差で却下されている。しかし、その後、他の恩典を認めるために法人税率が21%に忍びあがったのを見て、自分の主張する恩典には耳を傾けなかったくせに、と意固地になってしまったというものだ。う~ん、もちろん子女控除還付を数百ドル上乗せするっていうのも立派な主張だとは思うけど、上院案では相当ここに力を入れて既に$2,000の税額控除かつ物価スライド調整まで規定してくれていることを考えると、これが理由で31年振りの税法改革がお流れというのはチョッと不均衡な気がしないでもない。って誰もが感じるだろうから、そこでMarco Rubioおよびその仲間のMike Leeの意見も最後の最後で取り入れて、Child Creditの還付可能額を$1,100から改め$1,400まで拡充した。これで上院可決の見込みは大きく上がったと言えるだろう。

2週間前の上院案決議で反対票を投じた唯一の共和党上院議員のBob Corkerは引き続き財政赤字面での懸念からなかなか賛成と言わずに法文原案を見てから決めたいとしていたが、金曜日の夕方になって満を持した感じで賛成票を投じると宣言した。Corkerは財政赤字が米国の将来に与える影響と経済成長に不可欠と言える米国税法改革を可決させる必要性、のバランスを考えて自分が決定投票件を握っているつもりで臨むと心の内を明かしていた。でも、この「つもり」の部分だけど、他に2人造反が出ると本当に彼がCasting Voteになるのでシャレになっていない表現だったと言える。で最終的には法案には多くの欠点がある一方、米国ビジネスのグローバル競争力アップのため一世代に一度の改革のチャンスを逃す訳には行かないという結論に至ったと決定の経緯を話している。なるほど。上院案の投票時には自分だけが反対、すなわち法案自体は可決されるのを見込んで敢えて反対の意思表示をしていたとも考えられる。ポリティクスは奥深い。

ちなみにCasting Voteと言えば、50・50のタイになった際に決定投票を行うのは副大統領のペンスだけど、ナンと彼は来週のイスラエル訪問を延期して決定投票が必要な局面に備えてDCでスタンバイするそうだ。表向きには「時代が動く歴史的瞬間」をDCで自身の目で見届ける、というようなことらしいけど実はCasting Vote緊急発進のためのスタンバイ目的である点は見え見え。緊迫~。

後はSusan Collins。不動産税の控除が上院案でも認められて今ではすっかりご機嫌かと思いきや、以前から燻っているオバマケアの部分的廃案とも言える、個人に医療保険加入を強制する部分の撤回に未だに難色を示しているようだ。上院多数党院内総務のMitch McConnellとの間で強制を撤回した後の保険料安定のための法案を別途通すという密約(と言ってもみんな知っているので約束だね)をしているということだけど、この手の法案には下院が難色を示す可能性が大で、その辺りのもやもやが残っているんだろう。ただし、冷徹に考えると上院共和党は2票までは票を失っても法案を可決できるのでBob Corkerが「Say Yes」となった段階でSusan Collinsのレバレッジは相当低下したと言わざるを得ない。

パススルー課税の一層の恩典強化を求めていたRon Johnsonだが、パススルー事業所得の23%を非課税とするという案が両院すり合わせ段階で20%に減額されたものの、個人所得税の最高税率区分が37%に落とされた点を評価して賛成に回っているとされる。

賛成、反対の議論とは別だけど、John McCainとThad Cochranの上院議員2名は体調不良で今週は入院中だった。来週の投票に参加できるのかどうか定かではないが、このために本来は上院を通してから下院と言う順序を逆にするかもしれないと言う。さらにそうすれば、上院がいろいろと議論している間に下院が税法改革を通し、22日時点で政府活動停止を避けるための継続予算決議(Funding Bill)にフォーカスできるというメリットもあるそうだ。

と、まだまだ目が離せない状況ではあるけれど、流れは明らかに週明けの可決に傾いているように見える。 で、肝心の両院一致案の規定内容はと言うと、多く面で上院案を踏襲していると言える。すり合わせ段階で加えられたメジャーな修正は次の通り。

まずは法人税。ここ1~2週間のポスティングで触れてきたように最終的には21%で落ち着いている。税率低減のタイミングだけど、最終的には下院案に準じて2018年からとなる。もし来週トランプ大統領の署名にまで漕ぎつけると12月で終わる四半期内のイベントなので財務諸表の処理が大変そう。 Ron Johnsonが頑張ったパススルー課税に関しては上述の通り、個人オーナーが自営業およびS法人を含むパススルー主体経由で認識する事業所得の20%を非課税とする方向で最終化されている。建築家協会等から「僕たちだって雇用を生み出しているのになぜ・・」と抗議の声があがっていたが引き続き人的役務に基づく事業は対象外とされている。法人のAMTは上院案では存続だったが、以前も触れた通り余りよく考えずに温存された経緯があり、最終的には原案通り法人に関してはAMT撤廃となった。

NOLに関しては上院案に近く、2018年および以降の課税年度に発生するNOL繰越期限は廃止され無期繰越が可能になった一方で繰戻は撤廃。下院案にあった毎年NOLの金額に4~6%の金利を付与してくれるという寛容な策は日の目を見ていない。NOL使用額は繰越年度の課税所得80%を上限とするとしている。上院案では元々2023年および以降の課税年度に80%制限だったが、これがいきなり2018年または以降に発生するNOLに適用となるようだ。

