Saturday, November 18, 2017

米国税法改正案「Tax Cuts and Jobs Act」(7)「上院も委員会可決」

昨日11月16日、税法改正下院案が本会議を可決した段階で税法改正の当面の手続き的なフォーカスは上院、特に上院財政委員会に移った。Britney Spearsじゃないけど「All Eyes On Us」の気分だっただろう。で、それに応えるように今度はAdeleの「Hello from the Other Side」で、同日、財政委員会で上院案が可決された。

これで後はThanksgiving直後の上院の本会議審議、そこを通過したら両院一致法案化というプロセスを残るのみとなった。法案可決に至る手続き的な話しは「米国税法改正下院案「Tax Cuts and Jobs Act」(5)「上院案骨子公開・下院はついに本会議に」」で詳しく触れているのでそちらを参照して欲しい。

もちろん上院における今後の展開はオバマケア廃案の失敗でも分かる通り予断を許さない。ただ、ここで税法改正も実現できないとなるとなんのために与党をやっているのか分からない、と認識している共和党議員も多いだろうから、何か達成しないといけないというプレッシャーは大きい。気になるのはもう再選を気にしなくていい議員が数名いることだろうか。

下院の歳入委員会同様、財政委員会も最後の最後まで修正案を出し続けていたので本会議に掛かる上院案の姿は分かり難い。下院と異なり、公表される文書が法文原案そのものでなく、中途半端な「Description(説明書?)」というのも我々専門家の立場からすると不親切だ。とは言え、現時点で分かる範囲で日本企業に関係が深そうな上院案の規定をザックリとまとめると次の通り。読んで分かると思うけど、下院案とは結構異なっている。う~ん、あんまり違っちゃってると仮に上院を可決してもその後の両院一致調整に苦労しそう。

まず、法人税率は下院案同様に20%だけど、発効のタイミングが一年遅れて2019年度から。法人税率低減の時間差に代表されるように上院は予算決議調整案の10年間は$1.5Tの赤字OKだけどそれ以降の期間に赤字はダメというByrd規定に敏感なので、歳入減に繋がる複数の規定が時限化されたりしている。パススルーや個人事業から所得認識する個人オーナーに対する課税は下院同様軽減はされているけど、アプローチは異なり、パススルーしてくる事業所得の17.4%を非課税処理するというもの。下院同様に人的役務に基づく事業は対象外とされる。AMTは撤廃。

設備投資減税はほぼ同じで、2017年9月28日から2022年末までに取得される動産事業資産が100%初年度償却対象となる。既存のボーナス償却対象資産に加えて、映画・テレビ・劇場プロダクションを含むと追加で規定された一方、公共ユーティリティ用途資産は対象外とされる。米国製造者控除(Section 199)は予想通り撤廃となる。

現状では期間費用として損金算入が認められている米国内で行われる研究開発費用が2026年より5年償却、米国外で行われている場合には15年償却の対象となる。また、2018年および以降の課税年度に発生するNOLは繰越期限が撤廃される一方、繰戻も撤廃。ここは下院と同じ。NOL使用額は繰越年度の課税所得90%上限。下院と似てるけど上院案は90%の制限に抵触するNOLは2018年および以降の課税年度に発生するNOLのみに見える。この90%制限は2023年および以降の課税年度には更に80%に減額される。

最後まで燻っていた上院独自のCorporate Integrationアプローチに基づき法人の二重課税を是正する方向かと思いきや、全く逆で配当所得に対する法人税低減の恩典を打ち消すため、内国法人が受け取る内国法人配当に対する非課税措置(DRD)を現状の70%(持分20%未満のケース)から50%に、現状80%(持分20%以上80%未満のケース)から65%に減額するとしている。

次に下院案でも話題のネット支払利息損金算入制限だけど、上院案ではAdjusted Taxable Incomeの30%を超えるネット支払利息は損金不算入としている。下院案でもこの「Adjusted Taxable Income」という用語を使用していて似てるけど、定義が異なるので注意が必要。下院の言うところのAdjusted Taxable IncomeはEBITDAだけど、上院のAdjusted Taxable Incomeは利息前の課税所得と規定されている。償却費用を加算できない分Adjusted Taxable Incomeの金額が低くなり、よって制限に抵触し易い。また損金不算入額は下院案は5年繰越だけど、上院案では永久に繰越が認められる。

また、米国多国籍企業グループのネット支払利息を全世界Debt/Equityレシオに基づき損金算入制限するという規定もあるんだけど、説明文書のタイトルを読むと米国に親会社がある場合にのみ適用と書いてある。一方で説明書本文を読むとIncludable Corporationは外国法人も含むとなっている。今回の上院案は未だに法文原案そのものは発表されていないので、米国外の多国籍企業グループへの適用は本当にそうなのかどうか若干不明だ。法文ではないDescriptionという形で公開されているのがひとつの問題なんだけど、不明確な理由は当制限規定目的で「Common Parent」を「Includable Corporation」の一人とみるかどうかという点。Includable Corporationであれば外国法人を頂点とするグループも対象となるかのように見える。この点に関して大元のSection 1504を見ると、Section 1504(a)(1)(A)のAffiliated Groupの定義冒頭部分で「The term “affiliated group” means 1 or more chains of includible corporations connected through stock ownership with a common parent corporation which is an includible corporation」となってる。この表現をもって法解釈的にCommon ParentもIncludable Corporationと考えるのか、それともCommon Parentは別カテゴリーだけどIncludable Corporationの要件を充たした法人しか成れない、と考えるか若干不明確。でもどちらにしてもIncludable Corporationに外国法人も含むとしている以上、米国多国籍企業グループだけでない気もするけど、タイトルは「Denial of deduction for interest expense of United States shareholders which are members of worldwide affiliated groups with excess domestic indebtedness」と言い切っているのでこっちの方が正しい気もするし、どっちとも判断し難い部分がある。

そして今や余り関係ない納税者が多いように思うけど、輸出促進策のDISCおよびIC-DISCはようやく撤廃となる。これらの規定の末裔のSection 199自体が撤廃だからDISCとかが生き残るのはおかしいもんね。

次にクロスボーダー系だけど、海外子会社(10%以上投資先)からの配当は非課税で下院同様にテリトリアル課税制度に移行、更に未配当原資累積額に一括課税となっている。一括課税の税率は上院の方が低くてCash Position部分が10%で、事業資産に再投資されているケースは5%。8年間の分割納付可能で部分的に外国税額控除ありという点は下院と同じ。

で、下院案で日本企業に最も注目されている規定のひとつと言えるExcise Tax(およびみなしPE課税選択)に代わる上院案が「Base Erosion Minimum Tax」というやつ。比較すると上院案の方が優しい気がする。Based Erosion Minimum Taxって長いのでここでは勝手に略して「BEMT」ってしとくけど、このBEMTは米国法人が支払うBase Erosion Paymentが損金算入されている場合(費用または償却)、その金額をBase Erosion Benefitとして、通常の課税所得に加算処理して「修正」課税所得というものを算定する。で、これに10%を掛けた金額が通常の法人税より高ければそちらをBEMTとして支払うという仕組みだ。10年間を超えて赤字になってはいけないという縛りの関係から最後に修正が入り、この10%は2026年からは12.5%に上がることになっている。 このBEMTの対象はREIT・RIC以外の米国C Corporationで、50%資本関係にあるグループ売上が$500M以上、さらに対象米国法人のBase Erosion Benefitが損金算入額総計の4%以上の納税者とされる。

Base Erosion Paymentは米国法人が米国外関連会社に行う費用項目および資産取得支出とされ、マークアップの説明では売上原価は対象外と明記されている。下院は仕入にかかわる支出も特定支出として20%ペナルティー課税の対象なので、この点上院案は対照的で、この差は大きい。ここで言う関連者は25%株主、25%株主または該当米国法人と50%超の資本関係にある者、又は米国移転価格税制上関連者と扱われる者と規定されている。

下院の特定支出同様、30%源泉税対象となる支出は対象外で、条約で源泉税が低減されている場合には低減相当分額がBase Erosion Payment扱いとなる。という訳で下院の20%ペナルティー課税と比較するとかなり合理的。それだけ聞いたら酷いニュースでも、先にもっと酷いニュースを聞いた後に聞くと、グッドニュースかのように聞こえる例の典型かもね。

もう一つ日本企業に影響がありそうなのは、米国でECI・PE事業所得を認識するパートナシップ持分を外国人パートナーが売却する際に、あたかっもパートナシップ内部資産の持分相当を売却したかのように扱われ、結果としてECI・PE課税の対象となるというもの。これは以前のポスティング「外国法人による米国パートナシップ持分譲渡・売却」で触れたGMMケースでIRSが主張して裁判所に退けられたRR91-32のポジションを法制化しようとするもの。まあ以前からこの動きはあったので想定の範囲内。RRとかセコイやり方、っていうか行政府が法律を変えるような真似しないで、ちゃんとこうやって立法府である議会が法律を変えてくれたら揉めることもないし反ってスッキリする。

という訳で「All Eyes On Us」の感謝祭直後の上院本会議審議に注目しよう。

Thursday, November 16, 2017

米国税法改正下院案「Tax Cuts and Jobs Act」(6)「下院ついに本会議可決」

先週木曜日に歳入委員会によるマークアップが終了し本会議審議に入っていた下院税法改正案が今日、227対205で可決された。採決に先立ちアジアからDCに戻って間のないトランプ大統領はDCの国会議事堂(Capitol)の地下にある会議室HC-5で下院共和党議員に最後の念押しをしたと言われる。トランプ大統領が念押しをするまでもなく可決は事前の票読みに基づきここ数日既定路線になっていたと言える。そのせいか今のところオバマケア廃案が下院を通過した際に見られたようなホワイトハウスの庭における下院共和党指導部と大統領の集合写真大会のような企画は未だ見ていない(これからかもね)。Paul RyanやKevin Bradyはこれで一安心だろう。ちなみに予想通り民主党議員は全員反対票を投じている。ということは13人の共和党議員も反対票を投じたことになる。おそらくNY州、NJ州、CA州の州税控除反対チームだろう。下院の可決には最低218票必要なので、今回は9票それを上回っている。

これで又一歩31年皆が慣れ親しんだ「Internal Revenue Code of 1986」に別れを告げて「Internal Revenue Code of 2017」が実現する日が近づいた。だけどまだまだ油断大敵。ウィスコンシン州上院議員のRon Johnsonはパススルーに対する恩典が少ないという理由で現状の上院案には反対表明している。他にもオバマケア廃案で反対票を投じた複数の反対票予備軍というか容疑者がいるが、John McCainは今のところ反対とは言っていない様子。オバマケア廃案の最後の試みに引導を渡したアラスカ州上院議員Lisa Murkowskiも今のところ比較的ポジティブ。一部にはLisa Murkowskiが推進しているアラスカ北部のノース・スロープ自然保護区の油田開発関係の法案が税法改正に関連して認められる可能性がある点が影響しているとも言われている。いろいろとポリティカル。 上院案は未だ委員会でマークアップ中なのでどのような姿に落ち着くか現時点で余り詮索しても仕方がないんだけど、可決された下院案は歳入委員会を通過する際にギリギリで複数の修正が入り、最終的な形が一体何だったのか若干分かり難い。日本企業に関心が高いと思われる法人税、国際課税周りの最終的に採択された規定をザックリと復習しておくと次の通り。