設備投資減税は基本上院案を踏襲しているが、中古資産でも納税者にとって新規取得であれば認められるという点は下院案を採択している。

日本企業は米国オペレーションに対するDebt Pushdownを徹底していないので、レバレッジのレベルは他の国からのInboundや米国MNCに比べると相対的にかなり低く、その意味では関心レベルが比較的低かったイメージがあるが、ネット支払利息損金算入制限はやはり気になるところだろう。ネット支払利息の損金算入制限は両院一致案となる前は基本的に2つの異なる規定で強化されていたが一つだけになった。生き残ったのはAdjusted Taxable Income(ATI)の30%を超えるネット支払利息の損金不算入というもの。これは既存のSection 163(j)(従来のアーニングス・ストリッピング規定)を撤廃する代わりに支払先がどこでも関係なく適用するという広範なもので「新」Section 163(j)となる。ATIの定義が下院(=EBITDA)と上院(=EBIT)と異なっていた。最終的には2021年まではEBITDA、以降はEBITとなっている。ちなみにここで言うEBITDAとかEBITのEarningsはBookではなく課税所得から計算を始める金額。損金不算入額は永久に繰越可というのも従来のSection 163(j)と同じだが、過去から繰り越されている旧来のSection 163(j)の未使用支払利息の扱いは未だに不明だ。

もう一つ提案されていた支払利息の損金算入を多国籍企業グループ全世界Debt/Equityレシオに基づき損金算入制限しようとする規定は取り下げられている。なかなか面白い。

国際課税に関しては海外子会社(10%以上投資先)からの配当非課税、すなわちテリトリアル課税制度への移行は既定路線だが、ショッカーなのは制度移行時の未配当原資累積額に対する一括課税率。The Blue Printでは8.75%か3.5%だったのが、財源の関係からどんどん上がりナンと今では15.5%(事業資産に再投資されているケースは8%)。ここは簡単に%を変えるだけで相当な歳入にもなるし、共和党にも余りこの%に固執する議員もいないため「Easy」な財源となってしまったのだろう。8年間の分割納付は可能で、部分的に外国税額控除あり、という点は従来通り。

日本では必要以上に恐れられている観のある多国籍企業グループに対する「Base Erosion Minimum Tax」。幸いなことに下院案に盛り込まれていた大胆な20%ペナルティー課税は日の目を見ていない。で、上院案がほぼそのまま採択されている。この上院案、以前のポスティングではBEMTって勝手に略してたけど、この税法を規定する法文タイトル「Base Erosion and Anti-Abuse Tax」を略して「BEAT」って言うのも最近広く流通している。BEMTって発音し難いけど、BEATだったらゴロがいいからこっちの方が断然勝ちだね。Beatなんて言うとFM Stationみたいで楽しいけど、実は全然楽しくない内容。

このBEAT、簡単に言うと通常の課税所得にBase Erosion Benefitを加算処理して修正課税所得を算定して、それに10%(2026年からは12.5%)を掛けて通常の法人税より高ければ差額をBEATとして納付というもの。最終案では導入年度となる2018年に関してはこれを5%にするという軽減措置が規定されている。で、何がBase Erosion Benefitかと言うとBase Erosion Paymentに基づく損金算入額のこと。Base Erosion Paymentっていうのは米国法人が米国外関連会社にに行う費用項目および資産取得支出。ここで面白いのはInversionしていった法人に対するケースを除き、売上原価は対象外でBase Erosion Paymentに当らないとされている点だ。金利も別途対応されているのでBEAT対象外となることから実質、網掛けの対象となるのはロイヤリティとかサービス費用とかになる。日本企業の場合、保証料なんかを支払っているケースも多いがそれも対象だ。大概のこの手の規定がそうであるように、30%源泉税対象となる支出は対象外となる。それはそうだよね。源泉税が30%のままと言うことは普通の法人税20%より高い税金を既に支払っているんだから。条約で源泉税が低減されている場合には低減相当分額がBase Erosion Payment扱いとなる。で、ここでいう米国外関連会社は、25%株主、25%株主または該当米国法人の50%超の資本関係にある者、又は米国移転価格税制上関連者と扱われる者とされている。

このBEATだけど、先に触れたSection 163(j)と異なり対象は比較的サイズの大きい多国籍企業グループだ。したがって、BEATの適用はグループ売上$500M以上(50%資本関係グループ総額)およびBase Erosion Paymentが全体の費用の4%以上の米国法人(REIT・RICは除外)となる。

最後に所得税で特筆すべきは最高税率の37%への低減、住宅ローン金利個別控除を$0.75M新規取得コストまで容認、不動産税、動産税、州・地方所得税、または売上税を$10Kまで個別控除容認、程度だろうか。法人と異なり個人のAMT撤廃はかなわずそのまま存続となった。共和党が党是として拘り続けた遺産税およびGeneration Skipping Transfer Taxの廃案だけど、結局背に腹は代えられないということで非課税枠を増額しながら存続となった。

さあ、これで後はいよいよ来週前半の本会議最終投票。果たしてDCでスタンバっているペンス副大統領は登場のチャンスのないまま「歴史が動く劇的瞬間」を見届けるだけで済むでしょうか?

Tuesday, December 12, 2017

米国税法改正案「Tax Cuts and Jobs Act」(12)「法人税率は結局21%?そして共和党議席は51に?」

前回のポスティングでは今週がいよいよ31年振りの税法改革可決に向けての天王山ウィークであるというところで終わった。また、タイミング的にはおそらく両院協議による法案の一本化は今週中に終わり、金曜日には最終法文原案が完成され、翌週12月18日から上院そして下院で一致案が決議に掛けられる予定である点にも触れた。

そんな天王山ウィークも早くも2日が終わり明日は水曜日。今日はアラバマ州上院補欠選挙でもある。今夜の速報によると89%開票時点で、民主党候補のDoug Jonesが49.6%の得票で、48.8%の共和党候補Roy Mooreを抑えて勝利宣言間近だそうだ。 え~、ってことは新上院議員が就任してしまうと上院の共和党議席は更にひとつ減って51となる。この選挙の税法改革に与えるインパクトは「米国税法改正案「Tax Cuts and Jobs Act」(9)「いよいよ両院すり合わせ – ここからの展開?」」を参照して欲しい。今日の開票結果を受けて22日には新アラバマ上院議員が就任するというタイミングで、税法改革はますますその前に終わらせておかなくてはならないということだろう。

さて、そんな天王山ウィーク。途中経過を報告するといろんなことがありましてとなるけど、明日の水曜日に形式的に協議会による公聴会のようなものが開かれる。しかしそこで両院すり合わせが行われるかと言うとそんなことはなくて、実際の協議は既に議会議事堂(Capitol)の一階会議室で連日連夜ほぼ秘密裏に行われいる。争点となっているのはBase Erosion Minimum Tax、なんてことは一切なくて、前から言っている通り、個人所得税の州税控除、住宅ローン金利、医療費控除、そしてパススルー課税の低減の拡充、などだ。法人税関係でほぼ唯一議論となってるぽいのは上院案に盛り込まれているAMTの温存策を何とか覆し撤廃に持ち込めないか、という点位かも。後、遺産税も上院案は廃止していないのでイデオロギー的にここも議論されているだろう。

で、前回までのポスティングで散々書いてきた通り、これら諸々の希望を実現させるには財源が必要となる。で、先々週の日曜日に法人税率22%の話しを書いたけど、WSJとかのメインストリームメディアでも20%から22%かそれが問題だ、のような記事が出始めている。その中で興味深かったのはMoody’sが投資家向けに行った説明会で、現時点でのMoody’sのBook上の実効税率は30%程度だそうで、これが1%低減する毎に一株当たり収益が7セントから8セント上がるという試算をしていた。したがって、仮に実効税率が20%になると70セントから80セント一株当たり収益を押し上げる要因となり、全体では$134M~$153Mの収益貢献があるとのことだ。これが22%となると一株当たり収益が14セントから16セント損することとなる計算となる。結構マテリアルな金額だ。

ところがここに来て、20%か22%かという話しではなく、最終的には21%で手を打つという話しも聞こえてきた。州税控除を復活させたり、パススルー課税を更に優遇するのはなかなか困難ということで、その代わりに個人所得税最高税率を37%まで低減して(現上院案38.5%、下院は$1M超は39.6%)、その分の財源を法人税1%アップで穴埋めするという案だ。個人所得税率は元々The Blue Printでは33%と言われていたので、37%でも高いけどね。というのは33%にする代わりに諸々の控除は撤廃してBase Broadeningということだったけど、フタを開けてみたら税率は余り変わらずBase Broadeningという酷い話になっている状態だ。

もうひとつのホットトピックと言える住宅ローン金利控除は下院案と上院案の中間を取って、住宅新規取得ローンの$0.75Mまでに対するものに限定するかもしれないという。$0.5Mと$1.0Mの中間だけど、なんか中学生でもできそうな交渉だね。

一致法案最終化まであと数日。どのようなものが出てくるのでしょうか?

Saturday, December 9, 2017

米国税法改正案「Tax Cuts and Jobs Act」(11)「上院可決から一週間」

この金曜日の夜中でちょうど上院本会議が税法改革の上院案を可決してから一週間となる。あの後、数日東京に行ったりしたせいか、とても長い月日が経過した気がする。先週の金曜日は上院の可決を待って結局夜中の2時まで起きてるはめになったけど、今週はもっと早く床に付けるから安心と思っていたら、いろいろあって実はもっと遅くまで起きているはめに。う~ん。来週後半も数日東京だしチョッとここらでちゃんとした睡眠を取らないとね。

で、この一週間の進展を見てみると、月曜日には早々に下院が両院協議会に参加するメンバーを選抜、上院も週中には正式に任命している。しかし実際の調整はこの前から水面下で熾烈に進んでいる。今日時点の憶測では来週(12月11日の週)はまだ調整に充てられ、両院での投票は翌週明けと言われている。月曜日が18日だから自主的に設定しているに過ぎないとは言え「Drop Dead Date」と言われる22日にかなり近づいていくこととなる。