まず、法人税率を2018年課税年度より20%にするという点は誰もが知るところ。上院案だと現時点で適用が一年遅れるとなっている。どちらの案も法人税率20%は恒久措置だ。予算関係で赤字幅に敏感な上院案では代わりに個人所得税の恩典の多くが10年後に失効するようになっている。

そしてAMTはようやく撤廃。ここで面白いのは過去からのAMTクレジット繰越額の結構寛容な扱い。2018年および以降の課税年度では、基本的に通常法人税額と相殺が認められる。AMTが存在する現状では、通常税額がAMT税額を超える分しか使用が認められない。まあ、AMT自体が無くなるので、現状の計算はもちろん成り立たないけど。で、更に凄いのが還付規定。なんと2019年から2021年課税年度では各々の時点で残っているAMTクレジット未使用額の50%まで還付可とされ、それでも残っているAMTクレジット未使用額は2022年課税年度に全額還付が認められる。

設備投資減税は既存のボーナス償却を拡充する形で実現。2017年9月28日から2022年末までに取得される特定の事業資産に100%初年度償却が認められる。現状のボーナス償却と異なり納税者にとって新規取得であれば中古資産でもOKとされている。

NOLに関しても結構大きな改正がある。2018年および以降の課税年度に発生するNOLに関しては繰越期限が撤廃される一方で繰戻も撤廃。この規定には小規模事業や災害損失に関して一部免除がある。更に意外にみんなにとって痛いかもしれないのは2018年および以降の課税年度のNOL使用額が繰越年度の課税所得90%に上限されること。現状のAMT規定に似ている。で、下院案に基づくと過去から繰り越されているNOLにも使用が2018年またはそれ以降だとこの90%制限に抵触するように見える。上院は同じく90%(2024年からは80%)制限が審議されているけど、あくまで2018年および以降の課税年度に発生したNOLが対象のようだ。また下院案では2018年および以降の課税年度に発生するNOLに対して毎年繰越額に「短期AFR+4%」の金利を付けて増額させてくれるようになっている。上院案にはこの増額は不在。

特別な控除関係だとR&Dおよび低所得者住宅税額控除、一部のエネジー関係控除は温存されるものの米国製造者控除(Section 199)を含む多くの他の恩典は撤廃となる。

The Blueprint時代から注目度の高いネット支払利息の損金算入制限は二つの新設規定で実現されている。まず、全事業主に適用される新設Section 163(j)。The FrameworkではC Corporationと他の事業主を区別して議論していたので、下院最終案はチョッと意外な感じ。で、小規模事業、不動産・ユーティリティー業など一部の業界を除き、EBITDAの30%を超えるネット支払利息損金は不算入となる。この規定で面白いのは、後述の多国籍企業に対する更なるネット支払利息に対する制限規定と異なり、米国連結納税を行っている内国法人グループにかかわる規定が不在な部分。文字通り読むと(法文なので文字通り読まないといけないけど)個社レベルで適用があるように見える。損金不算入額は5年繰越可となり、長年日本企業が慣れ親しんだ既存のアーニングス・ストリッピング規定(163(j))は撤廃。

多国籍企業グループに属する米国法人(または米国支店)に関してはもう一つネット支払利息損金算入制限が規定された。この対象の決定方法が面白くて、Section 1504や1563という通常の税法上のグループ規定を用いるのではなく、米国法人および外国法人を含む連結財務諸表を作成している多国籍企業グループ、と会計原則を基準としている。グループ売上が3年平均で$100M以下の場合は対象除外。で、前述の通り、この規定の目的では米国連結納税を行っている内国法人グループはまとめて一社扱いと明言されている。この規定が適用となると全世界グループネット支払利息(会計ベース)をEBITDAレシオで米国法人に配賦し、米国法人ネット支払利息(会計ベース)と比較して損金算入可能%算定。もちろん米国の方が低ければ100%となり問題はないが、米国多国籍企業は通常グローバル全ての借り入れは徹底して米国法人のみで認識しているので、ここで100%となるケースは彼らの場合にはないに近いだろう。で、ようやくここで税務ベースの米国法人ネット支払利息が登場。米国税務ベースで当制限考慮前の段階で損金算入できる金額に110%乗じて、そこに先に計算した損金算入可能%を乗じた金額が損金算入額上限。エクセルがないとチョッと難しいね。こちらも損金不算入額は5年繰越可。

前述のEBITDA30%制限下と比較し制限額が大きい方、すなわち納税者から見て不利な方の規定を適用することとなっている(それはそうだよね)。

で、次に国際課税関係だけど、海外子会社(10%以上投資先)からの配当が非課税になり、世の中のトレンドに超遅れてようやくテリトリアル課税制度に移行。ただしタダでは移行させてくれない。2017年11月2日または12月31日時点どちらか大きな未配当原資累積額に一括課税される。税率も以前は3.5%だの8.75%だのと言われていたけど、フタを開けてみると結構高く、委員会最終修正後は何と14%。Cash Position以外の事業資産に再投資されているケースは7%に低減される。Cash Positionの決め方も変な操作やゲームを許さないという覚悟がありありで、2017年度の期首、期末、そして2017年11月2日の3時点の平均で決定するよう規定されている。委員会の議員も良く考えるね。で、海外に巨額の埋蔵金をため込んでいる米国企業にとってはとてつもない負担額となるケースもあるので8年間の割賦払いが認められる。また部分的に外国税額控除が認められる。

そして、何と言っても一瞬日本企業を震撼させた20%ペナルティー課税。米国法人(または外国法人の米国支店)がIFRG内の米国外関連会社に行う「特定支出」に法人最高税率(法改正後は20%)でペナルティー課税するという衝撃的な規定だ。でも実際にはこれを払う法人はないであろうことは以前のポスティング「米国税法改正下院案「Tax Cuts and Jobs Act」(3)「輸入に対する20%ペナルティー課税」」で触れているので詳しくはそちらを参照して欲しい。

IFRGとはInternational Financial Reporting Groupの略で連結財務諸表を作成している多国籍企業グループ。前述の多国籍企業グループに対するネット支払利息の損金算入制限でも出てきた財務諸表ベースの判断だ。Section 1504や1563ベースでない点は個人的にはとても違和感がある。ちなみに上院側の姉妹規定とでも言うべき「Base Erosion Minimum Tax」はSection 267すなわち基本的にSection 1563の50%バージョンと25%株主基準なのでこちらの方が税法的には普通な感じ。

何が特定支出かと言うと費用項目ばかりでなく棚卸資産の仕入れを含む資産取得コストも含まれるというから凄い。例外は支払利息、コモディティ・債券取得コスト、マークアップなしのサービス費用。また特定支出が3年平均で$100M以下のケースは適用除外だ。更に、特定支出でも受け手の外国法人がECIとして申告していたり、30%源泉税対象となっていたりする支出は対象外。源泉税が条約で低減されている場合には低減相当分額が特定支出扱いになるとされている。ちなみにこの20%ペナルティー課税は法人税算定目的で損金不算入とされているからその厳しさは徹底している。

で、ここからが当規定の神髄だけど、外国法人が特定支出を米国事業所得(ECIまたはPE帰属所得)として申告課税扱いする選択が可能となっている。ネット申告が認められるのでこちらの方が金額的には断然有利。費用実額は損金不算入とされているが「みなし費用」控除が認められる。このみなし費用は全世界グループの該当プロダクトラインの会計上の米国外利益率(金利・税金前)を基に算定するってなってるけど、そんな計算どうやってするんだろう?一瞬みなし経費に104%+短期AFRを掛けてよろしいという修正があったが、歳入不足に気づいて直ぐに取り下げられた。最初から分かってたと思うんだけど立法プロセスって不思議。また外国税額控除も財務諸表ベースの実効税率と修正されたかと思うと最後の最後で本当に計算する外国税額控除となった。特定支出に対する外国の税金80%を上限と規定されている。その上で更に普通のSection 904の上限計算をするんだろうか。そんな計算できるのかな。そもそも特定支出が米国源泉のケースもあり、それだけでは控除枠は存在しないこともあるだろうし。

という訳で共和党下院指導部にとってはようやく有権者に顔向けできない辛い日々が過去のものになるかもしれない重要な一日でした。

Saturday, November 11, 2017

米国税法改正下院案「Tax Cuts and Jobs Act」(5)「上院案骨子公開・下院はついに本会議に」

「やればできるじゃん!」という感じで下院歳入委員会も上院財政委員会も31年振りに大活躍して税法改正のプロセスをSpeed of Lightで進めた一週間だった。まさしくA Hard Day’s Nightそのもの。Working like a dogって気分だろうけど、まだまだSleeping like a logとはいかない現実は厳しい。このペースを少なくとも今後数週間は続けないと今年中の可決はできない。また法案の内容的にも十分な共和党票が集まるという保証もない。全然簡素化にも法人以外は減税になってない感じで一体全体何のためにこれだけの改革をしているのか分からなくなってきた観もある。

内容はともかく、「法手続き」的には予算決議に税法改正にかかわる財政調整措置が盛り込まれてからここまでの財政調整法としての立案、審議はビックリする程オンタイムだ。この辺り日本の方にはプロセス自体が分かり難いと思うので、手続き面を簡単におさらいしておくと次の通り。

米国では法律は議員立法が基本で、下院では単純過半数、上院は議事妨害(フィルバスター)を乗り切るため実質100票中60票で法案を可決することができる。例外は年一回の予算決議(Budget Resolution)の際に「こういう法律をいくらの歳入または歳出の範囲で策定しなさい」という指示に基づいて立法される財政調整措置(Reconciliation)。この財政調整措置が予算決議に盛り込まれると、財政調整法として上院も下院同様に「過半数」で通すことができる。上院100議席のうち共和党が52議席で、民主党は全員なんでも反対という典型的な野党となっているので60票は夢の夢。したがって税法改正も財政調整案として通すしか手段はない。ただ、上院の過半数というのもなかなか難しいのはオバマケア廃案で白日の下に晒された事実だ。この辺りは過去に散々触れているからいいね。予算決議に基づくこの簡便手続きは、決議に具体的な調整措置が明記されないと発動されない。

で、今年度の予算決議では「$1.5Tまでの赤字増となってもいいから税法改正法を財政調整法として通しなさい」という調整措置が盛り込まれ、それを受けてまずは担当委員会を構成する議員が法案を通す。で、税法は下院では歳入委員会、上院では財政委員会の管轄なので、各々の委員会が法案をドラフトし、その後、委員会の中でマークアップという修正が繰り返される。これが今週、歳入委員会がやっていた手続きで例の20%ペナルティー課税のECI選択した際の計算が紆余曲折した理由だ。最終的には委員会として最終法案を可決して、その後、院のFloorで審議される。これが本会議審議となり最後に票を投じて可決するかどうか決まる。木曜日に歳入委員会は法案を可決しているので、来週明けから(金曜日は連邦の休日らしく)下院本会議審議となる。来週中には余り多くの修正なく下院を通過するであろうと言われている。