争点となって炎上しているのは予想通り、個人所得税の州税控除、子女税額控除、医療費控除、と有権者にとって身近なものばかりだ。法人関係で手が付けられる可能性が高いのは上院案のAMT温存案。金曜日の夜に急に数字合わせ的にまずは個人のAMT温存が決まり、そのついでっぽい感じで法人のAMTも温存が決定されたが、拙速に決定されその影響等が余り熟考されていないのは明らか。先週日曜日のポスティング「法人税率は本当に20%?」で触れたけど、従来は通常税率が35%で、AMT税率が20%だったので、確かに「Minimum税」と言えた。しかし通常の税率が20%(22%かもしれない点は前回のポスティング通りだけど)に低減してAMT税率を20%のままキープというのは余りにおかしい。課税ベースはAMTの方が高いケースが多いので、このままだと全法人AMTというような変な状況が想定される。

「どっちでも20%払えばいいからいいじゃん」と思うかもしれないけど、二つ大きな問題がある。まず過去に支払ったAMTのクレジットを使える局面が激減すること。そしてR&Dクレジットのような通常の税金は減らせるけどAMTは減らせないクレジットの使い道が無くなることだ。これらの問題からAMTに関しては両院協議の過程で廃案に戻るのではないかと期待されている。

これら諸々の手当てをする際には当然新たな財源が必要となる。既に規定されている恩典を削ることでも手当はできるが、そんなことでもしようものならようやく取り付けたサポートが台無しになり兼ねない。先週もNYCのトラフィックレポートと同時に書いたけど、そこで噂されているのが法人税率22%という裏技だ。上院案が可決するまでは法人税率は聖域でそこに手を付けるのは禁じ手と考えられていたが、それが先週末に流れが変わった。法人税率は1%上げると歳入が10年で$100B増えると言われているが、22%にする方向が濃厚になると「それでは・・・」ということで「こんな恩典も温存、または追加して下さい」というリスエストが殺到するに決まっている。もう既に来てると思うけど。来週一週間でこれらの難問を解決させ、可決に必要な票を集めるプロセスを終了させないといけない。なかなか大変そうだけど、ここまで来て失敗は許されないだろう。いよいよ天王山ウィーク。

Monday, December 4, 2017

米国税法改正案「Tax Cuts and Jobs Act」(10)「法人税率は本当に20%?」

トランプ大統領がNYCに帰ってくる度にマンハッタンMidtownは交通規制が激しくなって結構迷惑。トランプタワーに自宅があるせいか、なんだかんだ言ってよく帰ってくるし。昨日の日曜日もマンハッタンで3件Fund Raisingのイベントがあるとかで土曜日の夕方からトランプが通る道の両側に鉄の柵が並べられ、その沿道にあるNYCのマークの入った大きなドラム缶のようなゴミ箱が一時的に撤去された。普段気にならないけど、良く見るとMidtownの道には各コーナーに律儀に大きなゴミ箱が設置されているのに気づく。でもその割に道に落ちてるゴミは後を絶たないけど。ゴミ箱が撤去されて一番困るのはワンちゃんのお散歩をさせているオーナーだろう(なんでかは分かるね?)。

NYCのポリスは鉄の柵を並べたり交通規制してドライバーが行きたい方向と逆に車を誘導したりするのが実にうまい。手慣れている理由はしょっちゅう世界のVIPが来る度に大規模な警備に駆り出されている実績だろう。UN Weekと呼ばれる9月初旬の国連総会時には世界中の要人がMidtown Eastに集まる。あの週の大規模な規制も実に手際よくこなしている。

トランプの自宅がある5th Aveと56th Streetのトランプタワーの前の56th側は大統領選に勝利した頃から無期限に車では通れなくなっちゃったし。マンハッタン運転する人なら分かると思うけど56thはMidtownの真ん中から北辺りで真昼間に西から東に抜ける必要がある際のベストなストリートの1つだった。40番台は観光客とかでごった返していて結構混むし、50とか52はRockefellerセンター辺りとかがややこしい。54は比較的まあまあだけどYork Aveに抜けることができる一番南のストリートなので需要が高い。57は14、23、34、42、72たちと同様に両面通行の大きめの道で59thブリッジ入口の関係でPark Aveより東、特にWhole Foodsの前辺りで急に混みだすのが普通。それより上はBloomingdaleとかやっぱり59thブリッジの影響で常にスローな感じ。で、56が登場していたんだけど、そこが5thで遮断されてしまった。で、そんなことは今では分かってるからGoogle MapやGPSが何て言おうとそこを抜けるようなルートは使わないけど、昨日、たまたまWest Villageの方に用があって午後早めに家に帰ろうと6th Aveを北上して来たら、Fund Raisingの会場のせいか、42より北で右折という右折が禁止されていて、右折できないだけでも困ったけど更にそのせいで大変な渋滞が引き起こされてて酷い目にあった。ロサンゼルスで405をOrange Countyとかから北上して家に帰る際、空港手前から急に混んできて、慌てて空港出口経由右のThrough TrafficでLa Cienegaに降りてSlauson経由でMDRに帰ろうと思ったらCienegaの方が混んでたりして損した気分になるのと同じ。

って、本当にどうでもいい話しで多くの紙面を使ってしまったけど、何の話かと言うとFund Raisingに帰って来た時にトランプがその間に報道陣に向かって発した興味深い言葉。歴史的な大減税がいよいよ現実になると豪語した後、「法人税は35%から20%だぜ。まあもしかしたら法案すり合わせして俺がサインする頃には22%位になってるかもしれないし、もしかしたら20%のままかもしれないしな。まあ最終的に何%になるかは見てのお楽しみだね。」とでも訳すことができる発言をしていた。