一方、上院は木曜日に「説明文書」を公開したが、法案そのものは未だ見ていない。おそらく月曜日に法案が公開され、財政委員会がマークアップを繰り返し、12月頭には委員会として可決、直後に上院本会議審議となる。下院と上院が異なるバージョンを可決するので、最後は二つをすり合わせして両院一致法案に取りまとめないといけない。この作業はいくつかのロードマップが想定されるが、まずはJoint Committeeが双方の法案を一つにまとめるやり方。または上院バージョンを下院が取り上げ、その修正を受けてそれを上院が取り上げ、というピンポン方式もある。または予算決議がそうだったように上院バージョンそのものを下院が可決してしまうという離れ業もあり得る。いずれにしても両院一致法案は両院で再度可決される必要があり、それができて初めて大統領の署名に行きつく。

大統領は法案全体に署名するか、拒否権(Veto)を発動するかのチョイスがあるが、法案の一部をVetoするLine Item Vetoは確か連邦では憲法違反という最高裁(だっけ?)の判例があり認められないはず。なので個別の規定が気に入らないからと言ってそこだけVetoすることはできない。また、大統領が10日間何もしなくて、議会が散会していると自然に法案が失効してしまうPocket Vetoという流れもあるが、今回は法案が両院を通過すれば大統領は署名するだろう。これが12月31日とかだと、米国企業のQ4、多くの日本企業のQ3の決算は新法の影響を加味しないといけないのでお正月がA Hard Day’s Nightになりそう。

という流れで下院は歳入委員会が修正後の法案を可決した訳だけど、最後にまた委員長Kevin Bradyの修正の修正が入った。最初の修正で赤字許容範囲の$1.5Tを超過してしまったので、その穴埋めで、まずはナンとテリトリアル課税移行時の一括課税の税率が12%から14%(現預金部分)、5%から7%(資産再投資部分)に増額。そして日本企業も関心が高い例の20%ペナルティー課税規定のみなしPE課税選択時のみなし経費に104%+短期AFRを掛けてよろしいという規定が僅か3日の短命で取り下げ。更にFTC算定法が変更となった。前回の修正では連結財務諸表に基づいて算定した実効税率の半分または20%のいずれか低い方の税率に基づいてみなしFTCを取る代わりに従来の本当の計算に基づくFTCは認めないというような規定になっていたけど、最終案では従来からECIに対して認められるFTCが80%まで認められるような規定に生まれ変わっている。ただしその際に従来であれば米国源泉所得に対する外国税金は外国法人が居住地で居住者という理由で全世界課税されるケースを除いてFTCの対象ではないとか、難しい規定があるが、それは無視しなさいとされている。難しいけど、本当はPEでもないのにPEにさせておいてそこに帰属する外国税金の金額を確定させ、それに80%を掛けて後は通常の制限枠を上限にクレジットというような流れになるのだろうか?不思議。

他にもR&D経費が将来的に5年間の償却となり、一括費用計上が認められなくなるとかいう規定も急に盛り込まれている。

一方、上院案はなぜか法文原案は公開されていない状態で「Description」という説明文?とでも呼ぶべき文書がJoint Committeeにより木曜日に公表されている。法文でないので良く分からない部分も多いが20%ペナルティーの代わりに「Base Erosion Minimum Tax」という新たな税金が規定されている。下院の20%ペナルティー課税と趣旨は同じだけどアプローチは全く異なる。

法文も出てないので余り詳細に話しても意味ないけど、50%超の海外関連者、25%の米国外親会社またはその関連者、等に支払う費用、資産取得支出、(おそらく)売上原価(これは条文みないと含まれるかどうか若干不確実)を加算処理して出てきた調整後課税所得に10%を掛けて、通常の税金より高ければそれがBase Erosion Minimum Taxになるというような仕組みらしい。

上院のものは他にも下院とは異なる点盛りだくさんだけどそれはそのうち。

Wednesday, November 8, 2017

米国税法改正下院案「Tax Cuts and Jobs Act」(5)「輸入に対する20%ペナルティー課税(続き2)」

前回、前々回、20%ペナルティー課税(Excise Tax)を武器に外国法人にみなしPE課税申告させる下院法案に関して触れた。この下院案が発表された後、月曜日夜に歳入委員会の委員長であるKevin Bradyによるマークアップ(修正案)が提出され可決された。この中に20%ペナルティー課税にかかわる重要な変更があったので簡単にまとめておきたい。

まず一番大きな変更はみなしPE課税に基づく米国税負担を算定する際、オリジナル下院案では認められないとされていた外国税額控除が認められることになった点。これは大きい。ただし、この税額控除は特定支出に対する実際の外国税金を基に算定するのではなく、みなし費用同様に、International Financial Reporting Group (IFRG)全体の外国法人税の実効税率に基づいて計算する。具体的にはIFRGが米国外で認識する外国法人税額を基に財務諸表上の実効税率を算定し、その半分または税率20%のいずれか低い方をみなし外国税金として控除を認めるというもの。みなしPE課税時の米国税率は下院案だと20%なので、財務諸表上の外国税金実効税率が40%以上であれば、外国税額控除でみなしPE課税全額が相殺されることになる。仮に財務諸表上の外国税金実効税率が30%だと、その半分の15%が20%より低いので、15%相当の外国税額控除が認められ、結果としてみなしPE課税は20%から15%を差し引いて5%となる。

もうひとつ面白い変更は「みなし費用」に基づく費用控除額。以前のポスティングで触れた通り、みなしPE課税算定時には実際に特定支出に基づく費用計上は認められない。代わりにIFRGの連結財務諸表上の該当プロダクトラインの利子・税引前の利益率を基にみなし費用を算定すると規定されていた。今回の修正案では、みなし費用の算定時に、米国オペレーションは除外して算定するようになっている。書き方は複雑で、IFRGの米国以外の法人が非関連者および米国グループ法人との取引から認識する利益率を基にすることと規定されている。そもそもプロダクトライン毎のPLなんてないじゃん、っていうのは以前に触れた点だけど、更に外国と米国を分けたりとか実務的には対応が益々困難になっている感じ。

さらに、前述の方法で算定したみなし費用に「104%+短期AFR」を乗じて費用総額としてよろしいとなっている。趣旨としてはRoutine Returnには課税しないということなんだろうけど、現時点の短期AFRは1.27%だからみなし費用が5.27%増えることとなる。となるともしプロダクトラインの利益率が5%とかだとネットで赤字になってしまう?ネットで損失だと1120FでNOLが生まれ、新法に基づき永遠に繰越できて本当にPEとかからフローアップしてくる所得と相殺できたりするんだろうか?それともみなしPE課税は基本的に関連者間取引から発生している損失なので、認識は認められずNOLにはならないのだろうか?良く分からない感じ。

でもFTC認めたり、費用に5%上乗せしたりした結果、結局元は$150B以上あると言われていた歳入もほとんどなくなってしまうようだ。であればそこまでしてこんな変な税法を入れる理由も余りなくなるんではないだろうか?

この20%ペナルティー課税規定はInbound企業ばかりでなく米国多国籍企業を直撃するので反対意見も多く出てくるだろう。既に共和党内で大きな影響力を持つFreedom Caucusの支持団体の一つとなるKoch Brothersが当規定に反対表明している。下院での可決可能性はかなり怪しいと言わざるを得ない。

テクニカルにもみなしPE課税の算定の際にBranch Profits Taxをどうするのか不明だし、どのような迂回取引がAnti-Abuseに抵触するのかという判断も難しいだろう。現時点のグッドニュースとしては外国税額控除が認められることになれば仮に20%ペナルティー課税が法制化されたとしても実際に支払う米国税金の面からのコストは結構低くなりそう、という点だろう。

Sunday, November 5, 2017

米国税法改正下院案「Tax Cuts and Jobs Act」(4)「輸入に対する20%ペナルティー課税(続き)」

前回のポスティングで、米国法人(または支店)が外国関連法人に支払う特定支出に20%ペナルティー課税が規定されている点、そしてこのペナルティー課税を本気で支払う納税者が居るとは誰も考えていないと思われ、実質、外国法人に「自ら」みなしPE申告課税を選択させる単なるメカニズムでしかない点に触れた。

ちなみに言い忘れる前にみんなが安心するかもしれない条件を一つ。それはこの規定が適用されるのは特定支出が3年平均で年間$100M超のケースのみという「少額?」免除が規定されている点だ。仕入れとかを親会社からしているとこの金額は超えてしまうことが多いだろう。

申告課税選択だけど、法案では、もし外国法人がそう望むのであれば米国法人レベルでの20%課税(しかも損金不算入)の代わりに、特定支出を受け取る側の外国法人が特定支出に関して申告課税を選択することができると規定している。読んだ瞬間から考えていたけど、この選択をしない納税者はいるんだろうか?申告課税とすれば(後で触れる)「みなし経費」を差し引いたネット所得に20%支払うんだからコストなしの特殊な取引のケースを除いて全納税者がみなしPE課税を選択するだろう。

具体的には、外国法人が自らそう選択する場合、当外国法人は米国事業に従事しており更にPEをも有していて特定支出はECIおよびPE帰属所得とみなすと規定されている。単にECIとみなすだけで終わっていないのは、当選択をした上で租税条約のPE条項を使って実質課税なしとするポジションに網を掛けるためだ。日本企業にとっては通常はECIというよりもみなしPE課税となる部分で課税となるので、ここからは便宜上、みなしPE課税と呼んでおく。

で、ここで面白いのは、申告課税する際に通常認められるPEに帰属する所得に対応する、所謂AOA的な費用控除は認めない代わりに法案が規定する「みなし経費」を差し引いてネット所得を算定することになっている点だ。みなし経費の算定は特定支出が属する「プロダクトライン」にかかわる全世界ベースの連結財務諸表の利子・税引前の利益率に基づいて行うとなっている。「え~、会計上の利益?」ってチョッと不思議だけどまさか全世界の計算を米国課税ベースに組み換えする訳にもいかないのでこのようなこになっているんだろう。

でもそう言われても、連結財務諸表には個々のプロダクトラインの利益率なんか載ってないんじゃないかと思うけど、どうやって算定するんだろうか。費用の配賦とかが争点となりそうな気がする。

会計と言えば、この20%ペナルティー課税およびみなしPE課税選択の対象となるのは金利のところで触れたIFRGというグループだけど、このIFRGは連結財務諸表を作成しているグループだと規定されている。だったら連結財務諸表の作成を止めてしまったらIFRGにならないの?、とか不思議。通常はSection 1563のControlled Groupとか(今では風前の灯の)Section 385がExpanded GroupをSection 1504にSection 318のAttributionを加えて定義していたように税法ベースの定義になるのが普通だけど、今回の下院案は会計の連結有無で決めている。ということは通常この手の規定で分かれ道となる80%持分ではなく、会計上の50%超その他の支配権等で結ばれているだけでIFRGになってしまうということになる。なんか変わった規定だ。