え~、前は絶対15%って一人で言い張っててUnified Frameworkが公表された後は20%が「俺のナンバー」でそれ以上は受け入れないって明言してたのに。でも、この22%って発言、単なる気まぐれではない。両院で法案を一本化させる過程で「こういう控除を足してくれないと賛成できない」とか言い出す議員が登場するに決まってるけど、問題はその際にこれ以上の財源が見当たらないことだ。予算調整法に基づき今後10年の間に$1.5Tを超える赤字を作り出さないようあの手この手を尽くし、挙句の果てにAMT廃案もあきらめたくらいだからこれ以上絞っても一滴の水も出ない。ちなみにAMT(=20%)が撤廃されず、通常の法人税率が20%に下がるとほとんどのケースでAMTになってしまうのでは、とも思われる点も今後の検討課題だろう。セコイ控除を捻り出せないという理由で30年に一回の税法改革がおジャンになってしまってはたまらん、と、なったタイミングで水戸黄門のように登場するのが法人税率22%だ。この辺りを共和党指導部から打診されてトランプとしてもExpectation Managementをしているのだろう。この2%で最後にMarco Rubioとかが押してるChild Credit拡充に充てるとか十分に考えられる。Child Creditはイバンカが力を入れてるのでトランプも娘に言われては・・となったのかもしれないし。まあ22%でもOECD平均22.5%より下だから及第点とも言え、絶対20%でないとダメという話しでもないけどね。

Sunday, December 3, 2017

米国税法改正案「Tax Cuts and Jobs Act」(9)「いよいよ両院すり合わせ – ここからの展開?」

先週金曜日の夜中過ぎ、午前2時前後に上院本会議を通過し、米国税法改革は31年振りの実現に大きく近づいた。今後の焦点は細かい点で多くの差異がある下院案と上院案の一本化となるが、どんなところが争点となり得るか考えてみたい。

共和党指導部は両院一致案とする過程にそれ程時間を要さないと強気の姿勢を崩していない。本当にクリスマスまでに大統領署名に持ち込むつもりだ。下院は月曜日に上院との一本化協議を担当するチームを正式に任命するとしているし、上院案をそのまま下院が可決すべきと心の中では思っている上院も一応、協議に応じるチームを任命するとしている。下院から見ると上院と一緒に事を進めるのは厄介で「敵は上院にあり」という教訓を口にするものも居るくらいで、ここまで来て喧嘩別れにならないといいけどね。

上院案から余り逸脱してしまうと52議席のうち51議席が賛成に回って可決した上院案の微妙なバランスが崩れてしまうリスクが危惧されるので、最終的にはどちらかと言うと上院案に近いものになるはずだ。細かいところで差異は結構あるとは言え、逆の見方をすれば向かっている方向、赤字容認額等の骨子は同じなので調整可能な範囲内とは言えるんじゃないだろうか。Big-6によるUnified Frameworkが功を奏した(?)のかもね。

共和党指導部が可決を急ぐのはもちろん2018年の中間選挙を見込んだり、今年中に達成するとズッと公言しているという理由もあるけど、実はもうひとつ隠された理由(と言っても僕も知ってる位だから全然隠されてないね)がある。アラバマ州上院議員の補欠選挙だ。アラマバ州上院議員だったJeff Sessionsが司法長官に任命されたため、Luther Strangeが臨時で穴を埋めているが、その後手続き的に紆余曲折あり最終的に2017年12月12日に補欠選挙が開催されることになっている。アラバマはかなり保守色が強い州なので通常であれば共和党が議席を失うことは考え難いが、最終候補者となったRoy Mooreに11月頃から過去における複数のハラスメント疑惑がメディアで報道され、共和党指導部から参選を辞退するような要請があったりして様子がおかしくなっている。もしここで民主党候補のDoug Jonesが勝利でもしようものならただでさえ52議席しかなくて綱渡りしてる状態が更に1議席減って51議席と言う危機的な状況に陥ることになる。更にRoy Mooreと共和党指導部はどちらかと言うと敵対しているので、仮にRoy Mooreが当選しても嫌がらせと言うか既得権への見せしめ的に税法改革に反対するのではないかという懸念もある。ホワイトハウスのブルーベリークイーンのKellyanne ConwayはRoy Mooreは税法改革に賛成だと主張しているけど。何だかどうなるか分からないので余計な面倒を避けるためにはアラバマ州で新上院議員が就任する前に税法改革は片付けてしまいたいということとなる。

具体的な両院の法案内容の差異の中でも、個人所得税の個別控除をどこまで廃止し、何を温存するかは大きな争点だろう。上院案はSusan Collinsを取り込むため、最後の最後になって下院同様に$10,000を上限として不動産税の控除を認めた。一方、住宅ローン支払利息に関しては下院の方が$50万までの新規取得に限定するとしているのに対し、上院案は$100万までで、かつEquity Loan以外はOKと比較的寛大だ。日本から見ていると法人税20%だとかテリトリアル課税だとかが一大事に見えたり、法人税低減のタイミングが一年両院案でズレているので、この辺りのすり合わせに目が行きがちだろう。個人の個別控除はどちらかと言うと些細な変更に見えるかもしれないけど、有権者は皆自然人であり、選挙区の民意動向に敏感な議員たちが気にするのは逆にこの辺りの規定となる。ただでさえ、州や地方の所得税の個別控除廃止で、この手の控除を取っている有権者が多いNY、CA、NJ州の議員はディフェンシブになっているところ、住宅ローン支払利息までも低減されては、という想いが強いだろう。31年振りの大改革が住宅ローン金利の控除範囲に合意できないという理由でお流れになるリスクも十分にある訳だ。日本ではニュースにもならないかもしれないけど扶養子女控除金額なんかもその範疇だ。