米国税法改正下院案「Tax Cuts and Jobs Act」(3)「輸入に対する20%ペナルティー課税」

前回は日本企業に関心が高いと思われる多国籍企業のみに適用される2つの大きな課税措置のうち支払利息の更なる制限に関して触れた。今回はの2つ目の、国外関連者に対する特定支出に対する20%のペナルティー課税に触れたい。この課税はUnified Frameworkで「Level Playing Field」とか言ってた概念を具体化したものだけど、「Excise Tax」とか「Surtax」は予想していたものの、これらを武器に実質申告課税を半強制してくるとは意表を突かれた感じだ。良くこんな凄いトリックを発表までリークもなく隠し通せたものだ。前回触れた世界平均利率に基づく支払利息の損金不算入もそうだけど、20%ペナルティー課税は米国外に親会社のある所謂Inbound企業だけではなく、米国多国籍企業にも同様に適用がある点も重要だ。ロイヤリティの支払いとかも含まれるのでおそらく金額的には米国多国籍企業に与える影響も同様に大きいだろう。この法律が可決されると米国で事業展開している多国籍企業にとってサプライチェーン見直しが必至となる。

で、なぜトリックかというとこの税法を読んでまともに20%のペナルティー課税を支払う納税者はいないと思われる点だ。そのメカニズムは次の通り。

まず、今回の税法案では国外関連法人に支払う特定支出に対して20%のペナルティー課税(Excise Tax)を規定している。しかもこの20%は支払う側である米国法人(または支店)の税金であると明記した上、支払い側の米国法人税算定時には損金算入できない税金としている。なぜExcise Taxでしかも敢えて米国法人側の税金と規定しているかと言う点だけど、はおそらく条約の適用とかWTO云々という余計な議論を避けるためのような気がする。

で、20%ペナルティー課税の対象となる「特定支出」だけど、その広範な定義にビックリ。なんと通常の費用項目ばかりでなく、仕入、事業資産の取得、もが含まれるとされる。例外は金利、頻繁に売買されるコモディティー(およびそのヘッジ)、コストそのものを転嫁するサービス費用、と限定的。金利は別の規定で十分に「Level Playing Field」になってるからここで更に20%課税は必要ないということなんだろう。更に、特定支出の受け手外国法人側で既に特定支出を売上認識して米国でECI(またはPE?)申告課税しているケース、および特定支出が30%フルの米国源泉税対象になっているケースも20%ペナルティー課税から免除される。30%源泉の免除に至っては当然な話しで、法人税率が20%になると源泉税の方が30%と高くなるという変な状況なので、米国からしてみたら20%課税するまでもなく既にHead Startの状態にあり、それ以上ペナルティー課税を振りかざす理由はない。従来のアーニングス・ストリッピング規定がそうであったように、租税条約でこの内国法の30%源泉が減免されている場合には、30%からどれだけの源泉税が減免されているかというレシオを出して、そのレシオに対応する部分が20%ペナルティー課税対象の特定支出となる。例えばロイヤリティを米国から日本親会社に支払い、日米租税条約を利用して源泉税を0%にしていると、30%まるまる減免されていることになるので、100%の減免レシオとなり、ロイヤリティ全額が20%ペナルティー課税の対象となる。仮に10%の源泉税を支払っているような特定支出があれば、減免レシオを67%なので、特定支出の67%が20%ペナルティー課税の対象となる。

ここまで読むと、「え~、じゃあ自動車とか日本の関連者から輸入してると、その仕入全額に米国側で20%ペナルティー課税支払って、更にその20%は法人税計算上費用化できないの??」となる。まさにその通りで、法人税で引けない20%仕入れコストアップは実質25%仕入れコストアップだ。これでは米国でまともに商売はできない。ただ、これは日本企業ばかりでなくドイツ企業にも、さらに米国外の関連工場から製品を輸入している米国企業にも同様に適用があるので「Level Playing Field」となる。

こんなペナルティー課税の対象となるんだったら、もう米国での事業継続は不可能と判断してもおかしくない局面が多いと思うけど、実はまさしくそこがこのペナルティー課税の目的でもあり下院の賢いところ。だったら特定支出があたかも米国事業所得に基づく、しかもみなしPEに帰属する所得かのように「自ら」選択して申告課税するチョイスを外国法人に認めます、と規定されている。これは実質選択ではない。グロスに20%支払うのとネット所得に20%支払う選択だから、ゼロコストの事業でない限り、グロスの20%支払うオプションを選択する愚か者はいない。実質、20%ペナルティー課税(Excise Tax)部分の規定は現状の法律、租税条約下では不可能な外国法人に対する申告課税を可能とするクレバーな罠であり、下院も本気で20%ペナルティーを支払う外国法人が存在するとは誰も想定していないだろう。なかなか良く考えたものだ。これが冒頭で触れたこのExcise Taxは「トリック」という意味だ。

次回はECI選択、すなわち20%ペナルティー課税は溜まらないので外国法人「自ら」が自主的にみなしPE課税を選択します、となった場合(おそらく全ケースでそうなる)の扱いに関して。

Friday, November 3, 2017

米国税法改正下院案「Tax Cuts and Jobs Act」(2)「支払利息損金算入制限」

米国タックスにかかわっている身としては結構歴史的なイベントだった税法改革の法文原案公開から一夜が明けた。興奮冷めて(大げさ?)改めて法文を読み見直してみると法人税率以外は減税とか簡素化というイメージから遠くかけ離れている現実に目覚めて愕然。いろんな控除がなくなって自分の税金に至ってはナンと増税という結果となりそうだし、訳の分からない国境調整みたいなペナルティー課税が盛り込まれていたり。Unified Frameworkに基づく想定を大きく上回るものとなっている。税法を簡素化するとかなんとか言ってたけど結局429ページにおよぶ改正案は複雑極まりない。しかもSubpart Fとかそのまま手つかずだし。唯一Subpart Fで廃案とされているのが「foreign base company oil related income」というのも歳入委員会の長であるKevin Bradyのお膝元がHoustonだったりするのでなんか怪しい。