次に前回のポスティングでも触れた自営業を含むパススルー経由で事業所得を認識している個人オーナーに対する税負担軽減の部分がどう落ち着くかも見もの。下院案ではパススルーされてくる所得は個人オーナー側で25%で課税されるというストラクチャーとしている一方、上院案ではパススルーされてくる事業所得そのものから23%を控除するという形を取っている。元々この23%は17.4%だったんだけど、Ron Johnsonらの尽力で控除%が上院可決直前に上方修正されている。

The Blue Print以来の外せない聖域かのように見えたAMT廃案が上院ではあっさり可決直前になって取り下げられている。税法の簡素化という観点から見るとこれはかなり逆戻りの感じだけど、Triggerメカニズムが予算調整法に準拠していないという判断が下された瞬間、AMTからの歳入を失う訳にはいかなくなったということなんだろう。オバマケア一部廃案に繋がる個人強制加入の実質撤廃も上院だけの規定だけど、これに反対する下院共和党議員は少ないだろう。

日本企業が恐れていた関連者からの仕入れ、その他の支払いに対する20%ペナルティー課税は幸いにも上院案には規定されていない。以前にも触れた通り、上院のBEMTは下院案に比べるとかなり手緩いというかもう少し普通の規定だ。

という訳で余りにStakeが大きい両院一本化プロセスでした。

Saturday, December 2, 2017

米国税法改正案「Tax Cuts and Jobs Act」(8)「上院も本会議可決(AMT廃案取り下げ)」

今日12月1日夜中過ぎ、上院は数日の駆け引きを経て税法改革法案を51-49で可決した。多数党院内幹事のJohn Cornynらは金曜日朝から可決に要する十分な票を集めたと自信を見せていたので驚きはないけどやはり実際に可決してみるまでは分からない際どいプロセスだっただけに共和党指導部は一安心だろう。下院は先に独自の法案を可決させているので、後は両院一致法案にまとめたものを両院で可決し、大統領の署名という流れとなる。もちろんこれらの手続きがスムースに行くという保証はないが、以前から散々触れている通り、オバマケア廃案に失敗している以上、ここで税法改革も通せないとなるとそもそも何のために与党をしているのかという基本的な疑問を呈されることとなり、可決に対する共和党議員のインセンティブは大きい。

それにしても上院財政委員会を通過した後の水面下での政治交渉は熾烈を極めていた。そのプロセスは議会が休会していたThanksgivingの週も24/7で行われたいたはずだ。

Thanksgivingに突入するタイミングでは複数の潜在的な造反議員が存在していた。何といっても共和党は上院過半数を押さえているとは言え、52議席しかない。100議席の上院を多数決で通すには、ペンス副大統領のCasting Vote(可否同数の場合の決裁権)を考えても3人造反が出てしまうと全てが水の泡と言う際どいところにある。そんな首の皮一枚の状態で、反対票を投じる可能性のある議員が複数いたのだからその説得は慎重かつ熾烈を極めただろう。

潜在的な造反者の反対理由は複数あるが、大別すると法人税が35%から20%に低下するのに比べて小規模事業主に対する手当が十分でないとするRon Johnson、Steve Daines、財政赤字を嫌ういわゆるDeficit Hawk派のBob Corker、Jeff Flakeそして上院案に追加されたオバマケアの一部廃案規定を嫌うSusan Collins、Lisa Murkowski、法制化プロセスの透明性を重要視するJohn McCain、そして予見可能性の低いRand Paul、となる。

まずSch. Cで報告する自営業を含むパススルーから所得を得る個人事業主に対する税負担軽減が法人税低減に比べて十分でないとするRon Johnson一派。Ron Johnsonはこの点を理由に真っ先に法案に反対という態度を表明して世間を驚かせていたが、下院議長でもあり今回の税法改革法案の可決に政治生命を掛けていると言っても過言ではないPaul Ryanと同じウィスコンシン州の議員であることもあり、実際には最終的にRon Johnsonが反対票を投じると信じていた者は少なかったはずだ。投票直前にパススルー所得に対する控除額が増額されてSteve Dainesと共に賛成に回った。

次のDeficit Hawks派だけど、木曜日の段階では財政に与える影響を最小限とするため、経済成長率が予想通りの数値に到達しない場合には自動的に税率が上がるというクリエイティブな「Trigger」というメカニズムを導入することで解決を見たかのようにみえた。ところが上院先例専門委(Senate Parliament)がTrigger規定は予算調整法手続きの要件を充たさないと判断したことから他の方法で歳入を増やすこととなった。この歳入アップのためのイケニエとなったのがAMT廃案取り下げ、また、テリトリアル課税移行時の一時課税率だろう。一時課税率は上院案も結局、下院案よりも高い14.5%(事業資産に再投資されていれば7.5%)に変更されている。結果、Jeff Flakeは賛成となったが、一方のBob Corkerは反対票を投じた唯一の共和党上院議員となった。

オバマケアの個人に医療保険加入を強制する規定の撤廃は実質オバマケアの部分的廃案とも言えるが、これが上院税法改革法案に盛り込まれた点に関して、もともとオバマケア廃案そのものに慎重な態度を見せていたSusan CollinsとLisa Murkowskiは難色を示す可能性があった。Susan Collinsは上院案も下院同様に$10,000を上限に不動産税の個別控除を復活させた点を評価して賛成に、一方のLisa Murkowskiはアラスカ州ノース・スロープ自然保護区の油田開発が税法改革法案に追加されて点を評価(?)して賛成に回っている。みんな結構チャッカリ者な感じ。

そしてオバマケア廃案の最後の試みに引導を渡したJohn McCainだが、今回は財政委員会で法案内容に十分な議論が尽くされた点を評価してこちらも賛成となった。最後に、予算案決議で一人反対票を投じ、自宅の造園(?)で以前からもめていた近所の隣人に襲われて肋骨6本を折ったRand Paul先生も今回は賛成となった。 結局、造反容疑者リストから実際に反対票を投じた議員はBob Corker一名だったことになる。Bob Corkerは投票後に「できれば賛成したかった。両院一致案とする際にもう少し財政面からの配慮が加えられれば最終的には賛成もあり得る」としている。

これで下院、上院の両院で各々の法案が可決。いよいよ両院合同委員会による両院一致法案の作成を残すのみとなった。ここまで来て両院一致化のプロセスでコケないようにね。

Saturday, November 18, 2017

米国税法改正案「Tax Cuts and Jobs Act」(7)「上院も委員会可決」

昨日11月16日、税法改正下院案が本会議を可決した段階で税法改正の当面の手続き的なフォーカスは上院、特に上院財政委員会に移った。Britney Spearsじゃないけど「All Eyes On Us」の気分だっただろう。で、それに応えるように今度はAdeleの「Hello from the Other Side」で、同日、財政委員会で上院案が可決された。

これで後はThanksgiving直後の上院の本会議審議、そこを通過したら両院一致法案化というプロセスを残すのみとなった。法案可決に至る手続き的な話しは「米国税法改正下院案「Tax Cuts and Jobs Act」(5)「上院案骨子公開・下院はついに本会議に」」で詳しく触れているのでそちらを参照して欲しい。

もちろん上院における今後の展開はオバマケア廃案の失敗でも分かる通り予断を許さない。ただ、ここで税法改正も実現できないとなるとなんのために与党をやっているのか分からない、と認識している共和党議員も多いだろうから、何か達成しないといけないというプレッシャーは大きい。気になるのはもう再選を気にしなくていい議員が数名いることだろうか。

下院の歳入委員会同様、財政委員会も最後の最後まで修正案を出し続けていたので本会議に掛かる上院案の姿は分かり難い。下院と異なり、公表される文書が法文原案そのものでなく、中途半端な「Description(説明書?)」というのも我々専門家の立場からすると不親切だ。とは言え、現時点で分かる範囲で日本企業に関係が深そうな上院案の規定をザックリとまとめると次の通り。読んで分かると思うけど、下院案とは結構異なっている。う~ん、あんまり違っちゃってると仮に上院を可決してもその後の両院一致調整に苦労しそう。

まず、法人税率は下院案同様に20%だけど、発効のタイミングが一年遅れて2019年度から。法人税率低減の時間差に代表されるように上院は予算決議調整案の10年間は$1.5Tの赤字OKだけどそれ以降の期間に赤字はダメというByrd規定に敏感なので、歳入減に繋がる複数の規定が時限化されたりしている。パススルーや個人事業から所得認識する個人オーナーに対する課税は下院同様軽減はされているけど、アプローチは異なり、パススルーしてくる事業所得の17.4%を非課税処理するというもの。下院同様に人的役務に基づく事業は対象外とされる。AMTは撤廃。

設備投資減税はほぼ同じで、2017年9月28日から2022年末までに取得される動産事業資産が100%初年度償却対象となる。既存のボーナス償却対象資産に加えて、映画・テレビ・劇場プロダクションを含むと追加で規定された一方、公共ユーティリティ用途資産は対象外とされる。米国製造者控除(Section 199)は予想通り撤廃となる。

現状では期間費用として損金算入が認められている米国内で行われる研究開発費用が2026年より5年償却、米国外で行われている場合には15年償却の対象となる。また、2018年および以降の課税年度に発生するNOLは繰越期限が撤廃される一方、繰戻も撤廃。ここは下院と同じ。NOL使用額は繰越年度の課税所得90%上限。下院と似てるけど上院案は90%の制限に抵触するNOLは2018年および以降の課税年度に発生するNOLのみに見える。この90%制限は2023年および以降の課税年度には更に80%に減額される。

最後まで燻っていた上院独自のCorporate Integrationアプローチに基づき法人の二重課税を是正する方向かと思いきや、全く逆で配当所得に対する法人税低減の恩典を打ち消すため、内国法人が受け取る内国法人配当に対する非課税措置(DRD)を現状の70%(持分20%未満のケース)から50%に、現状80%(持分20%以上80%未満のケース)から65%に減額するとしている。