まあ未だ法律になったわけではないし、今日から歳入委員会のマークアップで、来週には上院が別の案を出してくることになっているので現段階でああだこうだと考えても仕方ないかもしれないけど、この税法は結構厳しい。

下院共和党の議員たちからは取りあえず思った程の反対意見は出てないようだけど、NY州とか比較的高額の州税控除を取っている納税者が多い州の議員は早速不満を表明している。多くの地元有権者が結局増税になる可能性が高いからだ。上院議員からも概ね受けは悪くないらしいけど、法人税をあそこまで下げて、しかも10年間の時限措置ではない状態でピッタリ$1.5Tのマイナスになっている辺りはなんか出来過ぎている感じで、財政にもう少し敏感な上院案がどのような形で出てくるか見物だ。下院案の審議過程での火種は州税控除とパススルー25%低減税率の適用範囲の狭さのような気がする。

昨日、法案が出たての段階でNOLは永久繰越が可能で金利は付かないようなことを書いたけど、法文を良く見たら短期AFR+4%で毎年繰越額に増額調整が行われることが分かった。昨日のポスティングも後で訂正しておく。

で、今日は日本企業に関心が高いと思われる多国籍企業に適用される2つの大きな課税措置について。まずは支払利息の更なる制限、で2つ目は国外関連者に対する支払いに対する20%(法人税最高税率)のペナルティー課税だ。特に後者はUnified Frameworkで「Level Playing Field」とか言ってた概念を具体化したものだけど、かなり強力。みんなが恐れてた国境調整にも通じるものがある。

支払利息に関しては昨日触れたとおり、まず、小規模事業主を除きEBITDAの30%を超えるネット支払利息は損金不算入となる。これは既存のSection 163(j)、アーニングス・ストリッピング規定の算定に似ているけど、貸し手が誰でも関係ない。ちなみに今回導入される新しい規則が新Section 163(j)になることからアーニングス・ストリッピング規定はこれをもって撤廃となる。30年近く付き合ってきた規定なのでこんな形で幕切れとなるとチョッとさみしい(?)。財務省規則も草案のまま結局最終化されることもなかったね。もっと厳しい規定が入るので特にめでたいことではないけど。この新Section 163(j)はパートナーシップにも事業主体レベルで適用があるとされ、パートナーシップレベルそのもので制限額を算定するようだ。すなわちK-1でパートナーに課税所得がパススルーされる段階では既に制限が計算された後ということのようでAggregateアプローチではなく完全なEntityアプローチを採択している。なお、不動産業と公共ユーティリティー業はこの制限から免除されている。

この新制限に抵触する支払利息は5年間の繰越が認められる。面白いのはこの繰越は組織再編や適格清算で他の法人に移管が認められるタイプの属性の一部を構成すると規定されている。また3年以内に50%超の持分変動がある場合に、変動後のNOL使用額に制限が加えられるSection 382という規定があるが、新制限で繰り延べられている未使用支払利息はNOL同様にSection 382の制限が課せられる。ここは以前のアーニングス・ストリッピング規定のSection 163(j)には規定されていなかった点で、恐々と買収前の未使用利息を買収後にグループ算定で大きくなった制限枠を基に使用したりしたこともあったけど、そんなことができなくなるように良く考えて規定されている。でも逆に言えば、今まではやっぱりSection 382に抵触せずに使えたということなんだろうか。

で、本題の多国籍企業に適用される支払利息の更なる制限だけど、こちらはどちらかと言うと全世界平均負債に基づくようなアプローチで何となくBEPSのAction 4っぽい。ここで言う「多国籍企業」とは、税法上はInternational Financial Reporting Group (「IFRG」)と言われ、会計原則のIFRSと間違えそうだけど、基本的に一社でも米国と米国外にグループ法人があればIFRGなので、日本企業で米国で活動しているケースは全て対象だ。さらに外国法人でも支店形態で(正確にはECIがあるケース)米国で事業を行っている法人が一社でもあればそのグループもIFRGとなる。ただし全世界グループ売上が3年平均で$100Mを超えない納税者は適用免除がある。

で、全世界平均の計算の仕方だけど、法文のように文書だけだと結構ややこしいので数字を使って追って行く。まず、全世界グループの会計上というか連結財務諸表上のネット支払利息を同じく会計上のEBITDAレシオで米国法人に配賦する。例えば全世界EBITDAが1,000で、同じく全世界会計ベースのネット支払利息が150だとする。米国のEBITDAを200とすると、全世界と米国のEBITDAレシオとなる20%で150というネット支払利息を米国に配賦する。この結果出てくる30がIFRGのネット利息の米国配賦額(「Allocable Share」)となる。 この30と米国の会計上のネット支払利息,例えばこれを50とすると、を比較したレシオとなる60%が損金算入限度%(「Allowable%」)となる。もちろんAllowable%は100%は超えてはいけない。

で、ここで初めて税務上の金額が出てくるけど、税務上制限前の段階で損金算入できる金額に110%掛けて、さらにAllowable%を掛けてようやく損金算入可能額が算定される。米国では会計と税務で金額が異なることが多いけど、仮に税務上の損金算入可能なネット支払利息が40だとすると、その110%は44で、その60%は26.4なのでこの金額が申告書で引ける金額だ。多分正しいと思うけど、実際に申告書作る時は自分でSection 163(n)を見るようにね。それにしても税法の規定にこれだけ会計の数字が多用されるのは少し違和感があるけど、全世界の数字を米国税法ベースに直すよりはマシかも。

で、2つ目の米国外関連者に行う特定支出に対するペナルティー課税だけど、これは凄い。Excise Taxという位置づけなので「Subchapter E」とか新設したりして気合いが入っている。このペナルティー課税は国境調整を彷彿させるが関連者間取引に限定されている点で性格は異なる。この点は明日にでも。