次に下院案でも話題のネット支払利息損金算入制限だけど、上院案ではAdjusted Taxable Incomeの30%を超えるネット支払利息は損金不算入としている。下院案でもこの「Adjusted Taxable Income」という用語を使用していて似てるけど、定義が異なるので注意が必要。下院の言うところのAdjusted Taxable IncomeはEBITDAだけど、上院のAdjusted Taxable Incomeは利息前の課税所得と規定されている。償却費用を加算できない分Adjusted Taxable Incomeの金額が低くなり、よって制限に抵触し易い。また損金不算入額は下院案は5年繰越だけど、上院案では永久に繰越が認められる。

また、米国多国籍企業グループのネット支払利息を全世界Debt/Equityレシオに基づき損金算入制限するという規定もあるんだけど、説明文書のタイトルを読むと米国に親会社がある場合にのみ適用と書いてある。一方で説明書本文を読むとIncludable Corporationは外国法人も含むとなっている。今回の上院案は未だに法文原案そのものは発表されていないので、米国外の多国籍企業グループへの適用は本当にそうなのかどうか若干不明だ。法文ではないDescriptionという形で公開されているのがひとつの問題なんだけど、不明確な理由は当制限規定目的で「Common Parent」を「Includable Corporation」の一人とみるかどうかという点。Includable Corporationであれば外国法人を頂点とするグループも対象となるかのように見える。この点に関して大元のSection 1504を見ると、Section 1504(a)(1)(A)のAffiliated Groupの定義冒頭部分で「The term “affiliated group” means 1 or more chains of includible corporations connected through stock ownership with a common parent corporation which is an includible corporation」となってる。この表現をもって法解釈的にCommon ParentもIncludable Corporationと考えるのか、それともCommon Parentは別カテゴリーだけどIncludable Corporationの要件を充たした法人しか成れない、と考えるか若干不明確。でもどちらにしてもIncludable Corporationに外国法人も含むとしている以上、米国多国籍企業グループだけでない気もするけど、タイトルは「Denial of deduction for interest expense of United States shareholders which are members of worldwide affiliated groups with excess domestic indebtedness」と言い切っているのでこっちの方が正しい気もするし、どっちとも判断し難い部分がある。

そして今や余り関係ない納税者が多いように思うけど、輸出促進策のDISCおよびIC-DISCはようやく撤廃となる。これらの規定の末裔のSection 199自体が撤廃だからDISCとかが生き残るのはおかしいもんね。

次にクロスボーダー系だけど、海外子会社(10%以上投資先)からの配当は非課税で下院同様にテリトリアル課税制度に移行、更に未配当原資累積額に一括課税となっている。一括課税の税率は上院の方が低くてCash Position部分が10%で、事業資産に再投資されているケースは5%。8年間の分割納付可能で部分的に外国税額控除ありという点は下院と同じ。

で、下院案で日本企業に最も注目されている規定のひとつと言えるExcise Tax(およびみなしPE課税選択)に代わる上院案が「Base Erosion Minimum Tax」というやつ。比較すると上院案の方が優しい気がする。Based Erosion Minimum Taxって長いのでここでは勝手に略して「BEMT」ってしとくけど、このBEMTは米国法人が支払うBase Erosion Paymentが損金算入されている場合(費用または償却)、その金額をBase Erosion Benefitとして、通常の課税所得に加算処理して「修正」課税所得というものを算定する。で、これに10%を掛けた金額が通常の法人税より高ければそちらをBEMTとして支払うという仕組みだ。10年間を超えて赤字になってはいけないという縛りの関係から最後に修正が入り、この10%は2026年からは12.5%に上がることになっている。 このBEMTの対象はREIT・RIC以外の米国C Corporationで、50%資本関係にあるグループ売上が$500M以上、さらに対象米国法人のBase Erosion Benefitが損金算入額総計の4%以上の納税者とされる。

Base Erosion Paymentは米国法人が米国外関連会社に行う費用項目および資産取得支出とされ、マークアップの説明では売上原価は対象外と明記されている。下院は仕入にかかわる支出も特定支出として20%ペナルティー課税の対象なので、この点上院案は対照的で、この差は大きい。ここで言う関連者は25%株主、25%株主または該当米国法人と50%超の資本関係にある者、又は米国移転価格税制上関連者と扱われる者と規定されている。

下院の特定支出同様、30%源泉税対象となる支出は対象外で、条約で源泉税が低減されている場合には低減相当分額がBase Erosion Payment扱いとなる。という訳で下院の20%ペナルティー課税と比較するとかなり合理的。それだけ聞いたら酷いニュースでも、先にもっと酷いニュースを聞いた後に聞くと、グッドニュースかのように聞こえる例の典型かもね。

もう一つ日本企業に影響がありそうなのは、米国でECI・PE事業所得を認識するパートナシップ持分を外国人パートナーが売却する際に、あたかもパートナシップ内部資産の持分相当を売却したかのように扱われ、結果として資産のタイプ次第では、その分パートナシップ持分売却益がECI・PE課税の対象となるというもの。これは以前のポスティング「外国法人による米国パートナシップ持分譲渡・売却」で触れたGMMケースでIRSが主張して裁判所に退けられたRR91-32のポジションを法制化しようとするもの。まあ以前からこの動きはあったので想定の範囲内。RRとかセコイやり方、っていうか行政府が法律を変えるような真似しないで、ちゃんとこうやって立法府である議会が法律を変えてくれたら揉めることもないし反ってスッキリする。

という訳で「All Eyes On Us」の感謝祭直後の上院本会議審議に注目しよう。